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とても常識人なのに「私、変わってるんです」アピールしたがる日本人

メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者・高橋さんは長いNY生活の中で、日本人が頻繁に口にする「あたし、変わってるんです」という言葉に大きな違和感を感じているそうです。高橋さん曰く、アメリカ人は逆に「ノーマル」であることを執拗にアピールするのが普通だとか。なぜ、両国?その理由を面白く解説してくれています。

「今の時代、真っ正面から」

日本出張のたびに、気付くことがあります。 よくよく耳にする言葉があります。

当初から違和感はあったけど、最近気がつきました、その違和感。

例えば、人と会って、食事をする。 その際、よく、

「アタシって変わってるんで~」とか

「ちょっとアタシ、ヘンなんです」とか

「アタシ、ちょっと人と違ってー」とか

そういった類いのセリフをよく言われるんです。

自分が人と違うアピール】に、しかも日本人の謙虚さも手伝って、自分が変人と言われてるアピールが、むっちゃくちゃ、めっちゃくちゃ多い。 ホントに多いです。 (あれ、なんでだろ)特に女性に多い気がします(女性って言っちゃった・笑  もちろんあくまで個人のデータなので、男性にも多いのかもしれませんが、30代の女性は、お会いした方ほぼすべてこういった類いの自己申請をされます)10人会えば、大げさでなく、8人くらい、「人と違ってアタシ変わってるんです」とアピールされる。 あるいわソレに類いする言葉。

あれ、ホント、なんでだろう。 。 。 めちゃくちゃ多いです。

日本はとてもインテリの国で、国民みなさんがある一定の常識を持ち合わせている。 人と変わったことをすれば、出る杭を打たれる社会の中、あえて、他者との差別化、他の人とのブランディング化をするためには、とりあえず口頭で「変わってる」申告をしなきゃいけない、と思うのは意地悪な見方過ぎるでしょうか。 で、謙虚さもあるので「変人って言われるんです~」になるのかな。

前回の出張時、30代の仕事仲間と夜、恵比寿で待ち合わせをしました。

待ち合わせ時間よりかなり事前にLINEで「本当に申し訳ございません、コレコレこうで、15分くらい遅れそうなんです」と入り、そのあとも「今、大江戸線に乗りました」と随時報告。

結果、彼女が待ち合わせ場所に来たのは約束の時間より10分も遅れていませんでした。 会うなり「大変申し訳ございません!」と平謝り。 とても丁寧な言葉遣いで、こっちは不快になるどころか「たった7分だよ」と逆に恐縮してしまいました。 (僕自身が5分遅れで行ったので、実質2分しか待ってないし・笑) 

そんな彼女が居酒屋に入って2杯も飲めば、例のセリフ

「実は、、、、アタシってちょっと変わっててぇ 」—。

いえ。 とっても、とっても、常識的です。 なんら変わってません。

「なんか、変人なんですよねぇ。 人と違うっていうかぁ~ 」

ノーマル。 これ以上ないほど普通。 変人は自分のこと変人って自覚ないよ。

国民全員常識人である日本では「ノーマル」ということが恥ずかしいことなのか。

アメリカだと真逆です。ヘンなやつばっか。

なのに連中、いうに事欠いて、スグに「自分はノーマルだから」ってアピールをしょっちゅうします!してきます!明らかに普通じゃないのに!

いや、おまえは普通じゃないと思うぞ。 そう笑うしかありません。

Everybady says so! (みんなそうじゃん!) この言葉をよく使いますアメリカ人。

移民で出来上がった国なので、その国その国の常識を持ち合って出来上がった合衆国はなにが常識でなにが非常識なのかも誰もわかりません。

なので、自分が「ノーマル」ということに価値を見いだす。日本とは真逆です。

地下鉄車内で大声で歌ってるヤツは、歌いたいから歌ってるだけで、それをとがめる人もいない。 日常過ぎて、トピックにもならない。 常識、非常識の前に文化、宗教も混在してるから、オフィスの真裏の公園では、芝生の上で全身肌の色が見えない衣装を纏って太陽に向かってお祈りする集団の横で、おっぱい出して「女性にもトップレスの権利を!!」と拡声スピーカーで叫んでる集団がいる。

