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営業利益9割減で「溺死」寸前。かっぱ寿司は息を吹き返せるのか?

スシロー、無添くら寿司、すし銚子丸など、競合店がさまざまな工夫で業績を伸ばしていく中、かつては激安回転寿司の代名詞でもあった「かっぱ寿司」が苦戦を強いられています。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では、著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが同社の問題点を鋭く指摘、生き残りをかけて「今、早急にすべきこと」を記しています。

「脱カッパ」でイメージ刷新のかっぱ寿司、それでも苦境が鮮明

こんにちは、佐藤昌司です。回転寿司店「かっぱ寿司」を展開するカッパ・クリエイトの2016年4~9月期決算は深刻なものとなりました。本業の儲けを示す営業利益が前年同期比89.1%減となる1億4,400万円(前年同期は13億2,800万円)と壊滅的な状態です。売上高は398億円前年同期比5.3%減)となっています。

同社は10月27日に業績予想の下方修正を発表していました。売上高は35億円減、営業利益は18億円減とそれぞれ下方修正しています。今回の決算はこの発表を受けてのものになります。

同社は不振の理由として、前期下期に実施したコスト削減施策の影響による店舗オペレーション力の低下により顧客満足が低下したこと、競合との競争が激化したことを挙げています。

前期下期に行ったコスト削減施策として、労働時間コントロールによる人件費の抑制等を行いました。しかし、結果として店舗オペレーション力の低下を招いてしまいました。16年4~9月期には人員の増員と教育を重点的に実施しましたが、店舗オペレーション力は回復していません

16年4~9月期の人件費は前年同期から6億7,000万円の削減となっています。人員の増員をして人件費が下がったということは、「従業員が大量に辞めてしまい、補充として人員の増員を行なったが、人員数は以前の水準には達しなかったために人件費が下がった」と解釈することができます。これは一つの仮説ですが、前期下期に行なった労働時間コントロールにより従業員が大量に辞めた可能性を推察することができます。

人件費を削減した結果で売上高が下がってしまったら本末転倒と言わざるを得ません。必要な人件費まで削ってしまったら、十分なサービスが展開できないことは明白です。人件費はコストですが売上高を生み出す原資でもあります。後者の認識の欠如があったのでしょう。

同社の問題はこれだけではありません。同社自身で「他社と比較すると商品品質レベルにおいて劣っている」と述べているように、味の品質において競合と比べて劣っていることが問題となっています。「安かろう悪かろうというイメージが定着してしまいました。

同社は14年12月に外食大手のコロワイドに買収されました。コロワイドの指導のもと、再建を推し進めていました。寿司の味の再建は進み、以前に比べて美味しくなったようにも思えます。しかし、そのことが消費者には十分に伝わっていない状況です。

そこで、かっぱ寿司は10月に「脱カッパ」でイメージ刷新を行いました。かっぱ寿司といえば「カッパ」がトレードマークでした。長年親しまれたカッパのロゴを外し、皿を数枚重ねたロゴに差し替えたのです。ただし、「かっぱ寿司」の名称は残したままです。ロゴの刷新により、「安かろう悪かろう」というイメージの払拭を狙っているようです。

イメージの刷新は評価することができます。しかし、同社は他にも課題が山積している状態です。イメージ刷新だけではどうにもならない状況です。中でも大きな問題として指摘できるのが「売上原価率仕入」です。

16年4~9月期の売上原価率は48.4%となりました。同社の直近5年における売上原価率は45%程度です。つまり、同期は売上原価率の上昇で利益を圧迫したことがわかります。一方、直近5年における売上高に対する仕入の割合は35%程度です。厳密には言えませんが、売上原価率と仕入の割合に乖離がある場合、食材の廃棄ロスや不適切な値入れ(仕入原価に一定の利幅を加えて売値を決定すること)があることを意味します。

さらに、同社の仕入の割合は年によって大きく変動しています。直近5年では、28.8%~47.2%の間で大きく上下しています。廃棄ロスや販売機会ロスが大きく発生している可能性が非常に高いといえます。このことは、食材の鮮度を維持する上でも問題があります。

一方、売上原価率が上昇した理由として、食材に費用をかけていると考えることもできます。同社は「商品力の強化」を最重要課題として位置付けていました。下期に向けては、「高品質な商品を投入する」と宣言しています。食材に費用をかけて「安かろう悪かろう」からの脱却を図ろうとしているように思えます。

そういう意味で、食材に費用をかけることは悪いことではありません。ただ、それが売上に結びつかないのであれば意味がありません。そのことが消費者に伝わらなければ絵に描いた餅といえます。

同社はロゴの差し替えを行うことでイメージの刷新を図りました。ただ、それだけでは不十分といえるでしょう。思い切った宣伝広告やキャンペーン、イベントなどを行うことで話題性を提供し、その上で「かっぱ寿司は変わった」と強く訴求するといった抜本的な施策が必要といえるでしょう。店舗オペレーション力の回復と接客サービス力の向上も急務といえそうです。

 

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店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業
著者/佐藤昌司
東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。
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