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【書評】ボクシングの「命がけの現場」で生まれたダイエットの説得力

世の中にはさまざまなノウハウがあふれています。しかし、どれが「本物」なのか、取捨選択するのは難しいというのもまた事実。無料メルマガ『ビジネス発想源』の著者・弘中勝さんは、話題となったダイエット本を紹介しつつ、「弘中さん流ノウハウ選択法」を提示しています。

過酷な環境を見る

最近読んだ本の内容からの話。

かつて日本フライ級チャンピオンに輝いた元プロボクサーのピューマ渡久地氏は、引退後の2001年に「ピューマ渡久地ボクシングジム」を設立。初代会長のピューマ渡久地氏が体調不良で療養に入ると、20歳の頃からサポートしてきた妻の渡久地聡美氏が、2009年から会長職を引き継ぎ、選手を育てている。

ピューマ渡久地氏が現役時代、同期のライバルの友人である元WBA世界スーパーフライ級王者・鬼塚勝也氏が現役引退後にトレーナーについてくれたことがあった。

福岡県北九州市にある鬼塚勝也氏の実家に泊り込んでの合宿を行うことになったが、渡久地聡美氏が食事の管理をしたときに、鬼塚氏の母とよく作ったのが、餃子だった。

最初は餃子は北九州市のご当地グルメの一つなんだろう、ぐらいに思っていた渡久地聡美氏は、その後、餃子の凄まじい効力を見せ付けられることになる。鬼塚家での夕食は、鬼塚勝也氏とその両親、またピューマ渡久地氏と聡美氏と長女の計6人で食卓を囲んでいたが、鬼塚氏の母と作った餃子120個を男3人であっという間にペロリと食べてしまった。

餃子が連日続いても、飽きずに120個をペロリ。合宿の練習がいくらハードとはいえ、こんなに食べられるものなのかと、ふだん夫の食事を作っていた聡美氏には新発見だった。

ボクサーにとって減量は切り離せない存在で、通常練習の時期は食事制限はしないが、ウェイト(体重)は練習ごとに量るクセをつける。ハードな練習をする合宿では、筋肉がつき、体重は増えるのが通常なのに、連日餃子を6人で120個、男性は1人30個ぐらいを食べていても、体重がちっとも増えず、数日経っていくとむしろ落ちていき体調も良い

渡久地聡美氏は、この経験から、夫やジムの減量メニューとしても餃子を取り入れた。すると、所属ボクサーたちのウェイトはみんな落ち、「食べた満足感がある」と精神的ストレスもなく、そして全員、ノックアウト負けが一度もなくなった

勝負の世界に生きているボクサーたちの体づくりは、試合の勝敗をも左右する重要な部分でもあり、結果を出すためには食事の管理も真剣勝負である。

日々、食事・トレーニング・栄養摂取のタイミング……と渡久地聡美氏が研究を続ける中で、「これだ!」と直感を得たのが餃子だと語る。

食べないダイエットを続けると、我慢のストレスで逆にドカ食いをしてリバウンドしやすい体になるが、ボクサーにも、ストレスホルモンのせいでウェイトが落ちないことがある。だから渡久地聡美氏は、減量の時には「ウェイトのことは忘れなさい。食べなさい。気にするな!」と指導し、「食べないとウェイトは落とせない」という志向にシフトさせ、それを信じさせるという。

そして、世の中にたくさん存在するダイエット法の中でも、その栄養の吸収やエネルギー消費に最も効率的なものとして、餃子に行き着いた、と渡久地聡美氏は述べている。

出典は、最近読んだこの本です。ピューマ渡久地ボクシングジムの渡久地聡美会長の著作。厳しい勝負の世界の中で実証された納得の内容です。

餃子ダイエット』(渡久地聡美 著/幻冬舎)

高度な技術やノウハウは、「過酷な環境から生まれやすいです。例えば、高圧に耐えうる技術を知りたければ、宇宙を飛ぶロケットの部品を造っているメーカーや深海を進む潜水艦を造っているメーカーに話を聞くとすごく早いでしょう。高度な非常食のノウハウを知りたければ、軍隊のミリメシ(軍隊食)が参考になるでしょうし、高度な保温技術や軽量技術を知りたければ、南極観測隊や登山チームの経験が役立つはずです。そして、肉体改造や栄養管理といえば、第一線のプロスポーツ選手の環境を見るといいでしょう。

危険と隣り合わせにいるような「過酷な環境」は、ちょっとのミスが命取りになりますから、ものすごい技術やノウハウが結集し、また新たな技術やノウハウが蓄積されていきます。

いろいろな評論家やコンサルタントの類から、いろいろなノウハウが世に出ます。それらは玉石混交で、どれがよくてどれがよくないかというのは、あまりに多すぎてなかなか判断できない。そこで、「過酷な環境では、どうやってるのかな?」という視点を持つのも、一つの判断方法です。極限状態の環境ではそのようにしているかを知れば、その方法の一端が非常に役立つことになるでしょう。

【今日の発想源実践】(実践期限:1日間)————-

image by: Shutterstock

 

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