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自民圧勝も無意味? 日本の平和は政府ではなく「世界」が決めている

自民党の圧勝で幕を閉じた参院選ですが、無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』の著者で戦略学者の奥山真司さんはこの選挙をどのように見たのでしょうか? 政党によって考えは異なりますが、実際に選挙で勝てば、その指針通りに世の中は動いていくのでしょうか? 奥山さんは日本人の多くが「誇大妄想的なバイアス」を持ってしまいがちだと指摘するとともに、一人一人が「冷静に日本の安全と平和と繁栄をいかに守るかを考えるべき」と結んでいます。

参院選が終わり、戦略の専門家として冷静に考えてみましたところ…

おくやまです。今回は参議院選挙について。

読者のみなさんはもちろん投票には行かれた方がほとんどだと思いますが、今回の参院選に関連して、ひとことだけ。

見方は色々ありますが、純粋に数的なところをみれば、今回の選挙は自民党が勝った」という分析が正しいことになりそうです。

読者のみなさんは、「それでは奥山さんは嬉しいのですか?それとも悔しいのですか?」と聞かれるかもしれませんが、私はどちらかと言えば、「選挙の結果などどうでもいい」と冷ややかに見ている部分があります。

「いやいや、選挙の結果が国家の運営にも影響してくるから、やはり選挙は重要なのでは?」と思われる方もいそうですが、私はこのような選挙が行われても、常にどこかで虚しさを感じている人間になってしまっているのです。なぜか? それは戦略論を、ちょっとだけ詳しく学んでしまったからです。

たしかに世間で言われているように、今回の選挙で自民党が勝ち、与党側が改憲要件となる国会の三分の二の議席を確保できたというのは、日本の安全保障的にはプラスになることかもしれません。ただしそれも、しょせんは半分のこと。なぜなら日本がいくらがんばっても、戦争や紛争に巻き込まれるかどうかというのは、結局は相手がいて成り立つものであるからです。

この場合の「相手」とは、日本の「平和憲法」のようなものを持たない中国かもしれませんし、航行の自由作戦を行っていて、建国以来、ほぼ毎年の割合で戦争を続けているアメリカがあります。さらには突然ミサイルを日本に落としてくる北朝鮮みたいな国もありますし、日本の国土を第二次世界大戦後から占領しつづけているロシアもあります。

ようするに私が言いたいのは、「日本の行動や決断だけで東アジアの安全保障環境が決まるのではない」ということ。ところが残念なことに、われわれ一般人は日本という狭い国の狭い言語空間で生きているせいか、「日本の行動こそが、世界(東アジアの地域だけに限定されない)の安全保障環境に決定的な影響を及ぼす」という、なんとも誇大妄想的なバイアス(偏見)をもっていることが多いのです。

ここであえて言っておきます。日本は(悔しいですが)「大国」ではありません。安全保障はアメリカに多くを依存しておりますし、自分の国の軍隊をまともに戦闘させることもできないですし、何より「日本には平和憲法がある」と知られているわけでもありません。つまり周辺の安全保障環境において、日本はカギを握っているプレイヤーではないのです。

戦略には、常に考慮すべき「相手」という存在があります。そしてこの「相手」は、自由意志を持った存在であると同時に、日本の政治面での力をまったく考慮しない存在かもしれないのです。

結論からいえば、日本が国内的に何をしようとも、そして自民党が選挙で圧勝しようとも、それは「相手」のいる戦略については(よくても)たった半分のことであり、われわれの力ではどうすることもできない部分が大きい、ということです。

したがって、われわれは日本国内の選挙結果というものに一喜一憂することなく、ただひらすら冷静に、日本の安全と平和と繁栄をいかに守るかを考えるべきでしょう。

image by: Sanyawadee / Shutterstock.com

 

日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信
国際情勢の中で、日本のとるべき方向性を考えます。情報・戦略の観点から、また、リアリズムの視点から、日本の真の独立のためのヒントとなる情報を発信してゆきます。
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