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日本の「お客様は神様です」精神が、ビジネス的に非効率という現実

日本の接客に慣れている日本人が海外のホテルに宿泊したとき、従業員のあまりにもラフな態度に驚くことはよくあります。しかし、日本の「お客様は神様です」精神は、アメリカ人から見るとビジネス的にも「非効率」で、北米に比べてリピート率も低いそうです。メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者で米国の邦字紙「WEEKLY Biz」CEO 兼発行人の高橋さんは、アメリカの有名ホテルで働いていた日本人ホテルマンから「日本の接客は、アメリカと比べて本当の接客ではない」と言われ愕然。その理由は、私たち日本人にとって「意外」なものでした。

日米“接客”徹底比較

先日、ある有名なホテルマンの方と食事をご一緒する機会がありました。 彼は、世界中で誰もが知っている有名ホテルの副支配人だった日本人です。そこでとてもとても印象に残った話を聞くことが出来ました。

先日、東京出張で、日本のホテルの素晴らしさ、特にスタッフの接客サービスの完璧さに触れ、そのことに感動した、という話を彼にすると、

「でも、日本の接客は本当の意味での接客ではないですよね」と一刀両断。

本当の意味での接客??

いやいや、接客・サービス業に関しては圧倒的に日本の方が上でしょう。 そう噛み付く僕に彼は余裕の笑みで興奮する僕の話を最後まで聞いてくれました。飛行機会社も、ホテルも、レストランも、映画館の受付まで。 日本はとても気持ちのいい対応をしてくれます。必死でしゃべる僕を見て、彼は十数年、世界の超一流のホテルで培った、アメリカにおける本当の意味の接客を説明してくれました。

北米におけるサービス」は、その背景に「宗教法律がシッカリと存在します。幼少時から「教会」に通う習慣のあるアメリカ人は、「自由平等の精神が染み付いてる。 「自由」であるということは、人が暮らしていく中の精神的苦痛を伴わない、自由。 「平等」であるということは、人種、国籍、そして相手が「お客さま」で、こちらが「サービスする側」であったとしても、人権を損害されない、平等です。なので、日本のように異常なほどの「お客様は神様です精神がない

サービスは完璧に提供するけれど、神様でもないのだから、平等なのだから、卑屈にへりくだったりはしない。 そんな自由が保証される。確かに、そう言われれば、日本の「お客様は神様です」精神は、海外に住む人間からすると、少し行き過ぎの感も否めません。

それにもっと突き詰めれば、その精神は「利益至上主義とも言えるのではないのか、と思ってしまいます。 神様のように扱うのは、利益を落としてくれるから。 落としてもらう為に「神様のように扱いましょう」。そうは考え過ぎでしょうか(考えてみれば、神様からお金とっちゃダメだよね。 。 )。

なので、こっちでは、フレンドリーに接することがなによりも優先されます。

この街で買い物をした後、従業員が外までお見送りにきて90度のお辞儀で「ありがとうございましたーッ!!」と声を張り上げるシーンを見たことは皆無です。

どんなに高い買い物をしたところで「Have a nice day♪」と笑顔で手を振られるくらいです。 「良い一日を」のセリフの裏には「あなた、いい買い物したわね」くらいの意味が含まれているかもしれない。 実際にそう言われたこともあります。 おまえんとこで買ったのに、いい買い物したわね、もないだろうと思わないでもないけど、買うか買わないかは、あなたの「自由」。 誰に無理強いされたわけでなく、自らの意志で買ったので「良かったわね」とフレンドリーに送り出す。 そこも「自由」と「平等」の精神が見え隠れします。

そして、「法律」。

人種であり、宗教であり、接客中、お客に対してのNGワードが日本のそれと比べて、限りなくあります。 差別的な発言をしたり、振る舞うと、日本人の想像を超える賠償金、慰謝料が発生しかねない。 日本のクレーマー被害とはレベルが違う損失をホテル側、レストラン側は被ります。なので(彼いわく)北米の一流ホテルの接客担当は、そのへんの弁護士以上に法律に詳しくなるとのこと。 おおげさな話ではないのかもしれません。

でも、それは、かつて「自由」や「平等」を「法律」で、日本ほど国民みんなが保証されなかった過去の歴史がそうさせているのかもしれません。そう考えると、確かに「宗教」的な意味合いや「法律」的な見解を持って、そこまで接客をしている人は日本では限りなく少ないと言えるでしょう。

彼いわく、日本の接客はクレームを入れられない為のマニュアルなんです」。心がないー、と。なので、イレギュラーが発生した際には、予測不能なことが発生した場合には、「何も対応できないと言います。 なぜならマニュアルに書いてないから。

