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韓国も大慌て。北朝鮮の核実験が「やめられない止まらない」ワケ

先日行われた北朝鮮による「核実験」が世界を騒がせていますが、彼らはなぜ、世界中から非難されても、制裁を受けても、核兵器の開発を続けるのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんが、その恐ろしい理由をわかりやすく解説しています。

北朝鮮核実験、中国の制裁破りが金正恩体制を存続させている

皆さんご存知のように、北朝鮮は9月9日、5回目の核実験を行いました。これを受けて、国連安保理は緊急会合を開き、「過去の安保理決議の明白な違反だ」と強く非難する声明を発表しました。

というわけで、今回は、「北朝鮮の核問題」について考えてみましょう。

なぜ北朝鮮は、核兵器をつくるの?

まず、もっとも基本的なところから。なぜ北朝鮮は、世界から孤立しても、制裁されても、核兵器開発を続けるのでしょうか? 「核兵器を持たない独裁者はアメリカに殺されるから」です。

たとえば、イラクのフセインを見て下さい。彼は独裁者でしたが、「大量破壊兵器」は持っていませんでした。しかし、アメリカは、「もっている!」と決めつけて、イラクを攻撃。彼を捕まえて処刑した。たとえばリビアのカダフィを思い出して下さい。彼もまた、殺されました。シリアのアサドは、ロシアが守っているので生きている。しかし、ロシアが守っていなければ、やはり殺されたでしょう。

というわけで、

は、アメリカに殺される可能性が極めて高い。だから、金日成も金正日も金正恩も、核兵器開発を続けるのです。

北朝鮮の核兵器は、どこまで開発が進んでいるの?

どこでも報じられているように、今回は5回目の核実験。

金正日が亡くなり、金正恩が後を継いだのが2011年。つまり、金正恩になってから、すでに3回目の核実験。しかも、今年2回目。ペースが速まっています

06年、09年、13年の実験は、原爆でした。しかし、今年1月の実験は、水爆と発表されました。そして、今回の実験では、とても重要な発表がされています。

北朝鮮、核弾頭の実験爆発に「成功」 ミサイル搭載可能と発表

AFP=時事9月9日(金)14時38分配信

 

【AFP=時事】北朝鮮は9日、同日実施した5回目の核実験が「成功」し、核弾頭をミサイルに搭載できることを確認したと発表した。国営メディアが伝えた。

原爆や水爆ができても、敵国を攻撃するためには、ミサイルに搭載できるほど小型化しなければならない北朝鮮はそれに成功した」と発表した。

もちろん本当かわかりません。とはいえ、核実験があると、必ず「ホントかわからない」という話が出てきます。

1回目の実験のときは、「ホントに原爆かわからない」と報道された。4回目の実験のときは、「ホントに水爆かわからない」と報道された。5回目の実験のときは、「ホントにミサイルに搭載可能かわからない」。

しかし、北朝鮮が「着実に核兵器開発を進めていることは事実なので、「楽観論」はアテになりません。

北朝鮮は、なぜ制裁でもサバイバルしているの?

北朝鮮が核実験を行うたび、国連安保理が開かれる。日本、アメリカ、韓国が議論を主導する。そして、中国、ロシアも「嫌々ながら」制裁に賛成する。しかし、金正恩は平然と生き残っています。なぜなのでしょうか?

実をいうと、中国が(中国らしく)、国連の制裁を破っているからなのです。だから、北朝鮮は、安保理が制裁を決めても、何とかなっている。

中国は4月以降、前回の安保理決議を受けた制裁を実施しているが、貿易統計によれば、北朝鮮の主要輸出品である石炭、鉄鉱石の中国への輸出量に目立った落ち込みは見られない。

 

北朝鮮関係筋も「平壌の物価は安定しており、制裁の影響はほとんどない」と指摘しており、中国が制裁を厳格に履行しているかには疑問符が付く。
(時事通信9月9日)

なぜ中国は、金正恩を守るのか?

