北朝鮮で今月から来月にかけて開催が見込まれる第9回朝鮮労働党大会は、金正恩総書記の統治下における成果を内外に示す場であり、体制の結束と威信を誇示する意味合いを強く持ちます。北朝鮮は何を示そうとしているのか、メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では、著者で宮塚コリア研究所代表の宮塚利雄さんが北の現状を詳しく語っています。
第9回朝鮮労働党大会に向けて核兵器開発で国威発揚を図る
毎年、この2月のコラムでは「火喰い」の話を書いている。寒さが厳しい北朝鮮の冬の中でも、2月は特に冷え込みが厳しい。大正14年には、中朝国境・鴨緑江上流の中江鎮で零下41度を記録したという。
2月は食糧が底をつき始める時期でもある。人々は寒さから身を守るため、食糧と燃料を確保し、飢えと凍死を避けなければならない。近年は暖冬傾向にあるとはいえ、暖を取るための「火喰い」の慣習は、今も北朝鮮北部で受け継がれている。
さて、北朝鮮は今月か来月にも、第9回朝鮮労働党大会の開催を予定している。5年に一度の重要行事だ。金正恩総書記にとっては、内外に向けて成果を示し、国威発揚を図る場でもある。
金正恩総書記は昨年2025年9月、核関連分野の科学者・技術者との重要会議を開いた。核兵器開発を最優先課題とする方針を打ち出し、「核戦略を中軸とした力による平和維持は絶対不変の立場だ」と強調した。さらに、「国家の主権と安全、発展を保証する核の盾と剣を不断に研ぎ澄ますべきだ」と述べ、党と政府が核技術分野を最優先で支援する姿勢を明確にした。
朝鮮中央通信は2025年12月26日、金正恩総書記がミサイルと砲弾の工場を視察し、2026年から生産能力を拡大するよう指示したと伝えた。「抑止力を高めるうえで、ミサイルと砲弾の生産部門が最も重要だ」と強調し、新たな軍需工場の設置方針も示した。次期党大会で生産計画を決定する考えだという。
視察先は、KN23生産工場と240ミリ多連装ロケット砲の砲弾工場とみられる。KN23は2019年以降、日本海への発射実験が繰り返されてきた。ウクライナで残骸が発見され、ロシア軍の攻撃に使用された可能性も指摘されている。
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専門家は、KN23について「改良型の開発と実戦テストを経ている」と分析する。大量生産の様子を公開することで、前回党大会以降の成果を誇示する狙いがあるという。
一方、240ミリ多連装ロケット砲は韓国首都圏を射程に収めるとされる。前線配備の老朽放射砲の更新を目的に開発が進められており、戦争遂行能力の面で米韓両国にとって脅威となる装備だ。
さらに朝鮮中央通信は2025年12月25日、金正恩総書記が8,700トン級の原子力潜水艦建造事業を現地指導したと報じた。原潜建造は2021年党大会の「国防力発展5カ年計画」に盛り込まれている。金正恩総書記は、米国が韓国の原潜建造を承認したことに反発し、「海軍力の核武装化の加速」を指示した。
建造中の攻撃型駆逐艦と原潜が、艦隊戦力を飛躍的に高めるとも強調した。「水中秘密兵器」の研究状況も確認し、海軍戦力の再編と新部隊創設の構想にも言及した。韓国の原潜計画については、「国家の安全と海洋主権を深刻に侵害する」と非難している。
北朝鮮は今年に入り2026年1月4日午前7時50分頃、平壌付近から日本海へ弾道ミサイル数発を発射した。韓国の聯合ニュースは、KN23系列を基に極超音速滑空体を搭載した「火星11マ」の可能性があると分析している。
その一方で、内部統制の強化も目立つ。2026年1月20日付の朝鮮中央通信によれば、金正恩総書記は咸鏡南道咸興の機械工場改修記念式典に出席し、「改修に問題があった」として担当の揚勝虎副首相をその場で解任した。詳細は明らかにされていないが、党大会を前にした綱紀粛正の一環との見方が出ている。党第9回大会を控え、体制内部の引き締めが進んでいることは間違いない。
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