北米の接客は宗教と法律に基づき、日本のサービスは紙に書かれているマニュアルの暗記、だと。 そう言われました(もちろん総合的な話です。 そうじゃない日本人も、そうじゃないアメリカ人ももちろんいる、と彼も言いました)。

クレーマーを増やさないため(面倒を起こさないため)、リピーターを増やすため、「お客様は神様です」なフリをする日本の接客は、本物ではないと断言し、なにより最も重要なことは、日本と北米のホテル利用客のリピート率が、(厳密な数字は把握されてませんでしたが)圧倒的に北米の方が上だということです。

つまり、割り切って「ビジネス」という視点から見たとしても、へりくだる日本のやり方より、日本人から見るとちょっと失礼に感じちゃうほどフレンドリーな北米のやり方の方が利益を出している、ということになります。 

うーーーん、、、、、。 。 そう言われてしまうと、何も言い返せません(笑)。

確かに、前回の日本出張時、NYの空港で出発前に時間が空いたので、空港内のCDショップに寄りました。 お目当てのCDのタイトルを店員に聞くと、ガムをくちゃくちゃ噛みながら、彼はめんどくさそうに「ちょっと待て」と点数で言うならゼロどころかマイナスの態度で、いちおう探し始めました。 それでも探し始めると必死になってくれ、カウンターの中に僕を呼び寄せて「一緒に探そうぜ」とコンピューター上の在庫管理を検索し始めてくれました。 結構、長時間に渡り、一生懸命探してくれます。 もちろん態度は最低です(笑)。あいかわらずガムを噛みつつ、丸い椅子に自分だけ腰掛け、マウスを触ってない方の手でほおづえをつき。 でも、探してくれた。 ないとわかると、他のタイトルをススメたり(笑)。入荷してやるから住所書け、とメモを渡してくれたり。 結局、「もういいよ、ありがとう」と僕が言うまで30分近く時間をとってくれました。

成田に到着して、CDショップで同じ質問をすると、女性店員は完璧な日本語で「申し訳ございません、こちらでは把握しかねまして」と、完璧なお辞儀で済まされました。 その間20秒。 態度は100点満点中120点です。果たして、本当の接客とは、どういう意味なんだろう、、ちょっとだけそう考えてしまいました。

もちろん、いまだに僕個人の意見としては日本の接客の方が素晴らしいとは思います。ただ、日本に行って毎回感じる、特に年配の男性の、サービス業の方々に対してのあのエラそうな態度には辟易させられるのも事実です。

新宿の大きなバスターミナルのチケット売り場。 窓口の向こうのお姉さんに、すべて「おう!おう!」で答えるオジさんは、振り向き様、僕にぶつかると「あ、スイマセン、スイマセン」と人格どころか、人間自体が変身したようでした。

なにより、そのホテルマンの彼の話を信じると、ビジネス的に見ても、その消費者に対しての行き過ぎの気遣い接客が、北米ほど利益を上げてないと聞くと、そろそろ振り切りっぱなしの「お客様は神様です接客は限界を迎えてきているのかなと思います。

あまりに消費者優先主義の母国に、アメリカ暮らしの僕が出張に行くたび、最後の最後には、レストランで食事してお金を払おうとすると「そんなお代金なんて滅相もございません!」って言われかねないんじゃないかな、とありえない心配をしてしまうほどです。

そっか、そういわれてみると、そうかもな、、、、。

食事の帰り道、思いっきり論破されてしまった僕は少し考えを改めようかと思いました。

日本の接客に慣れてしまえば、アメリカの接客はフランク過ぎると感じるかもしれない。 逆にアメリカ人が日本に観光に行くと、あの店員は何か裏があるのか?必要以上のへりくだった接客に不信感を覚えるということも聞いたことがある。

でも、もし、世界的基準で見れば、どちらが不自然かというと圧倒的に日本の方だろう。

OMOTENASHI ! と世界に訴えて、その言葉が市民権を得たならば、その精神も市民権を得るほどのモノを裏にもってなきゃいけない。彼の言う通り、本当の意味での接客はいまのところ、北米にあるのかもしれません。

そして、今日

お正月旅行に利用する某米系の航空会社にマイレージの件で電話で問い合わせてみました。

いろんな担当にたらい回しにされ、HOLD ON! と待たされ、10分以上、保留音すらない無音の状態で待たされ、結局、プチって切れるー。この国では珍しいことではなく、またチャレンジ。 2回目もまったく同じ結果で、3回目も同様、電話がプチって切られた時に思いました。

心がなかろうが、紙に書いたマニュアルだけだろうが、用件ちゃんとしてくれりゃそっちの方がいいよ

やっぱり、僕は断然日本派です(笑)。

image by: Shutterstock

 

NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』 より一部抜粋

著者/高橋克明

全米No.1邦字紙「WEEKLY Biz」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ400人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる

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