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日本の「ゴミの分別」は本当に役に立っているのか?武田教授が苦言

話題となった「日本はゴミの分別をもうやめよう。武田教授が指摘する日本人の悪癖」という記事で一般論を覆す事実を明かした、メルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』の著者で、中部大学教授の武田邦彦先生。私たちが日頃から自治体のルールに従って厳格なルールに縛られている「リサイクル」や「ごみの分別」は本当に必要なのかをテーマに、実際の数字を見ながら今後数回に渡って検証していきます。

分別は役に立っているのか?(1) 食べ物はリサイクルできるか?

「ゴミの分別は役に立つのか」を科学的に見る

毎日、多くの人が「ゴミの分別」をしています。地域によっては「分別されていなければ収集しない」というところもありますし、ある自治体では「他人が出したゴミ袋の中身をチェックして、正しく分別されていなければその家に返す」などという「自由に生活して良いと憲法に書いてあることと矛盾するようなことも行われています。

でも、本当に分別が大切で、分別しなければ日本の環境が破壊されるとか、子供の時代に汚染を残すというなら、強制的にでも分別をしなければならないでしょう。

そこで、このシリーズでは「分別するのは本当に役に立つのか?を科学的に整理して考えてみたいと思います。

人間が生きる事というのはどういうことでしょうか? お母さんが赤ちゃんを産み、多くの人がかかわってすくすくと育ち、やがて成人になって社会に出て行きます。社会人として結婚し、家庭を持ち、仕事で社会に貢献し、そして老年になってやがて他界します。この間、多くの生物と違い人間は多種多様のものを使います

人間と比べて、たとえば樹木はほとんどを自分でやります。大草原に一粒の種が落ちると、それがやがて芽を吹き、双葉になり、さらに成長してやがて大きな樹木になります。

ところが人間は生物が誕生してから37億年後に誕生した欠陥生物なので周りのあらゆるものを使いながら人生を送ります。動物はおしめも使いませんし、ご飯も調理しません。学校も、受験勉強も、結婚式も、洋服も、電車も……すべていりませんが、人間にとってはとても大切なものです。だから、たとえば日本人は一年に一人当たり約20トンもの資源を使います。一年に必要な食料は約200キログラムですから、動物に比較すると実に100倍の資源を使っていることになります。

だから、あまりにもったいない、少しでもリサイクルして再利用したいと思うのが人情というものです。でも、それは「できること」なのでしょうか?

環境を考えるのであれば「リサイクル」よりも「食料廃棄量」を減らすべき

一年に200キログラムを消費する食料ですが、食べて、それで体を作り、毎日のエネルギーにして残りが糞尿になります。人間の排出する糞の量は1年で70キログラム程度で、残りはエネルギーとして消費されて吐く息の中に入り込んでいます。だから食品リサイクルするとしたら、70キログラムの糞ですが、もちろんリサイクルしても食料にはなりません。かつては畑に撒いて肥料として利用していましたが、現在では伝染病の防止、臭気などから使われることはありません。

むしろ糞尿は下水道に流れ、集中処理場でさらにエネルギーや物質を使って処理をして海などに流しています。それしか方法はないのですが、その理由は、「食べることのできる食料は清潔で栄養価に富み、味もよく、それに対して使い終わった糞尿は汚く、栄養価値はなく、到底人間が食べることができないから」ですが、「使うということは価値のある状態から価値のない状態」にして、その結果、人間が活動できるということですから、本質的なことなのです。

このように「元に戻らない世界」に私たちはいて、それはちょうど、昨日は今日に戻らない、時間は一方向に進むというのと原理的には同じです。

よく「食品リサイクル」というのを聞きますが、食品は実際に食べられたものはリサイクルできませんし現実にリサイクルしてもいません。ところが、高級ホテルなどで仕入れた食料の90%ぐらいを使わずに捨てるという場合には、捨てる食料も新鮮なものが多いのですが、賞味期限があるので人間は食べることができません。そこで若干は動物のエサなどに使えます。それに対して一般家庭からでるゴミの中の廃棄食品などは非衛生的で価値もなくもし再利用すると危険極まりないものです。

またごく一部、たとえば農家が畑に「自分の家で食べ残した食料」を畑の土に混ぜたり、たい肥にしたりすることもできます。でも日本全体の量のうちほんのわずかです。また世界的に見ると、人口の5分の1ぐらいを占める先進国の「食べ残し食料」は少し回収できますが、世界全体から見るとそれはほんの少しにすぎません。

むしろ、現在の日本の食品リサイクルというのは、制度があり税金が使われるので、「仕事としては成立する」とか「できるだけ食べ残してくれれば使うことができる」ということで、到底、環境を改善したり資源を節約できるということではありません。それより、日本は食料の多くを海外から輸入していて、その40%を廃棄しているとされています。もっと食材を大切にして食べ残しを減らすほうがずっと環境に良いのは言うまでもないでしょう。

もう一度、整理してみると、人間は一年に20トンの資源を消費し、そのうち動物並みに使う食料が100分の1の200キログラムあり、それは糞となって70キログラムが排出され、むしろさらに資源を投じて浄化する必要があります。一方、食料自給率が40%でその40%が捨てられていることから、無駄にしている食料は50キログラムにおよび、その数%がリサイクルできるので、食品リサイクルで再利用できる資源量は全体の0.0075%(1万3000分の1)となり、限りなくゼロに近いことがわかります。(次回につづく)

image by: cowardlion / Shutterstock.com

 

武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』より一部抜粋

著者/武田邦彦
東京大学卒業後、旭化成に入社。同社にてウラン濃縮研究所長を勤め、芝浦工業大学工学部教授を経て現職に就任。現在、テレビ出演等で活躍。メルマガで、原発や環境問題を中心にテレビでは言えない“真実”を発信中。
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