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トランプ「快進撃」は逆に大儲けの好機。次の狙いは中国経済破綻か?

これまでも英国EU離脱や中国経済崩壊危機などが要因となり発生してきたリスク・プレミアム(リスクのある資産の期待収益率から無リスク資産の収益率を引いた差)。現在は米大統領選でのトランプ候補のまさかの快進撃を受けリスク・プレミアム状態となり、世界の株価が急落しています。しかし、メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんはこの「トランプ大統領リスク」後、株価は大幅に上昇する、つまりは「リスク・プレミアムは大儲けのチャンス」とし、今後いつその好機が訪れるのかについての私見を紹介しています。

今後のリスク・プレミアム

まさかの米大統領選挙での接戦、FBIが再度クリントン候補のメールについて調査を開始したことで、楽勝ムードが一転、トランプ候補の可能性も出てきた。このため、世界市場でリスク・プレミアムが発生して株価は急落している。ということで今後のリスク・プレミアムを検証しよう。

現状、世界経済リスクはどうなっているのか?

このコラムでは、世界に存在するリスクを分析する記事が多い。ここで取り上げたリスクは、中国の経済破綻リスク、欧州銀行破綻、特にドイツ銀行破綻リスク、米露核戦争リスク、資源価格暴落リスク、ヘリマネリスク、米トランプ大統領リスクを述べてきたし、すでに終わったが英国EU離脱リスクもある。現時点で、米トランプ大統領リスクにより、世界の株価は暴落している。

中国の経済破綻リスクは、少し収束してきて、李克強指数が上昇してきている。鉄道貨物輸送量は大幅な増加に転じ、電力使用量も上昇してきている。この原因は、インフラ投資を増強していることと、鉄鋼減産や石炭減産を少し止めて、維持させているからである。

ここで生み出す製品をインフラ投資で作る道路、鉄道、住宅などに使っているからである。国営企業中心から民間企業にシフトする計画を李克強首相の内閣が提案したが、それを却下した形であり、国営企業中心の経済増強計画にしている。国営企業トップに太子党の人たちが関わり、習近平総書記はその人たちの支持で支えられているからである。

また、ドイツ銀行のCDSが低下してきているし、ドイツ銀行の取締役会メンバー、クリスティアン・ゼービング氏は1兆4,000億円の罰則金とする米司法省との減額交渉について「良好な進展」があったと。ということで、一時より懸念が和らいでいる。また、イタリアの銀行破綻は世界的な影響があるとは思えないので、リスク自体が小さい。

米露核戦争リスクは、シリアでの米国の対応は何もしないこととの選択であり、米国の作戦の中心をモスル奪還にして、アレッポの虐殺から目を背けたようである。ということで、ロシアの勝利が確定した。東欧での戦争リスクよりハッカー攻撃の方に目が行っているので、冷戦である事は確かであるが熱戦になることは、当面なさそうである。

資源価格下落で世界の景気は下押ししていたが、この資源の中心である原油価格が40ドルから60ドル程度に上昇して、OPECでの会議で、まだ合意は出来ていないが、サウジは増産を控えると言っているので、原油価格が30ドルまで下落する可能性はなくなってきた。もちろん、価格上昇もそれほどでもない。

日本経済は

日本経済は、1ドル100円以上であり、昔と比べて円高ではあるが、日本企業の競争力を削ぐほどではない。企業決算でも増収減益が多く、円高分の為替損益分に収まっている。日本経済の成長率は0%であるが、活況である。潜在成長率が0%であり、潜在成長の限界まで活況なのである、このため、人手不足にもなっている。

このため、トランプ大統領リスクが起こるまでは、日本の株価も、1万7,000円半ばまで上昇していた。

どうも、世界的にも経済成長が復活しているようである。米国の経済は、徐々にではあるが上昇しているし、新興国経済も資源価格が上昇してきたことで下げ止まり、ブラジルの株価は大幅な上昇になっていた。

