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大戸屋はなぜ、海外で成功したのか? 米では高級路線で大反響

海外に長期滞在していた日本人が帰国した際に口を揃えて言うのが「日本食は世界一」。日本人だけでなく海外からの人気も高い日本食ですが、今世界で勢力的に拡大している飲食チェーンといえば手頃な価格で楽しめる定食屋「大戸屋」ではないでしょうか。1958年の創業当時は「食堂」として庶民から慕われていた定食屋が、いまや世界の各地で高級ジャパニーズレストランとして展開し、多くのファンを獲得しています。近年、お家騒動などで世間をにぎわしている大戸屋ですが、各国で成功したその勝因に迫ります。

タイ】海外店舗最多のタイでは2020年までに100店舗を目標に  (47店舗)

大戸屋の初海外進出先でもあり、海外での最多店舗を保持するタイでは2020年までに100店舗(バンコク市内に65店舗)を国内に展開させる、とThe Nationにて報じられています。

タイの大手企業、セントラル・グループ(CRG)は5年以内に、現在の売り上げの2倍である2億バーツに引き上げることに意欲を見せています。

同社は2015年の国内収益については、10-15%の収益アップという目標に対して5%であったため期待に沿える結果ではなかった、と苦言をしめしているものの、「今後も国内外問わず同店舗の拡大を目指している」とタイの大戸屋そしてCRGインターナショナルの社長であるアンパイパン チラチバット氏(Ampaipan Chirathivat)は語っています。

2016年内に新店舗5件をオープンさせる予定だそうで、マレーシア、ベトナム、インドネシアといった近隣諸国にも進出していきたいとの意気込みを語っています。

ちなみに、記事が投稿された時点での売り上げは(2015年9月までの9ヶ月)で700万バーツだったということで、2016年度は1億バーツ、5年以内で2億バーツを目指しているようです。

また、タイの大戸屋の外観はこんな感じです。

日本とそれほど変わらない雰囲気です。

image by: タイの大戸屋 公式フェイスブック

ただ、お値段は現地の食堂と比べると高いので、現地では「本物で美味しいけど、やや高級な日本食料理屋」という位置づけになっているようです。

タイ料理に飽きた現地の日本人にも安心して食べられる、と人気があります。

タイ人の反応はどうなんでしょうか?

「本物の日本食で僕のお気に入りはカツ丼」

「エスプラナード店の店員のサービスが素晴らしい」

「僕はFuji(タイの日本食チェーン)の方が好みかな」

「セットメニューを頼むとご飯がおかわりできるのが魅力だよ」

【アメリカ】値段と待ち時間は3倍!? スタイリッシュで高級感溢れるOotoya ニューヨーカーのデートスポットにも(5店舗)

ニューヨークに5店舗すべてを構える大戸屋は、日本のようにブラッと思いつきで入れるような雰囲気はなく、「高級で洗練された」日本食料理屋というブランディングで経営しているようです。

予約をしないと1時間~数時間待ちという程の大盛況ぶりで、現地の日本人だけでなくあの舌のこえたニューヨーカーをも虜にしました。

ちなみに、定食を頼むと1人約30ドル程になるとのことで、日本の約3倍のお値段です。

また、競合の日本食レストランが多数あるとはいえど、大戸屋のように日本人が料理を提供しているお店は少ないようです。

こういったことがこだわりの強いニューヨーカーには、「本格的さ」に信憑性を強める要素として、人気に拍車をかけているのかもしれません。

さらに2016年3月末からチップ制を廃止したとのことで、日本式のやり方のこだわりをアピールし続けています。

現地の反応を見てみましょう。見た目のインパクトからかバラチラシをTweetするニューヨーカー多し!Twitter上も大盛り上がり。

「大戸屋はお気に入りのレストランのひとつよ!」

https://twitter.com/search?q=OOTOYA%20NYC&src=typd

「NYに来たらやりたいこと:無印、ユニクロ、紀伊国屋、任天堂、一風堂、そして大戸屋さ」

「明らかにハイソなタイ人がユニオンスクエアの大戸屋でランチしているよ~」

「本当はラーメンが大好きなんだ。でも、日本食が食べたい気分のとき大戸屋は最初の選択肢さ!」

「大戸屋にとにもかくにも行くべきだ。知らなかったって?でももう今知っただろ?」

「全てのニューヨーカーに大戸屋をお勧めします。豆腐のサラダと海鮮丼が最高だ!」

カツ丼や焼き鳥といった肉料理に加え、見た目の美しさも加わりバラ海鮮丼お寿司といった魚の生食も大人気の様子。

ひとレベル上の格別なお洒落さ、ヘルシーさ、新しさが、がっちりとニューヨーカーの心と懐を掴んだようです。

むしろ日本食というよりは、ここでしか提供されていない「大戸屋のごはん」を食べにきたいと思うファンが多いようですね。

 

