邦人、シリアで拘束か? 治安当局に泳がされている可能性も

 

安田氏がどこかの組織に囚われているとした場合、ISだとかヌスラだとかいろいろな推測が出ている。案内人と金銭交渉などでトラブれば、日本人の人質を高く買ってくれそうなISに売り渡されることは、今年1~2月の人質事件でわかっているので、ヌスラと行動していても知らぬうちにISに、ということもある。で、今回の安田氏の件では、トルコ国内ですでに金銭交渉トラブルがあったとの推論もある。

今回の行方不明事件がトルコ治安機関のシナリオと考えると、ISにいたとしてもヌスラにいたとしても、トルコ治安機関の息のかかった組織という線が出てくる。ISもヌスラも、トルコ政府とはどこかでうまく繋がってるパイプを持っていないと、現在までの勢力維持も難しいはずだから、情報機関が相互乗り入れしているとみるのが自然だ。

さて、自分の意志で危険とわかっている場所へ行った日本人がこのように安否不明になると、同じ日本人ということを強く意識して「無事解放を願う」論と、「自業自得見捨てろ」論が盛り上がる。だが、カトケンのように戦争国を取材したことある者たちのホンネは「日本人の不幸が、戦争当事国の人の不幸よりも、悲惨で同情されるべき、ということはない。また、日本人だからといって強いバッシングをという必要もない」である。ある戦争の数十万人の戦死者の中に数人の日本人がいたとしても、それほど感情を動かされない。日々、日本国内で事件事故で死んでゆく日本人よりも、異国の戦場で死ぬ日本人の命の方が価値あるともかわいそうだとも思わない。

それよりも、東長崎機関的にいつも感じるのは「金や名誉が目的の外国人ジャーナリストの動きによって、治安機関に目をつけられて不幸な人生に急転直下する人間は少ないほうがいいよなあ」という点だ。イラクやチェチェンなど、「治安機関に目をつけられる」=「拷問の数週間」という国もあり、生きて出獄できたことで「無事でよかったね」と言われている陰には、拷問でズタズタな身体にされちゃった人は東長崎機関が直接お世話になった現地人にも複数いる。外国人ジャーナリストが1人犠牲になる周辺には、数倍かそれ以上の関連現地人が犠牲になっていると見てもよい。ただ「犠牲を避けていては真実は伝えられない」という論が、ジャーナリスト論の正論なのだそうだ。

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異種会議:戦争からバグパイプ~ギャルまで』より一部抜粋

著者/加藤健二郎(建設技術者→軍事戦争→バグパイプ奏者)
尼崎市生まれ。1985年早稲田大学理工学部卒。東亜建設工業に勤務後、軍事戦争業界へ転職。1997年より、防衛庁内局OPL。著書は「女性兵士」「戦場のハローワーク」「自衛隊のしくみ」など11冊。43才より音楽業に転向し、日本初の職業バグパイプ奏者。東長崎機関を運営。自分自身でも予測不可能な人生。建設業→戦場取材→旅行業→出版→軽金属加工→軍事戦争調査→探偵→バグパイプ奏者・・・→→次はなに?
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