MAG2 NEWS MENU

【書評】沖縄県知事がついた嘘。「基地撤退」の背後にチラつく中国の影

未だ先行きが不透明な普天間基地移設問題。そして、長年熾火のように燃え続けている沖縄独立運動。これらについて、当事者である沖縄県民はどのように考えているのでしょうか。無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』ではその一つの意見として、保守派として知られ、「沖縄のジャンヌダルク」とも称される我那覇真子さんの著書を紹介しています。

日本を守る沖縄の戦い ~ 我那覇真子さん、国連での言論戦


日本を守る沖縄の戦い 日本のジャンヌダルクかく語りき』我那覇真子・著 アイバス出版

2015(平成27)年9月22日、スイス・ジュネーブの国連人権理事会で、我那覇真子さんが2分間のスピーチを行った。その前日に翁長雄志沖縄県知事が同じ舞台で行った2分間のスピーチへの反論である。

翁長知事のスピーチは、米軍基地によって沖縄の自己決定権がないがしろにされていると主張して、辺野古での「新基地建設」を阻止すると訴えたものだった。国連の人権委員会に日本政府への勧告を出させ、辺野古への基地移設を妨害しようという企みだった。

我那覇さんは、翁長知事のスピーチを真っ向から批判した。「沖縄県民は先住民族」というプロパガンダは中国が扇動しているものであり、知事は東シナ海や南シナ海での中国の深刻な挑戦行為を無視している、と糾弾した。

この会場で何度も翁長知事とすれ違ったのですが、氏は憮然とした表情をするばかりで私の顔を一度も見ようとしませんでした。

 

それとは反対に会場の反応はとてもいいものがありました。私が席を立ち、退場する時、会場内の各国代表の方々が私に賛意を示すサインを見せてくれたのです。軽く手を挙げ振ってくれたり、ウインクしたり、微笑んでくれたり、大きく頷くしぐさで私のスピーチに応えてくれました。

(我那覇真子『日本を守る沖縄の戦い 日本のジャンヌダルクかく語りき』p229)

理事会の場で対立した意見が出された事によって、理事会はその当否の調査に入る。つまり、国連が翁長スピーチに従った勧告をそのまま日本政府に出すことは出来なくなった。

「私たちが自ら進んで提供した土地は全くありません」

翁長知事のスピーチは、基地反対運動の正体を十分に表している。全文を見てみよう。

議長、ありがとうございます。日本の沖縄県の知事、翁長雄志です。私は、沖縄の自己決定権がないがしろ(neglect)にされている辺野古の現状を、世界の方々にお伝えするために参りました。

 

沖縄県内の米軍基地は、第2次大戦後、米軍に強制的に接収され、建設されたものです。私たちが自ら進んで提供した土地は全くありません。

(同 p231)

冒頭から真っ赤な嘘が始まっている。「私たちが自ら進んで提供した土地は全くありません」というが、たとえば辺野古シュワッブ海兵隊基地はもともと地元が積極誘致したものだ。

当時の久志村(現・名護市の一部)村長・比嘉敬浩氏が村会議員全員の署名を携えて、米軍側に再三陳情を行った。米陸海空軍は基地増設は不用であったが、訓練場増設を必要とする海兵隊がこれに応じた(同 p76)。

こうしてシュワッブ海兵隊基地は創設当時から地元に歓迎され、今も一緒に運動会をやるような友好が続いている。

普天間基地にしても、軍用地の地代だけで年間約50億円と言われ、さらに基地の必要とする物資やサービスの提供で、地元の宣野湾市は一万余の人口が9万3,000人と急成長を遂げた。そのために、基地の周囲を市街地が取り囲んでしまったのである。

米軍基地の「人権弾圧」?

