以前に「人工知能が映画の脚本を手がけた」という記事を書きましたが、やはり人工知能への期待はさまざまな分野で、ますます高まっているようです。米Narrative Scienceは、2018年までには、62%の組織が人工知能を取り入れているだろうと予測しています。現在では、名だたる大企業がAIの革新にフォーカスし、自社で開発したAIの特許を次々と取得しているとのこと。AIはどこまで進化していくのでしょうか。
今年のAI総投資額は9億7400万ドル、企業の期待の表れ
2016年6月時点でその総投資額が9億7400万ドル (日本円でおよそ974億円) に及んだAI。

AI投資額の変遷
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すでに昨年の投資額を上回っており、CB Insightsによると、AIに注力する200もの企業が、株式ファンドを15億ドル、つまり1500億円近く増やしたとのことです。
ジャンルを問わずに有用な人工知能
AIの活躍の場は、ビジネスの分野に限りません。
例えば、主に老人介護を目的とした「ケアボット(介護ロボット)」を含むパーソナルロボットの市場では、2020年までには投資額が174億ドル (約1兆7400億円) に到達すると予想されており、特に高齢化の進む日本では、政府が予算の3分の1をケアボットの開発費用として割り当てているのです。
埼玉福祉に、介護ロボット『パロ』が2週間ショートステイ中♪とっても癒されます٩(๑>◡<๑)۶#介護ロボット pic.twitter.com/ZujZjsU1v4
— 埼玉福祉専門学校 (@scwfukushi) 2016年8月25日
ケアボットの開発は、これから高齢化社会が世界的な問題となっていくにつれて、AIの素晴らしいソリューションだと言えるでしょう。
他にもAIは、農業やヘルスケア、宇宙開発など、さまざまな分野での活躍が期待されています。
AIに期待を寄せ、惜しまず投資する投資会社たち
カリフォルニア州パロアルトに拠点を置くベンチャーキャピタル企業Accelは、AI開発事業への投資数1位を誇り、その内訳としては若い企業へ5億ドル (約500億円) 、大手企業へ15億ドル (約1,500億円) を投資しています。
また、同じくアメリカのNew Enterprse AssociatesもAIへの多額投資を行っています。
同社はソーシャルネットワークテクノロジーとAIによるヘルスケアの情報を組み合わせ、ユーザたちに健康に関するアドバイスをしたり、健康管理を行ったりするウェブサイト、WellTok’s CafeWell.comに投資しています。
「ディープラーニングと機械学習」へ多額の投資
AIのなかでも、ベンチャーキャピタルが最も多くの投資取引を行っている分野は、ディープラーニングおよび機械学習だそうです。

AI分野ごとの投資額の割合
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Nervana Systemsの創立者でチーフエグゼクティブを務めるNaveen Rao氏は、「ディープラーニングによって、人間の脳の構造を模した『ニューラルネットワーク』を通じてのコンピュータのタスク処理が可能となり、Google社によって開発されたAlphaGo (アルファ碁) に関しては、機械的な算定よりもむしろ人間の直感に近い『決断』が実現しました」と話します。
ディープラーニングに依存したプログラムは多岐にわたり、例えばFacebookのニュースフィードは、そのユーザに個人的に最も関連性の強いと思えるニュースをオーガナイズし、自動のタグ付けに関しても、同様のタイプのAIが使われています。
現在ビジネス分野で最も価値のあるAIは、音声認識と自動音声応答
また、Narrative Scienceの調査によると、200人以上もの企業CEO、CIO、CTOおよび科学者たちが音声認識と自動音声応答のソリューションが、ビジネスの分野において機械学習に勝り、最も幅広く利用されているAIソリューションだと明言しているそうです。
さらに同調査において、音声認識と機械学習に次いで15%を占めるのが、バーチャルパーソナルアシスタント。
バーチャルアシスタントとは、Google NowやApple Siriなどのスマートフォン機能に象徴されるAIで、その用途はミーティングのセットアップや、ウェブサーチへの回答、最も渋滞の少ない交通ルート案内など、ビジネスリーダーや消費者にとって実に有益なワンストップソリューションを提供していると言えるでしょう。
かつては人工知能は人間の敵、といったマイナスイメージもありましたが、こうして私たちの日常生活をサポートし、より便利にしてくれるAI。
それも若者だけではなく、お年寄りの介護までサポートしてくれるとなると、やはり期待せずにはいられませんね。
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Souce by: Raconteur、Narrative Science、CB Insights、Accel、New Enterprse Associates、WellTok’s CafeWell.com、Nervana Systems、Wikipedia
文/貞賀 三奈美