日本と台湾が「トランプ大統領」を大歓迎すべき、これだけの理由

 

また、トランプ大統領は、アメリカの対ロシア政策を軟化させる可能性があります。プーチン大統領を「オバマ大統領より優れている」と持ち上げるなど、プーチンをよく称揚しているからです。その背景には、米ロ接近による中国牽制という意図も見え隠れします。そしてこれは安倍首相による日ロ接近ともシンクロします。

先日もモディ首相が来日しましたが、日本はインドとも連携して中国包囲網を構築しようとしています。こうした動きはトランプ氏の「アメリカ・ファースト」とも利害が合致する可能性が高いと言えるでしょう。

楽観視することはできませんが、トランプ陣営から出てくる情報では、日本や台湾よりも、対中政策がより厳しくなると予想されます。それに、アメリカがアジアでの軍事的プレゼンスを低下させることは、日本にとっては日米地位協定などの「不平等」な協定見直しや憲法9条の改正に拍車をかけることにも繋がります。

2013年に安倍首相が靖国神社を参拝した折には、アメリカ大使館が「失望した」などという声明を出しました。言うまでもなくこれは、オバマ政権が命じたものです。アジア・リバランス政策を重視するオバマ政権は、韓国の反発によって日米韓の連携が崩れることを懸念したのでしょうが、多くの日本人は内政干渉だと感じたはずです。

こうしたことも、トランプ大統領の誕生によって、変わってくる可能性があります。もともと自民党は共和党とのパイプが太いですし、これまでアメリカの圧力でできなかった防衛システムの強化、日本の独自外交も進んでいくと思われます。

それにしても、大方の予想に反してドナルド・トランプ氏が次期大統領に決まったことは、日米のメディアの終焉を示す象徴的な出来事でもありました。このメルマガでも以前お伝えしたように、私が10月に訪米した際、日米のメディアではヒラリー当選が確実のように伝えていましたが、ロサンゼルス在住の日本人でトランプ当選を予想する人が少なからずいました。

ヒラリーが優勢といわれたカリフォルニア州でも、トランプ当選を感覚的に予測していたということは、あれだけのネガティブキャンペーンでも、それを信じない人が多かったということです。日本のメディアはアメリカのメディアの伝えることをそのまま流すだけですから、「トランプはとんでもない人物」という評価ばかりが先行し、「だから当選はない」という論調につながっていきました。

しかし予備選のときも予想を外し、本選でも予想が大外れしたわけですから、メディアとしての信用力はガタ落ちです。もともとアメリカは新聞やテレビメディアを信用する人の割合が日本に比べて低く、世界価値観調査(2010~2014年)によれば、日本では新聞・雑誌を信頼できると考える人が73.8%、テレビを信頼できると考える人が69.7%に対して、アメリカはそれぞれ22.8%、23.2%しかいません。むしろ信頼できないと答える人のほうが多いのです。

メディアへの信頼度が高いだけに世論誘導されやすい日本

もともとアメリカではメディアはあまり信用されていないので、今回の影響は「軽微」ともいえます。むしろ影響が大きいのは日本のほうではないでしょうか。ネット世代が増えて、新聞やテレビを必要としない人はこれからますます増えてくるわけですからなおさらです。

これまでも日本のメディアの偏向ぶりは問題となってきました。安保法制のときもそうでしたが、その影響力の低下は静かに、しかし確実に広がっています。トランプ現象は、日本のメディアの終焉、そして彼らが支持してきた左派の終焉にもつながると思われます。

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