翁長知事のスピーチは、次に米軍基地が人権を弾圧してきた事をこう非難する。

沖縄の面積は日本の本土のわずか0.6%ですが、在日米軍専用基地施設の73.8%が沖縄に集中しています。戦後70年間、沖縄の米軍基地は、事件、事故、環境問題の温床となってきました。私たちの自己決定権や人権が顧みられることはありませんでした。

 

自国民の自由、平等、人権、民主主義も保証できない国が、どうして世界の国々とこうした価値観を共有できると言えるのでしょうか。

(同 p231)

「在日米軍専用基地施設の73.8%が沖縄に集中」とは巧みなトリックで、「専用」だけでなく自衛隊と共用している三沢、厚木などの基地を含めると、沖縄は約25%となる

米軍基地が事件や事故の温床と言うが、1,000人あたりの刑法犯検挙人数で見ると、沖縄米軍は1.4人と、沖縄県民の3.0人の半分以下である。外国人犯罪の温床というなら、来日韓国・朝鮮人永住者含むの19.4人、すなわち米軍の13.8倍に達する問題こそ取り上げなければならない。

環境問題に関しては、米軍基地の目の前に住むある県民は次のように証言している。

この辺りはタッチアンドゴー(滑走路に接地し、すぐまた上昇する航空機の離着陸訓練)にテレビが10秒ほど消えることが数回あるくらいで、騒音に関しても窓が開いていると電話が聞こえにくくなる程度です。本当に基地の近くが住みにくいのなら、基地前の地価の高騰やこれだけ多くの住人がいる理由が証明できません。

騒音に関しては、基地反対派が午前5時台からメガホンでがなりたてていて、何度か「常識の範囲内でやって欲しい」とお願いしたが、「表現の自由だ」「耳栓をして寝たらいい」と言い返されたという。こちらの方がよほど人権弾圧ではないか。

「全ての選挙で示された民意を無視して」

翁長知事の嘘は続く。

日本政府は昨年、沖縄で行われた全ての選挙で示された民意を無視して、今まさに辺野古の美しい海を埋め立て、新基地建設を進めようとしています。

 

私は、考えられうる限りのあらゆる合法的な手段を使って、辺野占新基地建設を阻止する決意です。

 

今日はこのようにお話しする場を与えて頂き、まことにありがとうございました。

(同 p231)

まず「新基地建設という表現自体が嘘だ。周囲が市街地になってしまった普天間基地の危険性除去のため、その480ヘクタールの土地を返還して、辺野古の埋立地160ヘクタールに移設しようというものである。

さらに普天間のみならず、北部訓練場、牧港補給基地、キャンプ随慶覧、キャンプ桑江など、沖縄米軍基地の4分の1、約5,000ヘクタールが返還される(同 p27)。「基地の加重負担」「環境問題」を訴えるなら、この移転を一刻も早く進めなければならない。

沖縄で行われた全ての選挙で示された民意も大嘘で、移設推進の保守系が、移設地の名護市では3回連続、県知事選は4回連続勝っている。鳩山民主党の「最低でも県外」発言の混乱が尾を引いて、今回、翁長知事が勝ったのである。

「知事選なら4期16年後にやっと勝って今回だけが民意ですと言われてもそれは理不尽と言うものです」と我那覇さんは指摘する(同 p155)。

しかも、その翁長知事は生え抜きの自民党員であり、自民党県連の要職をすべて経験し、かつては普天間基地辺野古移設の旗振り役だった(同 p119)。その豹変ぶり厚顔ぶりには驚かされる

「我々沖縄県民は少数民族ではありません」

翌日、我那覇さんが反対スピーチを行った。

昨日、皆様は、沖縄は紛れもない日本の一部であるにも関わらず、「沖縄県民は日本政府及び米軍から抑圧される被差別少数民族である」とお聞きになられたと思います。それは全くの見当違いです。

 

私は、沖縄生まれの沖縄育ちですが、日本の一部として私達は世界最高水準の人権と質の高い教育、福祉、医療、生活を享受しています。人権問題全般もそうですが、日本とその地域への安全保障に対する脅威である中国が、選挙で選ばれた公人やその支援者に「自分達は先住少数民族である」と述べさせ沖縄の独立運動を煽動しているのです。

 

我々沖縄県民は少数民族ではありません。どうかプロパガンダ(政治宣伝)を信じないでください。

(同 p233)

翁長知事のスピーチは「沖繩の自己決定権がないがしろにされている」という一節から始まっている。この自己決定権とは、沖縄県民が日本人とは違う少数民族であり民族としての自己決定権が失われている、という前提に立った言葉だ。

沖縄生まれの沖縄育ちの我那覇さんが「我々沖縄県民は少数民族ではありません」と断言したのはインパクト十分だった。しかも、沖縄の独立運動の陰で、中国が扇動していることを明確に指摘したのである。