日本ではよく、「中国も北の核実験に怒っている」と報道されています。それは事実なのでしょう。

しかし、その怒りは、日本、韓国、アメリカとは別の質の怒りです。というのは、北朝鮮が核で攻撃する可能性があるのは、韓国、日本、アメリカ。一方、北朝鮮が中国を核攻撃するなど、ありえません。だから、中国の怒りというのは、「俺の言うことを聞かない」レベルの怒りなのです。

そして、中国が金正恩を守らなければならない理由がある。中国にとっての悪夢は、朝鮮半島が韓国中心で統一され米軍が北と中国の国境までやってくること。だから、習近平は金正恩を嫌っていても、制裁を破って、支援し続けなければならない。

第2次朝鮮戦争はあるか?

「それでも中国が北朝鮮を守っている

このことは、「戦争抑止力」になっています。アメリカは戦争好き。今世紀に入ってわずか16年で、

と戦争している。しかし、北朝鮮がどんなに横暴なことをしても、戦争には「および腰」ですね。なぜでしょうか?

1つ目の理由は、いうまでもなく北朝鮮が核兵器を保有しているから」です。アメリカにはまだ届きませんが、韓国を核攻撃することはできる(もちろん、北自身も放射能被害を受けますが、自分=金正恩が殺されるかの瀬戸際で、何をするか想定できません)。ひょっとしたら日本も核攻撃できるかもしれない。そして、後5年もすると、「アメリカまで核搭載ミサイルを飛ばせるようになる」と言われています。

もう1つの理由は、中国です。

第2次朝鮮戦争が勃発した。中国が北朝鮮の側について、米軍、韓国軍と戦うのではないか? 1950~53年の朝鮮戦争は、そんな構図でした。中国が北朝鮮に大軍を送ったので、アメリカ、韓国軍は勝てず「引き分け」に終わったのです。アメリカも中国とは戦争したくない

というわけで、金正恩が、いくら暴れても

というわけで、「現状維持のまま進む可能性が高い

北朝鮮の未来は?

ということは、金正恩の未来は安泰なのでしょうか? 破滅のシナリオがあるとすれば2つでしょう。

1つ目は、北朝鮮が韓国を攻めてしまう。そうなると、韓国は自衛権を行使して、戦争が始まります。アメリカ軍はもちろん韓国側について戦うでしょう。「集団的自衛権行使」ということで日本も協力を要請される。もちろん、自衛隊が半島で戦うことはあり得ませんが、他の協力は最大限するべきです(ここで貢献しなければ、アメリカは、「自分だけ安全地帯にいる狡猾な日本の尖閣など守りたくない」となるでしょう)。

もう1つ破滅のシナリオは、中国経済がダメになって引きずられて崩壊する。中国経済がダメになり、「もう俺たちは、あんた(北)を助ける余裕ないよ」となれば、北朝鮮の金体制も存続できないでしょう。

いずれにしても、金正恩体制は、「長くない」と思います。

中国は、北を守って孤立する

金正恩は、まことに迷惑な存在。しかし、一点、日本にとってよいこともあります。

今回、国連安保理を主導したのは、日本、アメリカ、韓国。北朝鮮のおかげで、日米韓の結びつきが強まっています。中国は、「反日統一共同戦線」戦略で、この3国分裂を狙っているので、連携が強まるのは、まことにめでたいこと。

反日統一共同戦線を呼びかける中国

そして、欧州諸国も、「北朝鮮追加制裁完全支持状態。

皆さんご存知のように、欧州は、米中の間をフラフラしている。そして、どちらかというと、「中国寄り」になってきている。(例、欧州のほとんどの国が、アメリカの制止を無視して、中国主導「AIIB」に入った)。しかし、特に今年から、中国経済の減速が鮮明で、「中国離れが加速している(金の切れ目が、縁の切れ目)。「ならず者北朝鮮を守る、中国」ということで、北朝鮮のついでに中国も孤立していく。

こういうシナリオもバリバリありそうです。

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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