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ちょっとのミスで全てがパー。自作の遺言書が無効になる「落とし穴」

元気なうちにしっかりと準備しておきたい「遺言書」。近頃は自分で作成するためのマニュアルや、必要な書類が一式揃ったセットなども販売され、昔に比べると随分身近に感じられるようになりました。しかし、無料メルマガ『こころをつなぐ、相続のハナシ』の著者で行政書士の山田和美さんは、自筆証書遺言は思った以上に無効になるケースが多いと注意を促しています。

「花押」は押印か!? 最新事例から見る、無効になる遺言書の例

遺言書には大きく分けて、二つの種類が存在します。自分で書く自筆証書遺言と、公証役場で作成する公正証書遺言です。

公正証書遺言は、専門家と一緒に作成することも多く、また最終的に公証人のチェックも入るので、無効になる危険性はほぼありません。一方で、自筆証書遺言は、自分一人のみで作成ができる分、やはり誤った内容で記載してしまい、無効になることも多いと言えます。

遺言書というのは、大きな財産を動かすチカラをもった、とても大切な書類。そのため民法という法律で、その要件が厳密に定められています。今回は、自筆証書遺言の要件を改めて確認していきましょう。

まずは、全文を自書することが必要です。そのため、パソコンで作成した遺言書は無効になります。また、ビデオレターや音声で残した遺志も、遺言書とは認められず、法的な効果はありません。なお、筆記具の要件はありませんが、鉛筆など消すことのできる筆記具での記載は後々の書換えが容易であり、トラブルの元になりますので、ボールペンや万年筆など、消えない筆記具で作成しましょう。

次に、日付の記載です。「吉日」など曖昧な表記では無効になりますので、「平成26年6月8日」、などと、明確に記載することが必要です。遺言書は、何度でも書換えが可能で、矛盾する内容の遺言書が出てきた場合には、日付が新しいものが優先します。また、認知症になると有効に遺言書をのこすことができないので、その判断のためにも日付が必要なのです。

そして、遺言者の氏名です。通称名やペンネームでだからと言って直ちに無効になるわけではありませんが、残される家族が、誰が書いたものなのか迷ったり、これは本人が書いたものではないのではと、疑義を持たれたりすることのないように注意しましょう。

ここまで全てを自書した上で押印をすることが必要です。

ここでいう押印は実印であることまでは求められていませんので、認印であっても有効です。しかし、遺言書はとても大切な書類です。本当に、本人が記載したものだとの証明という意味では、実印を押すことをお勧めします。

なお、つい先日、押印の代わりに花押を記載した遺言書が無効だとの、最高裁の判決が出ました。花押とは、昔のサインのようなものだとイメージしてください。サインであれば、押印より氏名の自書に近いものなので、無効だと判断されたのでしょう。

実際は印鑑など実印でなければ誰でも用意できてしまいますので、要件の一つとして押印が入っているのは少し不思議な気もしますが、法律に明記されている以上は、やはり押印がなければ有効との判断は困難です。

自筆証書遺言を作成の際は、無効なものとならないよう、要件を満たしているかどうか、しっかりと確認するようにしましょう。

このように、自筆証書遺言は要件が細かく定められています。またこのほかにも、訂正の仕方等にもルールがあり、一つ間違えるとあなたの意思が実現できなくなってしまいます

また、自筆証書遺言は相続が起きると家庭裁判所での検認が必要になります。検認とは遺言書の開封式のようなもので、これを行わなければ、遺言書を手続きに使用することはできません。一方、公正証書遺言であれば、無効になる危険性はほとんどなく、また、検認も不要であるため、スムーズに手続きに入ることができます。

お金もかからず比較的作成しやすい自筆証書遺言ですが、無効になる危険性や、相続が起きた後にかかる時間や手前を考慮したうえで、公正証書遺言で作成することを検討されることをお勧めします

image by: Shutterstock

 

 『こころをつなぐ、相続のハナシ
行政書士山田和美が、相続・遺言について情報を発信するメールマガジン。「相続人って誰のこと?」という基本的な事から、「相続が起きると銀行口座どうなるの?」等のより実務的な疑問まで幅広くお伝えして参ります。
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