米国公認会計士でフリー・キャピタリストの午堂登紀雄さんが様々なビジネステクニックや頭の使い方を紹介する、メルマガ『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』。今回は「生活の質(QOL)を上げる生き方」について。快適な生活を送るために最も大切なものは、お金、仕事、人間関係…いえいえ、一番大切なのはあなた自身の「健康」ではありませんか?
QOLを上げる生き方
健康を維持することについて考察を続けていますが、健康系のメルマガというわけではありません。
しかしここまでしつこくするのは、健康を損なうとお金儲けも何もできないからです。
編集後記でも書いていますが、息子がもらってきたウイルス性胃炎を、私ももらってしまいました。
油断しました。普段気を付けていただけに無念。。
原因は、厚着をして散歩して汗びっしょりになったあと、息子が外で下痢して服も濡れ、着替がなかったため私の上着を着せたため、逆に私が冷えてしまったことです。
汗の放熱、そして薄着によって体温が下がり、免疫が下がってウイルスをもらった。。
というのが私の分析です。
カゼに似た症状でしたが、丸2日、何もできませんでした。
このロスは大きい。。ぐむむ。。
というわけで健康系については1月までおつきあいいただきまして、その後はビジネス系の内容を予定しています。
そしてやっぱり…という話を聞いたのでご紹介します。
知人の医者から、「よくある出来事」の例として、このような話を聞きました。
ある大企業で営業職をしている男性会社員。
彼は専業主婦の妻と二人の子供を抱える働き盛りの39歳。
しかし接待や会社での飲み会も多く、典型的なメタボ体形だ。
本人は「ちょっとは痩せないと」という思いはあったものの、多忙なために帰宅は毎日遅く、運動する時間もない。お酒もなかなか減らせない。
そんなある日、会社の健康診断で受け取った再検査の通知。「糖尿病の疑いあり」ということだった。
会社からせっつかれて検査を受け、医師からは「食べ過ぎ飲みすぎを控え、運動しましょう。体重をあと○○キロ落とすことを目標にしてみてください」と言われた。
その男性は「はあ」と返事はしたものの、結局相変わらずの生活を続けていた。
その結果、健康診断での血糖値はますます高くなっていったが、仕事で成功して昇進したこともあり、生活習慣を変えられずにいた。
そうこうして10年余が経過し、50歳を迎えた頃になると、体重はさらに増加し、駅の階段を上がることすらつらくなっていた。
そんなある日、突然胸が焼けるような感覚に襲われ、息ができなくなって視界がくらみ、意識を失って倒れこんだ。
病院で目覚めたその男性は医師からこう告げられた。
心筋梗塞を起こして会社で倒れたこと、一命は取りとめたが、早急に手術を受ける必要があること。
退院後も飲酒はもちろんできないし、運動など心臓に負担がかかる生活はできないこと。
腎機能障害を併発しており人工透析を受けなければならないこと。
人工透析は週3回、毎回3~4時間必要で、旅行など長期の外出は望めないこと。
そしてこの原因は、長年放置された糖尿病であるということだ。
その男性は、望んでいた部長への昇進はもとより、会社への復帰すら難しくなった。
今後必要となる治療費・通院費・薬代などだけでなく、マイホームの住宅ローンの返済、子供が今度進学する私立大学の学費など、まだお金がかかる。
会社への復帰が遅れれば、退職金も予定と狂ってしまう。
収入が減っていくこと、自由がきかなくなった自分の体、そして生涯続く長い治療生活を考えたら、どうしていいのかわからない…。
糖尿病の恐ろしさ
ちなみに糖尿病とは血液中の糖分が通常より高くなり、それが生涯続くという病気です。
サイレントキラーと呼ばれる通り、深刻な自覚症状がないため、気づかない間に体中の血管がダメージを受けて難くなっていく。この動脈硬化が進むと、心臓や腎臓などの合併症を引き起こすのです。
糖尿病の合併症として主なものは、神経症、網膜症、腎症ですが、糖尿病患者だけでなく予備軍も含め、アルツハイマー病のリスクが4.6倍、ガンになるリスクが3.1倍、その他心筋梗塞、脳梗塞、脳卒中、壊疽なども、健康な人よりもリスクが高まるのです。
もし腎機能が損傷され、人工透析が必要となれば、生涯人工透析器を運びながら移動するしかないという生活を強いられます。
週3回、1回2~4時間の治療を一生受け続けなければならず、多くの時間、体力、お金がうばわれることになります。
つまりこれでは今まで通りの仕事や趣味を続けることは難しくなり、QOL(生活の質)は大きく損なわれるということ。
