社員の懲戒処分の情報、一体どこまで公表すべきなのでしょうか。無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、懲戒解雇された社員がことの詳細を「社内公表」した会社を相手取り起こした名誉毀損裁判を取り上げ、個人情報の取り扱い方について注意を促しています。
懲戒処分の社内公表は何が問題になるのか
今から3年前、社労士の資格をとる際に私は専門学校に通っていました。その専門学校を選ぶ際に気になったのが「合格率」です。誰もがそうだと思いますが受講生の90%が合格している学校と20%しかしていない学校では当然ですが、前者を選ぶでしょう。
ところが、学校に問い合わせるとその合格率を「発表できない」と言われていました。それは、社労士試験の合格発表の仕方が変わったからです。以前は、実名で発表されていたものが受験番号で発表されるようになったため、誰が合格したのか集計できなくなってしまったのだそうです(一応、合格者は学校に報告するように言われていましたが、中々、報告してこない人も多いようです)。
このように「実名か匿名か」というのは新聞や雑誌などのマスコミ発表ではよく話題になります。これは、懲戒処分の社内公表にも同じことが言えます。
みなさんの会社の中には懲戒処分を「実名」で発表しているところももしかしたら、あるかも知れません。では、この場合何が問題になるのか?
それについて裁判があります。ある食料品販売の会社で懲戒処分(懲戒解雇)を行ったことの詳細を社内に掲示し、文書にして社員にも配布をしました。そこでその懲戒解雇になった社員が「名誉毀損だ!」として会社を訴えたのです。
では、この裁判はどうなったか?
会社が負けました。会社の行為は「名誉毀損である」と認められてしまったのです。では、このような社内公表はすべて名誉棄損になってしまうのでしょうか?それは、必ずしもそうとは言えません。
この裁判例では、「公表の際の文面が過激であった」「半ば、社員に強引に書面を配布した」という点も問題としてありました。
ただ、今後はどうすべきかというと、私は「実名による社内公表」はなるべく避けたほうが良いと考えます。その理由は2つあります。まずは1つ目の理由が「情報の拡散リスク」です。社員の情報漏洩の問題がたびたび話題になりますが、懲戒処分の公表も「社内」だけのつもりがいつのまにか「社外」にも拡がってしまう可能性があります(社員の中には悪意を持って拡散する人がいないとも言えません)。そうなると、そこに「実名」などの個人情報が載っていた場合、会社が訴えられる可能性があります。
そして2つ目の理由が「再発防止リスク」です。実名による社内公表はある程度の「再発防止」にはなります。ただ、それだけでは再発を劇的に減らすことはできません。本当に再発を防止するためにはなぜ問題が起きたかをしっかりと分析しそれに対する「具体的な」対策を考えることが重要です。それにも関わらず、実名を公表することで「これで今後は大丈夫だろう」と安心してしまう会社が非常に多いのです。
このように考えていくとみなさんの会社の「懲戒処分の社内公表」は今のままで大丈夫でしょうか? 今一度、考えてみる必要があるかも知れませんね。
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企業での人事担当10年、現在は社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツをわかりやすくお伝えいたします。
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