そんな街から来た僕に、

「他のコは上司の顔色伺うけど、アタシは上司にも意見しちゃうんです」って理由だけで、自分を「変わってるんです」「人とは違うんです」ってアピールされても。 。 。

ちなみにアメリカに住んでいる日本人は、本当の意味で「変わってる人多いです・笑  

もちろん、悪い意味で・笑 前述の女性の言ってる意味とは根本的に違う意味で・笑

これ書いていいのかどうか迷いましたが。 ブログじゃ絶対書けないけど。

日本の社会では、不適合者ではみ出してきた人間が多いです。 ニューヨークの日本人。

それこそ、本当に「変わり者」の社会です。

以前の職場では(僕がまだ一社員の頃)

そこの社長は、とんでもない悪者で、いたるところに借金しては逃げてました。 それだけなら日本にもいっぱいいますが、ロスで買った車を代金も払わす逃げる為、NYまでアメリカをその車で横断して、その道中を疾走!アメリカ大陸」ってコラムまで書き上げてました・笑  ホントは「逃走!アメリカ大陸」なのに。 そんな借金踏み倒す社長の基にまともな社員が集まるわけありません

デザイナーはヒゲ面のゲイのおじさん。 ミーティングで揉めると、オフィスの隅に行って体育座りで泣き出します。 心は少女。 ヒゲヅラのまま。 四十路が。

編集長はシングルマザーのお母さん。 夕方になると子供を迎えに行って、おんぶしたままパソコンに向かいます。 オフィスには子供の泣き声が。

他の編集員はタイ人の男性と長年つきあった挙げ句、タイ語がペラペラになり、オフィスの電話でタイ語で大ゲンカしてる。

その横には全身ゴスロリファッションで、ガンガンにハードロックをイヤホンで聞きながらノリノリでパソコンに向かって仕事してるちっちゃいちっちゃい女の子の社員。

その横には、その子は至って普通の子ですが、横にいつもウォーリーを探せ!のウォーリーくんソックリのひ弱でなで肩の男の子が。 なにもせず、そのこのま横に座ってニコニコ、その子の仕事を見ている。 お前誰?って聞くと「彼氏」とひと言。 片時も彼女と離れたくないんだ、と愛を語り出す。 世間ではそれをヒモって言うんだぞ。

営業の後輩には、丸坊主で筋肉ムキムキの男の子がいて、彼はニューヨーク大学のグレイシー柔術のクラスの師範代。 教える方。 あのヘンゾグレイシーの直系の弟子です。

オフィスでいつもタンクトップで、プロティンを飲みながら腕立て伏せしてました。 仕事もせずに。 「昨日、道場破りが来て、入院させちゃったので、お見舞い行きたいから早退させてください」と痛めた首を回しながら聞いてきたこともあります。

山口組系列の●●組(指定暴力団)の親分の息子がインターンとしても来ていました。 朝、出勤するとシンナーの匂いがオフィスから漂います。

極めつけは、日本人のホームレスを拾ってきて、雑用係としてオフィスに住み込ませてました。 そのホームレスは一時期、本も出版して、ひょっとしたら日本でも知ってる人がいるかもしれません。

そこのオフィスは、タイ語と赤ちゃんの泣き声が響き渡り、正体不明のメガネのアメリカ人が座り、ゴスロリがノリノリで、ムキムキが腕立てして、シンナーの匂いがして、ソファにホームレスが寝てました。 これ実話です。

そのあと自分が独立してからも、中には朝から番まで苺ジャムパンしか食べないおばさん。 それ以外食べない。 毎週月曜日の朝に週末クラブで知り合ったカリブ系の男性と関係をもっては「結婚します!」と毎週、毎週、報告に来る元・ホステス。 週代わりのフィアンセ。 オフィスでステップを踏むサルサのインストラクター。 営業電話しながら踊ってた。 虚言癖をもっている男の子。 言うことが日によって違うならまだしも、朝と夜で真逆のことを言い、ヒドいときにはワンフレーズの最初と終わりで真逆のことを言ってました。

