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安倍総理が「トランプ会談」で絶対に言ってはいけない3つのこと

当選前は日本への暴言や無茶な要求など「言いたい放題」だったトランプ次期大統領ですが、選挙後の電話会談では安部総理の経済政策を評価するなど、終始和やかなムードだったと伝えられています。11月17日にはニューヨークでの会談も決定。これを受け、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、著者の北野幸伯さんが、安部総理がトランプ氏と会う際の注意点を記しています。

安倍総理がトランプに会う際の注意点

世界の報道を見ると、「トランプ・ショック」は続いているようです。日本だけでなく、世界中の人がびっくりしたのですね。

しかし、RPEの読者さんだけは、驚かなかったようです。トランプ当選後たくさんメールをいただきましたが、たとえばYさんは、

北野様

 

いつもRPEで有益な情報をありがとうございます! 遂にアメリカ大統領選挙はトランプさんが勝ちましたね!私の周りでも、「驚いた…!」「これからどうなるの?」とビックリしたり悲観したりしている声がありました。

 

でも、私はそんなに驚きませんでした。なぜなら、RPEを読んでいたからです。RPEのおかげで、以前よりだいぶ大きな視点で冷静に物事を見られるようになったことを実感できました。感謝です!

こういうメールをいただくと、「配信してて良かったな」と感じます。

さて、「ヒラリーが必ず勝つ!と信じていた日本政府。完全に読み間違えていた。しかし、安倍総理は即座に動き始めました。トランプさんに電話をし、アポをとったのです。

安倍首相とトランプ氏、17日に会談へ 電話会談で合意
トランプ氏「日米の特別な関係をさらに強化したい」

産経新聞 11/10(木)9:04配信

 

安倍晋三首相は10日午前、米大統領選に勝利した共和党のドナルド・トランプ氏と電話会談を行い、17日に米ニューヨークで会談する方向で調整を進めることで一致した。

 

早期にトランプ氏と会談し、日米関係の重要性を確認するとともに、日米が直面する課題などについて認識の共有を図る考えだ。

速いですね~。すばらしい! 17日に会談だそうです。電話では、どんな話をしたのでしょうか?

電話会談の冒頭、安倍首相は「トランプ次期大統領の類いまれなリーダーシップにより、米国がより一層偉大な国になることを確信する」と祝意を伝えた。

 

これに対しトランプ氏は「安倍首相の今日までの業績について高く評価している。今後数年間、共に働くことを楽しみにしている。日米関係は卓越したパートナーシップであり、この特別な関係をさらに強化していきたい」と述べた。

安倍総理「米国がより一層偉大な国になることを確信する」。トランプさん「日米関係は卓越したパートナーシップであり、この特別な関係をさらに強化していきたい」。

トランプさん、選挙戦中は、「在日米軍を撤退させる!」「日本が核保有するのは悪くない!」「朝鮮戦争が起こってもアメリカには関係ない、日本と韓国には、グッドラックだ!」などと過激な発言を繰り返していました。しかし、電話会談では、穏やかだったようです。

というわけで、17日、安倍総理とトランプさんの会談が行われます。今回は、この会談を成功させるためのポイントについて考えてみましょう。

安倍総理がトランプに与えられる最大のものは?

トランプさんは、世界最強国家アメリカの大統領になることが決まりました。大富豪で、奥さんは美人で、子沢山である。

すべてを手に入れたかに見えるトランプさんですが、実をいうと「得ることができていないもの」がひとつあります。それはなんでしょうか? 「尊敬」です。

いえ、トランプさんに投票した人たちは、もちろん彼を尊敬しているでしょう。しかし、ヒラリー支持者と、アメリカ、世界の支配層からまったく尊敬されていない

昨日、ロシアのニュースで、「アメリカと欧州のエリートがどれだけトランプをバカにしていたのか?」という話をしていました。ハリウッドスターの多くは、「トランプが大統領になったら、外国に逃げる」と話していた。欧州のリーダーたちも、露骨にトランプさんをバカにしていました。フランスのオランド大統領は、「トランプを見ると吐き気がする!」と言っていた。

そう、トランプは世界一の地位も大金も、きれいな奥さんも、健康な子供たちも得たが、エリートからの尊敬は得ていない

日本政府は、たしかにヒラリー勝利を確信し、トランプさんを無視していました。しかし、少なくとも欧州のリーダーのような批判悪口は言っていません。だから、安倍総理は、トランプさんが最も必要としているものを与えることができる。それは、「尊敬」です。

別に、特別何かする必要はない。会ったら、ギュッと強く握手して、「おめでとうございます!やりましたね! 一人でアメリカと世界をひっくり返しましたね!驚きました!」と言って、ニッコリ微笑めばいい。

もちろん、何か彼が喜ぶプレゼントを贈っても良いでしょう。アメリカの新大統領に対し、敬意を持って接することが一番大事です。それは、「卑屈な態度で」というのとは全然違います。

