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数字で見る、消費税増税がどれだけ「日本に迷惑」をかけてきたか?

数字で見る、消費税増税がどれだけ「日本に迷惑」をかけてきたか?

先日、安倍総理は消費税率10%への引き上げを2年半延期することを正式に発表しました。この決断を、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは「大絶賛」しています。本来消費税引き上げで捻出できるはずだった税収に関しては不安も残りますが、北野さんは「過去の消費税引き上げの大失敗から見ても、この選択は正しい」と断言しています。

消費増税、再延期はよいことか?

安倍総理、消費増税再延期を決断されたのですね。まことに、めでたいことです。昔からの読者さんはご存知ですが、RPEは、民主党時代から消費税増税に反対してきました。

2013年11月発売、『日本自立のためのプーチン最強講義』(集英社インターナショナル)から、転載してみましょう。

●消費税増税で日本経済はどうなる?

みなさんご存知のように、民主党の野田内閣は現在5%の消費税を、2014年4月から8%、15年10%まで引き上げることを決めました。その後の自民党・安倍政権も事実上これを踏襲しています。

ここまで読まれたみなさんは、この「消費税倍増計画」が、日本経済に落とされる「原爆」であることをご理解いただけるでしょう。

消費税が上がったら、みなさんどうします? そう、「買い物」(消費)をひかえますね? 消費が減ると、物をつくっても売れないので「生産」を減らします。物やサービスが売れなくなれば、企業の売り上げと利益は減り、「所得」が減ります。すると企業は、給料を減らしたり、リストラをするでしょう。そのために当然、個人の「所得」も減ります。所得が減るということは、手元に残るお金が減るということで、個人も企業もさらに「消費」と「投資」を減らすでしょう。

こうして、不景気のスパイラルはさらに加速度を増し、日本経済を奈落の底に突き落とすことになるのです。

野田さんは、「財政再建」を目指して、「不退転の決意」で消費税増税を目指していた。安倍政権も同じ。しかし、その意図とは正反対のことが起こる可能性が非常に高いのです。

図にしてみましょう。現状は、

消費減→生産減→所得減→(以下同じプロセスのくり返し)

ここで、「消費税引き上げ」が行われます。

消費減→生産減→所得減→【消費税引き上げ】→消費激減→生産激減→所得激減→(以下同じプロセスのくり返し)

はたして、これは私だけのファンタジーでしょうか? 大部分の人は、「減税したら税収が増える」ということを考えもしなかったでしょう。しかし、アメリカ、イギリス、ロシア等で過去にそういう事例があることを知れば、否定できなくなります。

では一方、「増税の影響」についての事例はあるでしょうか? 実は、「消費税を上げたら、景気も財政も悪化した例」は、日本にあります。日本に消費税が導入されたのは、1989年のこと。当時、税率は3%でした。バブル最末期で、翌年にはバブル崩壊がはじまっています。しかし、これは既述のように不動産売買の「総量規制」が原因と考えられ、消費税導入と景気の相関性がよくわかりません。

消費税が5%に引き上げられたのは、1997年のことです。それで、どうなったか? まずGDPが以後、全く増えなくなりました。日本の名目GDPは、バブルが崩壊した1990年、約440兆円でした。しかし、その後もGDPは少しずつ増えていたのです。

・91年…468兆円
・92年…480兆円
・93年…484兆円
・94年…486兆円
・95年…493兆円
・96年…504兆円
・97年…515兆円

数字を凝視してみましょう。GDPは確かに増えています。97年に消費税が引き上げられた後はどうでしょうか?

・98年…504兆円
・99年…497兆円
・00年…502兆円
・01年…497兆円
・02年…491兆円
・03年…490兆円
・04年…498兆円
・05年…501兆円
・06年…508兆円
・07年…515兆円
・08年…494兆円

消費税引き上げ前と後で、違いは明らかでしょう。それまで、GDPは緩やかな増加を続けていた。引き上げ後は、500兆円をはさんで、増えたり、減ったり。

ところで、肝心の税収は増えたのでしょうか? 消費税が引き上げられた翌年の98年、消費税収は96年比で4兆円増加しています。しかし、所得税収は2兆円、法人税収は3兆円と、それぞれ減少。結局、税収全体で見ると、1兆円減るという結果になりました。

消費税引き上げ(2014年4月)でどうなった?

このように、2013年11月に出した本やメルマガで、消費税増税に一貫して反対してきました。しかし、実際には2014年4月に引き上げられてしまいます。5%が8%になりました。で、どうなったのでしょう?

安倍さんが総理になられた2012年、GDPは前年比で1.74%成長しました。2013年は、1.36%。皆さん覚えておられると思いますが、2013年は株価も8,000円台から16,000円台までほぼ倍増し、「ようやく長かったトンネルから抜けるか!?」とワクワクしている人が多かったのです。2014年4月に消費税を上げなければ、どこまで景気がよくなったのだろうか? と夢想します。

ところが、実際は消費税を上げてしまった。そしたら、どうなったか? 2014年のGDPは、-0.03%でした。15年は0.47%でした。これを見ればわかりますが、消費税増税は明らかに景気に冷水をぶっかけた」のです。14年は、-0.03%、15年は0.47%。これで、「アベノミクスは成功している!」といえるでしょうか?

5%から8%に引き上げてこの結果。これを8%から10%に引き上げたら、さらに消費が落ち込んでひどいことになるのは目に見えています。ですから、安倍総理は、「正しい決断」をされたのです(もちろん、2014年4月に引き上げないのが、「最良」の決断だったわけですが…)。

image by: 首相官邸

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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