これ、ほんの一部です。 書き出したらきりがない。やっぱり、少し変わったのが多い気がします。

で、全体的に彼らの口癖は「アタシほど平凡な人間はいない」。 サルサのインストラクターはいつもそう言ってました。 ステップ踏みながら。 日中、オフィスで。

ヤクザの息子のシンナーくんは真顔で「ニューヨークの日本人ってヘンな人多くないっすか?」と聞いてきました。

彼ら【本物】は自分たちのことをヘンと思ってないし、絶対、そう言わないし、認めない。

なので、日本の常識的な一般的な30代の女性が「アタシ、ちょっと変わってて~」とアピールしてくるたびに、「あー。 そうなのー」と言いながら、心の中で、前述のどれかひとりでも発注してやろうか、と思ってしまいます。 【本物】を実際、見てみるか?って。

とっても常識人なのに、自分が非常識人だとアピールしたがる日本人

あきらかにヘンなのに、自分が常識人だとアピールしたかがるアメリカ人。

日本で会う方、会う方が、「自分は人と違うんです」、って言うので、結果、顔を覚えられない。 皮肉にも、自分が「少数派」に入る為に言ったセリフであると思うのですが、結果、そのセリフを言った時点で、みんながみんな言うものだから「多数派」に入ることになる。 なので、逆にそんなセリフを言わない人と会うと「この人は変わってんのかなぁ」と思ってしまうパラドクス(笑)

話は少し逸れますが、キラキラネームにおいても同じ現象が起きてんじゃないかな、と。

親は子供に特別な名前を、特徴的な名前を、個性的な名前をと思い、漫画の主人公やスグに読解できない名前をつけます。

でも、すでに「キラキラネーム」という言葉も世間一般に広まった今、その名前を聞かされても「個性的だなぁ」とか「特徴的だなぁ」と感想を持つ前に「キラキラネームだなぁ」って感想が先に来ちゃうんと思うんです。

俗っぽさから脱去するために、特徴的な名前を付けたにも関わらず、周知の「キラキラネーム」にカテゴライズされちゃう。 「あ~、アナタもね」って思われる。 それってなにより俗っぽい。

去年だか、一昨年だか、日本のいちばん多い男の子の名前が「翔」くんか、「翔太」くん、だったのこと。 とてもいい名前だと思うのですが、もし特別な意味がなく、ただ、漫画の主人公っぽい名前、とか、響きがカッコいい名前だとか、そんな理由で付けたとするならば。

数年後、翔太くんだらけの日本の中で、主人公っぽくはならないんじゃないのかな。

みんながマイナーを狙った結果が、ど真ん中メジャー。

ひょっとすると、今の時代「太郎」や「花子」の方が特徴的な名前になってしまっているかもしれません。

( ※ 誤解なきよう。 もちろん、翔くんや翔太くんが俗っぽいわけではありません。 響きだけでなく、親御さんが意味をシッカリ考えて、その上で付けられた翔くん・翔太くん、も中にはいると思われます。 ただ、国民全員が【特別感】を狙ったら、それはもう【特別感】ではなくなる話の例えで言っただけです)

 

以前、僕は専門学校の講師をしていた時代がありました。 もう15年以上前の話です。

あるとき、新入社員の面接を10人連続でやったことがあります。

一人目の男の子が「僕はマニュアルに頼りたくないんっすよ、やっぱ生徒と心と心で通じ合った教育がしたいんす!」と鼻息荒く。 あぁいいこと言うなぁと。

二人目「アタシ、教科書ばかりの教育って嫌なんです。 生徒ひとりひとりにぶつかって、心と心で語りかけたいんです」と。

三人目「僕は決まりきった校則だけじゃなく、アウトローと思われても、もっと大切な心でぶつかって、生徒の私生活まで面倒みたいんっすよ!」と。

四人目も五人目もこんな感じ。 同じようなセリフ。 六人目も同じ。 その時点で、横にいた同じ面接官の後輩に「なに、これ?」と聞きました。

その後輩、涼しい顔で「GTOです」。

当時、流行っていた学園テレビドラマの主人公の先生のキャラクターに、意識的にか、無意識的にか全員が感化されちゃってる。

結果、八人目の「アタシは自分にもまだ自信が持てないので、なんとか一年目はマニュアルを必死にこなそうと思っています」とまっすぐにこっちを見た女の子しか、いまとなっては記憶に残っていない。 (あとの“心と心でぶつかるクン”は顔も覚えてない)