世界経済は、成長率は低いが下落はしていないので、トランプ大統領リスク発生までは、株価も横ばいか上昇になっていたのである。

リスク・プレミアムの後

英国のEU離脱国民投票後、ポンドが大幅な下落になり、英国経済はプラス成長になっている。その上、英高等法院は、英国が欧州連合(EU)離脱手続きを正式に開始するためには議会の承認が必要になるとの判決を下した。英国議会の議員はEU離脱反対派が多く、国民投票で決まったので、多くの条件をつけて実質的にEU離脱ができないようにすることが考えられる。

というように、英国EU離脱もできるかどうか、わからなくなってきた。また、思い出して欲しいが、英国EU離脱後の株価上昇スピードは早くて、1ケ月もしないで、元の水準を回復している。経済は悪くないのに、リスク発生というチャンスを捉えて、ヘッジファンドなど機関投資家は、空売りをしてくる。必要以上に株価を下げることになる。

EU離脱後の株価下落時は、買いの大きなチャンスであったことになる。

今回の米トランプ大統領リスクも、終われば株価は大幅な上昇になるはずである。しかし、投資はご自身の判断で行い、情報の提供として、この記事を考えてくださいね。

次のリスク・プレミアムはいつか?

今回のトランプ大統領リスクは大きなチャンスになっている投資家も多いように思う。リスクが出たら、素早く売り抜けて、リスクが収まったら、素早く買うようにすれば、大きな儲けを手に出来る。

ということで、リスク・プレミアムは大儲けのチャンスなのであるとも言える。経済成長率があまり上がらない現状では、企業成長による株価上昇は、新興企業やベンチャーしかないが、その企業は倒産の可能性も高い。とすると、大企業投資で儲けを出すには、リスク・プレミアムの発生が1つの機会を作ってくれているように感じる。

ということで、次のリスク・プレミアムはいつ来るのか? ということになる。

1つ目には、12月米利上げ中止リスクでしょうね。FRBフィッシャー副議長は講演で「最近の経済指標は追加利上げの根拠をさらに強めた」と述べて、確率が70%にもなっている。市場も織り込んでいる。この市場予想を覆すとリスク・プレミアムになる。

事実、HSBCホールディングスとロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)は12月14日に終了するFOMCでも政策金利が維持され、利上げなしと予想している。

2つ目には、日本に財政危機が迫っており、ヘリマネや「預金封鎖」「通貨切り替え」「財産税」といった財政再建策について財務省で検討が行われたようである。暴力的な政策は無理であるが、ヘリマネなどの方法で通貨価値を下げてその後通貨切り替えする可能性はある。このようなことになったら、リスク・プレミアムになり、円暴落と株価暴落するが、その後株価急騰になることが予想できる。

3つ目には、中国経済破綻である。人民元安になっているのは、中国人民銀行が人民元札を無限大に印刷して、市場に出しているので、通貨量を増やしているからである。国営企業に無制限に貸し出していることによる。

このため、中国人は人民元をドルに代えて、海外に資産を移すことで、資産を守るようにしている。中国富裕層の資産管理を手掛けるクレジットイースの上海駐在マネジャー、Huang Qing氏は「過去1年間、われわれは多くの顧客の資産をドル建てに移動させる手助けをしてきたが、最大のネックはどうやれば人民元を法律に則って海外に移せるかということだった」と話す。

中国政府は近年、人民元が突然急落する事態を防ぐために一連の資金流出抑制策を打ち出してきたことで、簡単には資産を海外に逃がすことができなくなった。しかし、人民元の価値を守るために、人民元買い介入を政府は行い、このために外貨準備高が急減している。

どこかで中国の経済政策は行き詰まる。インフラ投資後、メンテナンス・維持管理が必要になるが、国営鉄道会社は大幅な赤字になっている。30万都市に全て高速鉄道を通すというのは、無理がある。

いつまで、このモデルが持つのか、数年か、数十年か、分からないが、いつか破綻する。その破綻前に農民への社会保障を確立して、消費経済にシフトできるかが、問題のようである。

これからも、リスク・プレミアムが起こり、その都度、株価の大きな変動が起こりり、儲けのチャンスが訪れるということである。

さあ、どうなりますか?

image by: Shutterstock.com

 

国際戦略コラム有料版』より一部抜粋

著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
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