安倍総理は、トランプのスローガンを支持するべき

トランプさんのスローガンは、「偉大なアメリカを取り戻す!(Make America Great Again!)」です。安倍総理は、トランプさんに会ったら、「『偉大なアメリカを取り戻す』というあなたの目標を絶対的に支持します。いえ、アメリカは、すでに偉大ですが、さらに偉大になることを完全に支持します」と言いましょう。

すると、トランプさんは、「なぜ日本は、アメリカが偉大であることを支持するんだ?」と聞くかもしれません。そう聞かれたら、「日本は戦後、民主主義、資本主義の下で発展してきました。これは、アメリカが世界にひろげた体制です。もしアメリカが弱くなれば、独裁や共産主義が世界を覆うでしょう。そうなったら日本も困ります。私たちにとっては、アメリカが強く、繁栄していることが重要なのです」ときっちり論理的に説明しましょう。論理的に説明できなければ、「ただのお世辞」になってしまいます。

安倍総理は、「日米安保不平等論=正論だ」と言おう

トランプさんは、こんなことを言っています。「もし日本が攻撃されたら私たちは直ちに救援に行かなくてはならない。もし私たちが攻撃を受けたら日本は私たちを助けなくてもいい。この取引は公平なのか?」。

これは、まったく公平ではありません。日本が攻撃されたら、アメリカ兵は、日本のために死ななければならない。しかし、アメリカが攻撃されたら、日本兵は、決してアメリカのために死なないのです。なぜかというと、「日本は平和主義だから」。

常識的に考えると、これはとてもおかしく、「日本は世界で最も狡猾な国」と言われても仕方ありません。(もちろん、もともとは「日本が二度と反抗しないように」と、アメリカが現体制をつくったのですが…)。

それで総理は、トランプさんに、「日米安保が不平等だというあなたの主張はもっともだ。日米安保が片務から双務になるように、努力している。これからも努力を続ける」と言い、聞かれたら、「安保法制」「集団自衛権行使容認」などについて、説明するべきです。

これはしてはいけない

次に、会談時に「これはしてはいけないという注意点について。

1.TPP問題で、トランプさんに説教してしまう

安倍総理はTPP支持。トランプさんは、TPP反対。それで、安倍総理は、「TPPの意義などを説教したい誘惑にかられるかもしれません。しかし、これはやめておいたほうがいいです。「安倍は、上から目線のイヤな奴!」と思われることでしょう。政策議論は、向こうから聞かれるまでするべきではありません。時事通信11月11日には、こうあります。

トランプ氏は環太平洋連携協定(TPP)離脱を掲げているが、世耕弘成経済産業相は「TPPを日米が主導してアジア太平洋に広げていくことは非常に重要な取り組みだと、トランプ氏をしっかり説得していくことが重要だ」と指摘。

しっかり説得しないで欲しいです。これ、向こうの立場に立ってみましょう。日本は、トランプさんが大統領に就任する前から、「公約を破りやがれ!」と説得するというのです。トランプさんからすれば、こんなうざったいことはなく、「日本は、俺が大統領になる前に、アメリカ国民を裏切れというのか!?」となるでしょう。

2.中国の悪口を言ってしまう

私はダイヤモンド・オンラインの記事に、こう書きました。

「私も日本国民も、米国が世界のリーダーで居続けることを望んでいます」と言おう。トランプは、きっと喜ぶだろう。

 

続いて、「しかし国際社会は、米国が世界のリーダーで居続けるとは思っていないようです。ほとんどの米国の同盟国が警告を無視して、中国主導のAIIBに参加したことからも、それは分かります。世界は、中国が世界のリーダーになると思っているみたいですね」と言う。

 

すると、トランプの負けず嫌いに火がつき、「どうすれば中国に勝てるだろうか?」と考えはじめることだろう。

これですが、中国の件については初回から言うのは早すぎますね。中国に関して、どうもトランプさん自身も迷っているようです。ですから、日本が露骨に「反中を煽ると逆効果です。もちろん聞かれたら、「尖閣問題」「領海、領空侵犯問題」などを話すのはよいでしょう。しかし、中国の悪口を言うのはやめましょう

3.すぐに仕事の話をしてしまう

トランプさん、過去に「日本のビジネスマンはやってきて、How are you doing?とも言わずに金儲けの話をし始めた」というような話をしていました。運が悪かったというか。「いきなり本題というのは誰でも嫌なものです。そういえば、オバマさんは「仕事の話しかしない」ということで、はじめ安倍総理はびっくりしたそうです。

ポイントを整理しましょう。

  1. 尊敬を示すこと
  2. 「偉大なアメリカを取り戻す」という目標への支持を伝えること
  3. 「日米安保を平等にする努力を続けていく」意志を伝えること

してはいけないことは、

  1. TPP問題でトランプさんに説教してしまうこと
  2. 中国を批判してしまうこと
  3. すぐ本題に入ってしまうこと

というわけで、安倍総理は、是非トランプ次期大統領の親友になっていただきたいと思います。会談大成功を祈ります。

image by: 首相官邸

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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