その子だけが1年間、専門学校教師をシッカリと全うしました。 あとの数人は途中でヤメて、おそらく違うテレビドラマの主人公になりきれる職種を選んだのだと思います。 その次はまた違うドラマを。 。 。

アメリカかぶれと思われるのがいちばん嫌な僕、ということをまず、言っておいて、そのうえで、やはり日本はこと文化に関しては、世界でも稀に見るガラパゴス化。 一律同じドラマを同じバラエティをみんなが見ている傾向があるので、国民総「キムタク化」—。

意識しているか、意識してないかは別として、ドラマの中の木村拓哉も福山雅治も米倉涼子も仲間由紀恵も、やっぱり常識人ではなく、少し変わっていて、少し非常識人で「人と違う」

そういった主人公になるためには、手っ取り早く、口頭で申告すればいい

ちょっとだけキツいいい方ですが、日本出張のたび、いまだにそう思っちゃいます。

例えば、よく聞く「人生は肩書きだけじゃないんだ。 肩書きだけで生きている人間は寂しいね~」というセリフ。

本当にその通りだと思うし、肩書きをチラつかせるヤツはカッコ悪いし、最低だと思います。

ただ。今の時代、逆に「人生は肩書きだ!」とあえて、間違えた理屈を口にしていいのかも、と一瞬だけ思ってしまいます。

なぜなら、国民全員が「人生は肩書きじゃない」と言うから、そう思っているからこそ、肩書きなくてもさっきの「人と違うんですぅ」アピールがまかり通るんじゃないか。 肩書きないから口頭で会う人会う人に申告していかなきゃいけないんじゃないか。 わかりやすくいうと、総理大臣や、ソフトバンクの孫さんや、さんまさんや、ICHIROは「僕変わってるんですぅ」ってアピールは絶対しない。 する必要がない。 極端な例ですけど(笑)

口頭での自己申告でのブランディング化は、まったく人の記憶に残らないよ。

人と違うアピールは、それに加えて、今、日本がとっても裕福な国だという裏返しでもあると思うんです。 どんなに不景気と言ったところで、第3国に比べれば、豊かで、不満がない。 でも、何かが足りない。 自分のアイデンティティを守るためには、自分だけの何かをアピールしなきゃいけない。

その結果が「アタシ、人と違うんですぅ」じゃないのかな、と。 (考え過ぎか?・笑)

それに人間はもともと、みんな違うけどね。 今の時代、アウトローを気取らず、真っすぐ、正面からの真面目キャラの方が際立つかも。 みんなが異端児キャラを狙う今の時代だから。

その派生語として(こっちのセリフは男性が多い気がしますが)結構多いのが、次のセリフです。

 

「ゴメンね、ハッキリものを言っちゃうタイプなんだよね、オレ 。 面倒くさいの嫌いだから。 そこは、裏がなくて、日本人、気を使うけど、オレ、別に悪気はないからさ、ゴメンね、結構、ズバっって言っちゃうタイプなんだよね、誤解しないでね、裏はないからさ。 他の人って、気を遣うじゃん。 そんな面倒なこと出来ないからさ。 なので。 いつも誤解されがちなんだけど、オレ、日本人っぽくないっていうか、ハッキリもの言い過ぎて、嫌われちゃうっていうか。 でもいちいち気を使うのも面倒だから、そこは、結構ズバズバ言っちゃうタイプで、、、、、、 」

。 。 。 。 。 。 。 。 。 いいから、早く、本題入れよ  ( ̄  ̄)

これ以上なく面倒くさい。 めちゃくちゃ気を使ってるじゃん。 ニューヨーカー、そんな枕詞なしで、それこそ、ズバって言っちゃうよ。

image by: Shutterstock

 

NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』 より一部抜粋

著者/高橋克明
全米No.1邦字紙「WEEKLY Biz」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ400人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる
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