こうなってしまったら、もはや投資や起業やビジネススキルなどと言っている場合ではなくなります。
健康資産がどれほど大事か、よくわかる話ではないでしょうか。
そしてこれが上述の医師曰く「よくある出来事」であるというのは、糖尿病予備軍も含めると、現在の日本に2,200万人もいるからです。
未成年者を除くと、実に5人に1人以上は糖尿病もしくはその予備軍ということになり、誰でもがなりうるリスクにさらされているということです。
あなたも私も、です。
糖尿病に限らず、あらゆる疾病は生活習慣とストレスからもたらされるわけですから、これらを望ましい方向へとマネジメントすることは、大きな価値があると私は考えています。
血糖値のコントロールホルモン
血糖値とは血液中のブドウ糖の量のことですが、この血糖値を下げる働きを持つのが、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンであることは広く知られています。
食事によって炭水化物が消化吸収されると、血液中にブドウ糖が増えます。
するとインスリンが分泌され、肝臓に蓄えられたグリコーゲンを分解してブドウ糖として血液中に放出するのをやめる働きをします。
同時に、血液中のブドウ糖を肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄え、さらに余分なブドウ糖は中性脂肪として蓄えるように指示します。
このようにインスリンは、ブドウ糖の分解と貯蔵をコントロールすることで、血液中のブドウ糖の量を一定に保ち、全身の器官に過不足なく栄養を供給できるよう調整弁の役割を果たしています。
ではなぜ血糖値のコントロールが重要かというと、血糖値が高い状態は、命の危険にさらされるリスクが高くなるからです。
血液中のブドウ糖量が多い状態が続くと、細胞中のたんぱく質に反応し、細胞の糖化が進みます。糖化とは硬化と劣化です。
硬化という意味では血管細胞が固くなり、動脈硬化を起こしやすくなります。
劣化という意味では、神経細胞も糖化するため、運動面での反応も鈍くなります。
さらにたんぱく質の中でもコラーゲンはもっとも糖化しやすいため、しわ、たるみ、くすみといった症状につながり、血糖値が高い人は健康な人よりも早く老化が進み、老けた印象になります。
それだけではなく、前述のとおり糖尿病となれば網膜症、神経障害、腎症などを併発し、死に至ることもあるなど、極めて恐ろしいリスクにさらされます。
栄養が不足しても活動できるよう、血糖値を上げるホルモンは複数あります(アドレナリン、成長ホルモン、コルチゾールなどは体内に貯蔵されているグリコーゲンを分解し血糖値を上げる作用がある)。
しかし血糖値を下げるホルモンはインスリンしかありません。
これは、人間にとて飢餓との戦いが長かった証しだと言われていますが、食べ物が豊富な現代では逆に病気を呼び込みやすい身体機能と言えるのかもしれません。
インスリンの過剰分泌が身体にダメージを与える
血糖値を下げるのに重要なインスリンですが、これもまた過剰分泌されると細胞に障害をもたらし、老化を促進してしまうのです。
ちょっと専門的ですが、細胞のDNAが格納されている核には、活性酸素など、細胞にダメージを与える物質を無害化する酵素を作るFOXOという物質があります。
しかしインスリンが分泌されると、このFOXOが核の外に出てしまい、DNAが活性酸素にさらされ、DNAが損傷を受けやすくなるのです。
このようにインスリンの過剰分泌は身体の劣化だけでなく、老化も進めてしまうという弊害があるのです。
つまり、その逆、インスリン値を低く保つ習慣をとることが、健康長寿を保つひとつの方法と言えます。
過剰分泌を防ぐには、血糖値の急激な上昇を抑えることです。
なぜなら、血糖値の急激な上昇は、インスリンの過剰な分泌を招いてしまうからです。
そこでたとえば食事の順番を、野菜類、たんぱく質、炭水化物で食べることで、急激な血糖値の上昇を防ぐことができます。
特に最初に生野菜を食べるとよい、というのはよく知られています。
また、よく噛んで食べることも、満腹中枢を刺激され、食べ過ぎによる過剰な炭水化物接種、そしてそれによる血糖値の上昇を抑えることにつながります。
血糖値の上昇スピードが遅い(低GI)食品を選ぶことも有効だとされています。
砂糖、白米、パン、パスタが高GIですが、これらを避け、玄米や麦、全粒粉パンなどをメインにすることは現実的ではないので、前者2種類が無理なく採用できる方法かもしれません。
酸化が身体の細胞を劣化させる
病気だけでなく老化もそうですが、突然現れるということではなく、すべては細胞レベルでの劣化や老化から始まり、それが長年積み重なることで、病気や老化という症状に現れるものです。