Mengyi Dingさん(@kels_ding)が投稿した写真

【台湾】親日国でも抜群に人気「台湾風じゃない」本物の日本食が食べられる店(26店舗)

今年6月、7月と2店舗を続々とオープンさせ26店舗を国内に構える台湾も好調のようです。少し高いけど本物の日本食を食べることができる、とやはり現地人にも人気の様子。

いわずとしれた親日国である台湾では、日本のお店には「日式」という文字を掲げることがあります。

これまでも、その「台湾風の和食」を探すのには困らなかったようですが、お値段は若干高めでも「本格的で美味しい」日本食が食べられると他店との差別化をはかっている顧客が多いのも事実です。

Twitterでの反応はこんな感じです。

「食べる事に退屈しないのが大戸屋よね」

大戸屋でご飯を食べる台湾人の人たち。

 

林承志さん(@ericlinchenchih)が投稿した写真

 

小花さん(@flowersun1234)が投稿した写真

 

【シンガポール】割高感はあるがクオリティも高い 豆乳文化にも受け入れられる絶品豆腐料理(3店舗)

NY並みとはいいませんが、物価の高さも手伝ってややお値段が高めに設定されているのがシンガポールです。そもそも、シンガポールはフードコート形式の屋台が一般的で安価なため、大戸屋に限らず日本食料理店は割高感があります。ただ、本場日本で食べるのと変わらない高いクオリティ、ヘルシーさ、またメニューに書かれているカロリー表示など日本人ならではのおもてなしも人気の秘密。ちなみに、Mr.beanが国内に50店舗もあるほど、豆乳好きのシンガポール人にも大戸屋の豆腐料理は人気があります。

現地の反応はこんな感じです。

「まずまずだね!」

「お父さんの誕生日に大戸屋!」

 

LaRrYさん(@larry_ladch)が投稿した写真

シンガポールで大戸屋を食べた、日本人の方の声も。

【香港】お米は日本産を香港で精米 懐石料理屋を併設する店舗も(4店舗)

香港の大戸屋

image by: 大戶屋 Ootoya HK

他店舗同様に、日本で食べるのと変わらない味を提供するというポリシーから、素材や調理方法にもこだわりをみせています。

多少高くても、店内のきれいさや料理の丁寧な仕上がりがグルメな地元人にもうけているのです。

塩麹のメニューなども人気があるようです。

また、中環で約9年間営業していた懐石料理屋「なお膳」が閉店後、この大戸屋内にて復活したことで話題となりました。

発酵食品や独自のたれを開発するなど、なお膳料理長のやり方が大戸屋で採用されることも

そのやり方が日本の店舗に逆輸入される、という現象も起きているのだとか。

日本式の味とサービスを保持 戦略的な現地パートナーとの関係性とビジネスを手放す潔さ

国内外問わず、共通しているのは、日本と変わらない味を提供し、素材にこだわりつづけるということで、海外にある既存の日本食と差別化をはかっているといえそうです。

さらに大戸屋が海外で成功している理由は、戦略的な「合併」と関係の「解消」の絶妙なタイミングの上手さにある、と東洋経済にて分析がされています。

現地パートナーと手を組み、明確な役割分担をすることで、お互いWin-Winの関係を築き、事業が軌道に乗った絶妙なタイミングで直営店の売却をするのです。

そこで得た売却益と手数料をさらなる海外進出へと資金とするために。

ただ、現場には信じられないほど細かいマニュアルを用意し、日本式のサービスを従業員に指導をする、という隠れた努力も怠りません。

労力ははかりしれないですが、味だけでなくサービスも日本のクオリティを保ちたいという経営陣の強いこだわりと信念が、海外で成功している秘訣なのかもしれません。

image by:
Takashi Images / Shutterstock.com

source by: The Nation, 東洋経済, 香港経済新聞, RETRIP, 世界新聞, シンガポールお役立ちグルメ

文 / 臼井史佳

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