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中国が尖閣に上陸した場合、安倍政権が最もやってはいけないこと

尖閣諸島周辺で挑発行為を繰り返す中国。このまま挑発がエスカレートし、人民解放軍が尖閣に上陸する可能性もゼロとは言い切れない状況です。万が一そのような状況となった際、日本はどう動くべきなのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんが、戦略家・エドワード・ルトワック氏の著書を引用しながらシミュレーションを試みています。

人民解放軍が尖閣に上陸したらどうする?

メルマガ前号で、中国が挑発をどんどん強めている現実を書きました。

中国よ、本気で上陸する気か? 武装漁船の大群が「尖閣周辺」に出現

(証拠記事抜きで)おさらいすると、

このように、中国は、挑発のレベルを着実に上げてきているので、「このままでは確実に日中戦争になる」という話をしました。

海上保安庁HP「尖閣諸島周辺海域における中国公船及び中国漁船の活動状況」より(※編集部注:PDFが開きます)

そこで、今回は、「人民解放軍が尖閣に上陸したらどうするの?」という話をしたいと思います。テキストは、全国民必読の書『中国4.0 暴発する中華帝国(エドワード・ルトワック:著)』です。こんなお得な本は、メッタにありません。たったの780円で、「世界最高の戦略家」と呼ばれるルトワックさんの考えを知ることができる

しかもこれは、「日本人のためだけに」書かれた本。巻末には、再臨の諸葛孔明・奥山真司先生の詳細な解説もある。迷わずご一読ください。

中国の今の戦略と、対処法

ルトワックさんは、「中国の戦略は15年間で3回も変わった」と言います。

●中国1.0(2000~09年)=「平和的台頭」

これは、ルトワックさんも大絶賛のすばらしい戦略。中国は、誰にも警戒されることなく、世界第2の大国になることができた。

●中国2.0(09~14年)= 「対外強硬路線」

08年から始まった「100年に一度の大不況」で、中国はアメリカの没落を確信。「もう邪魔するものはない!」とばかりに、「平和的台頭」戦略を捨て去り、「強硬路線に転じます。日本、ベトナム、フィリピン、その他東南アジア諸国、インドなどなど、あちこちで問題を起こすようになりました。

●中国3.0(14年~)=「選択的攻撃」

ところが「強硬路線」による反発が強まった。結果として、中国は孤立して追い詰められていった。そこで14年、「選択的攻撃戦略に転じたのです。その本質は、

彼らは抵抗の無いところには攻撃的に出て、抵抗があれば止めるという行動に出た。
(p58)

この「抵抗があれば止める」というのが大事です。いつも書いているように、「アメリカ以上に中国を挑発してはいけません。しかし、中国が日本の主権を侵害するような行為をしたら、「抵抗」しなければならない。抵抗しなければ、彼らは「どこまでいいのかな?」と、どんどん浸食してきます。しかし、ベトナムのように抵抗すれば、「ああ、これはダメなんだ」と引っ込む。ベトナムにできて日本にできないはずがありません。

「尖閣有事」でアメリカは日本を守るか?

「尖閣有事の際、アメリカは日本を守ってくれるのか?

これは、日本国内で大きな論争になっていました。ルトワックさんの見解はどうなのでしょうか?

率直に言って、アメリカは、現状では日本の島の防衛までは面倒を見切れないのである。
(p148)

端的に言って、これらを守るのは、完全に日本側の責任だ。
(同上)

日本が自ら対処すべき問題なのである。
(同上)

誤解のないように書いておきますが、ルトワックさんは、「日米安保は機能していない」とか、「アメリカには日本を守る気がない」とか言っているのではありません。

たしかにアメリカという同盟国は、日本を「守る」能力と意志を持っている。しかし、この「守る」とは、「日本の根幹としての統治機構システムを守る」という意味である。

 

中国軍が日本の本州に上陸しようとしても、アメリカはそれを阻止できる。
(同上)

どうも尖閣に関して言えば、「自分で守る!」という決意を固める必要がありそうです。

尖閣を守るために必要な三つのこと

ルトワックさんは、日本が中国の脅威に対抗するために、「三つのこと」が必要だと言っています。

  1. 物理的手段(船、飛行機など)
  2. 法制上の整備
  3. 政治的コンセンサス

要するに、日本は「中国軍が尖閣に上陸したことを想定しそれに備えよ!」と言っている。

もっと具体的に書いています

より具体的に言えば、

 

(A)「領土を守る」という国民的コンセンサスと、
(B)それを実現するためのメカニズム、

 

つまり電話をとって自衛隊に尖閣奪回を指示できる仕組みの両方が必要になる。
(p150)

人民解放軍がある日尖閣に上陸した。それを知った安倍総理は自衛隊トップに電話をし、「尖閣を今すぐ奪回してきてください!」という。自衛隊トップは、「わかりました。行ってきます」といい、尖閣を奪回してきた

こういう迅速さが必要だというのです。なぜ? ぐずぐずしていたら、「手遅れ」になるからです。

ここで肝に銘じておくべきなのは、

 

「ああ、危機が発生してしまった。まずアメリカや国連に相談しよう」

 

などと言っていたら、島はもう戻ってこないということだ。ウクライナがそのようにしてクリミア半島を失ったことは記憶に新しい。
(p152)

安倍総理は、「人民解放軍が尖閣に上陸した」と報告を受けた。「どうしよう…」と悩んだ総理は、いつもの癖で、アメリカに相談することにした。そして、「国連安保理で話し合ってもらおう」と決めた。そうこうしているうちに3日過ぎてしまった。尖閣周辺は中国の軍艦で埋め尽くされ、誰も手出しできないアメリカ軍は、「ソーリー、トゥーレイトゥ」といって、動かない。国連は、常任理事国中国が拒否権を使うので、制裁もできない。かくして日本は尖閣を失いました。習近平の人気は頂点に達し、「次は日本が不法占拠している沖縄を取り戻す!」と宣言した。

こんなことにならないよう、政府はしっかり準備しておいてほしいと思います。

多元的な阻止能力とは?

ルトワックさん、さらに細かい話をされています。今の段階から、「人民解放軍が尖閣に上陸したことを想定し、

これは軍事面ですね。

次にルトワックさん、「外交面」についても書いておられます。「尖閣有事」の際、外務省はどう動くべきなのか? 今から「準備をしておくことが大事」だそうです。

外務省も、中国を尖閣から追い出すための独自の計画をもたなければならない。中国が占拠した場合を想定して、アメリカ、インドネシア、ベトナム、そしてEUなどへの外交的対応策を予め用意しておくのだ。
(p171)

では、外務省は具体的に何をするべきなのでしょうか?ルトワックさんは例として、こんな提案をしています。

たとえば中国からの貨物を行政的手段で止める方策なども有効であろう。EUに依頼して、軍事的な手段によらずに、中国からの貨物処理の手続きのスピードを遅らせるよう手配するのだ。

 

(中略)

 

こうすれば、中国は、グローバルな規模で実質的に「貿易取引禁止状態」に直面することになる。

 

(中略)

 

全体としては、かなり深刻な状況に追い込まれるはずだ。
(p171)

結論を言えば、「日本政府は今から人民解放軍が尖閣に上陸したら何をすべきか決めておくことが必要」ということですね。

読者さんの中で総理をご存知の方がいれば、ぜひ教えてあげてください。

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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