私たちの身体は60兆個の細胞から成り立ち、それら細胞は数か月から数年で新しい細胞に生まれ変わっています。
しかし、二大制御機構の低下や加齢などによって細胞分裂・廃棄の機能が衰えると、うまく生まれ変わらない、生まれ変わっても異常を持っていたりという現象が起きます。
そしてそれがさまざまな問題を引き起こすのです。
その細胞再生能力を阻害する大きな要因として、先ほど述べた細胞の糖化以外にもうひとつ、細胞の酸化があります。
細胞の酸化は活性酸素(厳密には異なるがフリーラジカルとも呼ばれる)によって引き起こされるため、この活性酸素が老化や病気を招く元凶として扱われているのです。
活性酸素は、体内の炎症、激しい運動による筋肉の損傷、酸化した物質を食べる、紫外線を浴びる、強いストレスを感じる、などの場合に発生します。
この活性酸素は細胞の中にもあり、DNAを攻撃するのですが、細胞の遺伝情報が損傷を受けると、通常、その細胞は自ら脱落するようになっています。
脱落したのち細胞は再生されますが、再生よりも脱落が上回ると、いわゆる老化が進むことになります。
また、脱落が不十分で傷ついた遺伝子が残されることがあり、これがガンの引き金にもなると言われています。
このように細胞レベルでダメージを与えるため、糖化とともに活性酸素も老化や病気の大きな要因として扱われるわけです。
もちろん加齢とともに身体が酸化していくのは避けられないのですが、活性酸素の発生を抑えるような生活をすることで、老化スピードを遅めるとともに、病気を避けることにつながります。
酸化を遅らせる生活
活性酸素がどういう場面で発生するかがわかっていれば、あとはその場面をできるだけ避けるよう心がけることです。
まずは激しい運動を避ける、紫外線を浴びすぎないようにすること。
よくプロスポーツ選手は実年齢より老けて見えるとか、日焼けがシミになると言われるのは、激しい運動や紫外線によって活性酸素が生まれて細胞を傷つけるからです。
次は食べ物。酸化した食品を控えること、防腐剤や合成添加物などが入った食品を避けることです。
酸化した物質を食べれば、身体も酸化しやすいですから、調理してから時間が経過した揚げ物や、加工食品はできる限りやめたほうがよさそうです。
さらに、細胞の再生機能を活性化させ、老化を遅らせる方法として、食事は腹八分目を心がけ、適度な運動をすることが挙げられます。
食べた食事はエネルギーになりますが、エネルギーの作り方には解糖系と呼吸系という二つの方法があります。
解糖系は筋肉を動かすなど無酸素運動をするとき、呼吸系は通常活動時や有酸素運動をするときに酸素でエネルギーが作られます。
実は呼吸系のほうが大変エネルギー効率に優れた方法なのですが、このエネルギーを作り出すのが細胞内のミトコンドリアです。
もちろんこのミトコンドリアも活性酸素の攻撃を受けながらエネルギー生産を繰り返しているわけですが、やがて壊れて数も減り、エネルギー生産ができなくなって細胞は死を迎えます。
こうして細胞の数が減っていくために老化現象が現れるわけです。
そこで老化を防ぐには、細胞内のミトコンドリアの数を増やし、細胞が死に絶えるスピードを落とすことです。
これも方法がわかっていて、それが食事の腹八分と適度な運動というわけです。
この方法は長寿遺伝子を活性化させるとも言われており、動物実験でもおなか一杯食べて運動しない検体より、腹八分で運動させた検体のほうが長生きするという結果も出ています。
つまり腹八分と適度な運動は、アンチエイジング、疾病予防、長生きのすべてにおいて役立つ方法であると言えます。
腹八分で我慢するのはなかなか難しいことなので、たとえば食事を時間をかけてゆっくり食べる、よく噛む、外食時のごはんなどは少し残す、少量多品種で満腹感を感じやすくするなど、日々の食事の仕方を工夫することです。
適度な運動というのは、ちょっと「ハアハア」と息が切れるくらいの有酸素運動をさします。
「ゼエゼエ」というくらいの激しい運動はむしろ活性酸素を増やしてしまうので要注意です。
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著者/午堂登紀雄
フリー・キャピタリストとは、時代を洞察し、自分の労働力や居住地に依存しないマルチな収入源を作り、国家や企業のリスクからフリーとなった人です。どんな状況でも自分と家族を守れる、頭の使い方・考え方・具体的方法論を紹介。
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