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海外旅行で腹を下さないための予防策、医師がコッソリ教えます

いよいよ夏本番に突入! 夏休みをとって海外旅行を楽しまれる方も多いのではないでしょうか?旅先で「下痢」になってしまったら楽しい旅行も台無しですよね。今回のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』では、「旅行者下痢症」について詳しく解説。これだけは知っておきたい「予防策」と「予防薬」について詳しくご紹介します。

旅行者下痢症のパターンと原因病原体

旅行者の下痢は、たいてい現地に入った最初の1週間で起こります。頻度のピークは現地到着後2日目から3日目に起こります。病原性大腸菌による下痢は、腹痛や、倦怠感に引き続いて起こる水様性の下痢です。

症状によって病原体の種類を推定することは困難ですが、一般的にゲップや腹部の膨満感が強いときにはジアルディア症という寄生虫による下痢症を考えます。一方で、粘血便やしぶり腹(ばら)があるときには赤痢やカンピロバクターによる下痢症を考えます。しぶり腹とは、排便後にも便意が続く症状です。赤痢には細菌性のものとアメーバ性のものがあり、アメーバ性のものは後に肝膿瘍をきたすことがあります。

ほとんどの旅行者下痢は数日でおさまります。1週間以上続くのは10人に1人です。また、2週間以上続くのは20人に1人です。そして、30日以上続くのは100人に1人のみです。たいていの症状は軽く、10人に1人がベッド上状態となるか医者にみてもらうことになります。しかし、旅行前に立てていた計画がキャンセルになることがしばしばあります。そういう意味で、旅行者下痢症はその予防が大切ですね。

予防の原則

では、予防についてみていきましょう。まず、飲食をするときの注意事項を常に守ることです。第一に、料理は十分に火を通し、水は沸騰させ、果物は皮をむいてから食べること、です。第二に、サラダや氷テーブル上の調味料の使用を避けることです。テーブルに備え付けのからしやケチャップには細菌が繁殖している可能性があるからです。

第三に、水分摂取はボトルや缶入りのものに限定し、ボトルの水分を飲むときにはストローを用いることです。アルコール飲料も同様です。そして予防法の最後の紹介となりますが、これも重要なのは、石鹸による手洗いに努めることです。石鹸による手洗いを徹底的に行うと旅行者下痢症のリスクが3分の2以下に下げることができるのです。これは医療関連感染症の予防のために医療者が院内で十分にやるべきことと同じことで、やはり大事ですね。

抗菌薬は勧められない

では、予防のための薬剤はどうでしょうか。一般に、抗生物質はお勧めできません。副作用のリスクのほうが上回るからです。また、抗生物質の内服は重症化の可能性もある偽膜性腸炎のリスクもあります。

例外は、臓器移植後で免疫抑制剤内服中などの免疫不全患者などです。そのような病気を持つひとは担当医と相談したうえで抗菌薬の予防的内服を検討することも必要です。

下痢をきたす病原体向けのワクチンで勧められるのは腸チフス予防のワクチン接種です。これは、腸チフスの流行地である南アジアや東南アジアに渡航する場合には接種をお勧めします。

すでに発症した下痢に対しての治療には、脱水にならないように水分と電解質の摂取に努めましょう。ORSという医療機関で出される脱水補正専用飲料でもよいですが、手に入らないときは、フルーツジュースを水分で薄めたものでもよいでしょう。症状が持続する場合には、医療機関を受診し、便培養や検便検査などで原因病原体を特定して、必要な治療を受けることを勧めます。

文献

Barrett J, Brown M. Travellers’ diarrhoea. BMJ. 2016 Apr 19;353:i1937.

image by: Shutterstock.com:Kzenon

 

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