日本のマスコミではあまり報じられない海外のメディアのニュースを、本当はどう報じられているのか解説する無料メルマガ『山久瀬洋二 えいごism』。今回は日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄延期するも依然として改善していない日韓関係について、韓国での様子とともに分析されています。
日韓の切ることのできない関係を見つめ直して
Under intense pressure from the United States, South Korea reversed itself at the last minutes Friday and extended an intelligence-sharing pact with Japan, a sign that the Seoul government wanted to halt fraying relations with the two countries.
訳:アメリカの強い圧力を受け、韓国が金曜日のぎりぎりの段階で日本との機密情報共有についての条約の延長へと方向転換したことは、綻びた二カ国の関係改善への兆候か
(New York Timesより)
【ニュース解説】
日本と韓国との関係はどうしてここまで悪化したのでしょうか。ぎりぎりのところでGSOMIAの破棄は回避されたものの、隣国同士の国民に生まれた不信感を拭うことはできないようにも思えます。
先日韓国に出張しました。ソウルの仁寺洞(インサドン)という観光地の近くの建物には独島(竹島)は韓国固有の領土という看板があり、そこからさほど遠くない広場には、徴用工の被害者の連名による抗議の看板が掲げられていました。
その翌日から知人の出版社を数件訪ねました。すると、そうした政治的スローガンとは対照的に、私と応対する人は誰もが明るく日本語で交流してくれました。日本語が話せない人とは英語で様々な商談を行いました。それは、仁寺洞でみた光景とはまったく異なる暖かい歓迎でした。その席でお互いに政治とビジネスとを一緒にすべきでないことも確認できたのです。
この二つの事実は、日本と韓国との状況をそのまま物語っています。実は日本にとって韓国、そして韓国にとって日本は失うことのできない大切な隣人なのです。正直なところ、その現実を冷静にみることのできない双方の国の政治の世界の貧困さに思わず絶望してしまいます。
実に単純なことです。経済的に、日本も韓国も中国とアメリカという巨大なIT大国に挟まれています。どのようにもがいても、GAFAと呼ばれるアメリカの巨大IT企業、さらには中国のアリババやテンセントといった同様の企業の間におかれ、二つの国は連携をすることでかろうじて自国の経済的利益を守れるのが実情です。軍事的にも同様です。日本と韓国とが分裂した瞬間に、どちらもアメリカに対して強いカードをきれなくなるのみならず、中国の拡張政策にも抗えなくなるのです。
今回、実はGSOMIAの破綻を一番気にしていたのはアメリカでした。日韓関係が破綻すれば、アメリカにとって極東への軍事的な傘の骨を失うことになりかねないからです。