「中国が東シナ海と南シナ海でみせている深刻な挑戦行為」

我那覇さんは後半で、中国の脅威を指摘する。

石垣市議会議員の砥板芳行氏からのメッセージです。

 

「沖繩県の現知事は無責任にも日本とアジア太平洋地域の安全保障におけるアメリカ軍基地の役削を無視しています。翁長知事はこの状況を棯じ曲げて伝えています。中国が東シナ海と南シナ海でみせている深刻な挑戦行為を知事と国連の皆様が認識をすることが重要です」

 

ありがとうございます。

(同 p233)

中国が東シナ海と南シナ海でみせている深刻な挑戦行為」は、世界に知れ渡っている。その「深刻な挑戦行為」から日本とアジア太平洋地域の安全保障を護っているのが沖縄米軍基地なのだが、翁長スピーチは、この点に一言も触れずに、基地の「負担」だけを論じている。知事の「捻じ曲げ」は、誰の目にも明らかだろう。

この点は、基地反対派を論破するための核心である。我那覇さんは、著書でこう指摘している。

「真っ先に危ないのは、沖縄県です」と本当の事を県民に伝えなくてどうします。この場合、「沈黙は金ではなく鉛」なのです。それを「県民の皆さまスイマセン。更なる基地負担をご理解下さい」などと言うから何も知らされていない県民は反発するのです。反対派左翼のデタラメな主張を助けているようなものです。

(同 p84)

基地問題をややこしくしているのは、中国の脅威を語らずして負担軽減ばかり取り上げる、こうした逃げの態度だろう。それは真実を隠すことで、沖縄県民のみならず日本国民全体の「自己決定権」をないがしろにしている、という事である。

中国の影

我那覇さんのスピーチの前半の「日本とその地域への安全保障に対する脅威である中国」が、沖縄独立論や反基地活動を陰で操っている、という点を考えてみよう。

まず中国がそのような動機を持っているのか、という点に関しては、「中国が東シナ海と南シナ海でみせている深刻な挑戦行為」を抑え込んでいるのが米軍基地なのだから、なんとか基地を沖縄から追い出したいと考えるのは当然だろう。

基地が辺野古に移転してしまえば、強力な米軍が居続けるのに、県民への負担も危険も減って、基地反対運動も下火になってしまう。辺野古移転で一番困るのが中国と国内左翼なのである。

沖縄独立論の陰に中国がいることも、独立派の糸数慶子・参議院議員や新垣毅・琉球新報編集委員などが北京で「琉球フォーラム」を開き、中国側からも「沖縄の自己決定権を支持する」との表明があった事から明らかだろう。

さらに、翁長知事の左急旋回にも中国の陰が窺われる。那覇市長時代には、沖縄振興一括交付金を活用して中国臣下のシンボル「龍注」一対を設置。さらに11億円余で市が取得した用地に、中国帰化人子孫に「孔子廟」を設立させた。平成17(2005)年には名誉福州市民の称号を贈られている。

「日本を護る沖縄の戦い」

翁長知事のわずか2分間のスピーチは明白な嘘ばかりで、真実と言えるのは「日本の沖縄県の知事、翁長雄志です」という自己紹介だけだ。しかし、その知事という立場も、翁長氏の選挙手腕と自民党県連の逃げ腰地元紙の世論扇動とにより創られたものだと、我那覇さんは著書で詳しく述べている。

沖縄県民のためにも日本国民全体のためにもなる、と誰の目にも明らかな辺野古移転が一向に進まないのは、中国とそれに操られた国内左翼の仕業である。日本国民の「自己決定権」が踏みにじられているのである。

沖縄を護ることは、日本国家の独立と領土と民主主義を護ることだ。「日本を守る沖縄の戦い」を展開されている我那覇真子さんや、彼女と志を同じうする多くの沖縄の人々に敬意と謝意と声援を送りたい。

文責:伊勢雅臣

image by: austinding / Shutterstock.com

 

Japan on the Globe-国際派日本人養成講座
著者/伊勢雅臣
購読者数4万3千人、創刊18年のメールマガジン『Japan On the Globe 国際派日本人養成講座』発行者。国際社会で日本を背負って活躍できる人材の育成を目指す。
<<登録はこちら>>

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け