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【書評】米露中という「猛獣」に囲まれた日本は「老子」が救う

中国の哲学者で道教の始祖・老子が著したといわれる『老子道徳経』。成立から2,000年以上を経た今となっても、多くの人に影響を与えて続けています。今回、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんが紹介しているのは、そんな書が「超訳」された1冊。そこには、ロシア・中国・アメリカといった「猛獣」たちを相手に、日本が取るべき対応についての明確な答えが記されている、と言います。

老子の戦略で、日本は栄える

今は、「グローバル化への反動の時代」といえるでしょう。

プーチンはいいます。「ロシアの国家イデオロギーは、『愛国』だ!!!」。

習近平はいいます。「中国の夢!!!」(中国は1840年のアヘン戦争前、常に世界の中心であった。私は、中国を「あるべき地位=世界の中心」に戻す!)。

トランプはいいます。「アメリカ、ファースト!」。

世界のあちこちに「自国第1主義」を掲げる、個性の強いリーダーが続々と登場している。嗚呼、世界一自己主張が苦手な日本。どうすればいいのでしょうか?

全然関係ないような話をします。私は最近、ある「家宝級」の本をプレゼントしてもらいました。

ラブ、安堵、ピース 東洋哲学の原点 超訳「老子道徳経」

黒澤一樹 著/アウルズ・エージェンシー

私も非常に尊敬する黒澤一樹先生が、「老子道徳経」を、普通の人でも楽しんで読めるよう、訳してくださったのです。今まで、老子といわれても正直わけわかりませんでしたが、これを読んで、相当理解が進みました。それどころか、「この世の秘密」までわかったような気がします。

皆さん、朝から晩まで必死に働いて、命削って成功している人、周りにいますか? あるいは、朝から晩まで必死に働いて、命削って、なお成功していない人、周りにいますか? では、いつもストレスフリーに見えて、欲もなさそう。社内に敵がいなくて、上司にも同僚にも部下にも嫌われてなくて、努力しているようにはみえないのに、自然と成功している人。まわりにいますか?

その人は、ひょっとしたら、「老子的生き方」をしているのかもしれません。老子の生き方は、魅力的です。ひょっとしたら「人生激変級の本ですので、だまされたと思ってぜひご一読ください。

実は栄える老子の戦略

話を元に戻します。「反グローバル化」「ナショナリズム」の時代。世界には、個性と我が強いリーダーがたくさん出てきています。日本は、トランプ、習近平、プーチンのような猛獣」とどうつきあっていけばいいのでしょうか? 「老子」に聞いてみましょう。61章。

大國者下流。天下之交、天下之牝。牝常以靜勝牡。以靜爲下。故大國以下小國、則取小國、小國以下大國、則取大國。故或下以取、或下而取。大國不過欲兼畜人、小國不過欲入事人。夫兩者、各得其所欲、大者宜爲下。

どひゃ~、わけわかりません。黒澤先生の訳は。

大国は、大河の下流。すべての流れが交わるそこは、世界中が慕う女性のようなもの。いつの時代も、男が女性に敵わない理由は、女性が、じっと静かに下手に出るからだ。大国だからこそ、ものごし静かに小国にへりくだって接することだ。そうすれば、小国からの信頼が得られる。そしてまた、小国の側もへりくだって大国に接すれば、大国の信頼を得ることができる。

どうですか、これ? 日本は、小国ではありませんが、とにかく、大国には「へりくだって接すればいい」と。私は、本当に、「そのとおりじゃないか!」と思います。日本のいわゆる「専門家」は、口を開けば、

「日本はもっと自己主張せよ!」
「日本は、もっと貪欲に国益のための戦え!」

などといいます。日本は、「戦後、自己主張もやめ、国益のために戦うこともやめた」と。そうはいいますが、第二次大戦後の45年間、世界でもっとも成長しもっとも繁栄したのは日本です。

日本は戦前、戦中、強気で自己主張し、国益のために戦い、そして敗北しました。(例、国際連盟加盟国42か国が「満州国」建国に反対。日本は、自説を曲げず、連盟を脱退した)。しかし、「老子的」になった戦後は大繁栄することができた。

もう一国、日本と同じ境遇の国がありました。西ドイツです。西ドイツも、戦後「老子的生き方」を強いられました。西ドイツは1990年、東ドイツを吸収。そして、いまでは「EU=ドイツ帝国」といわれるほど力をつけている。

もう一国、「老子的外交」で成功した国があります。意外なことに、09年以前の中国です。中国は、「平和的台頭」を掲げ、日本以外の国から警戒されることがほとんどなかった。結果、1980年から30年間発展をつづけ、2010年には日本をぬきGDP2位に踊り出ます。しかし、09年、「独り勝ち」になり、傲慢になった中国は、「老子的」路線を捨て去った。そして、習近平は、「世界皇帝」のごとく、ふるまうようになった。「老子を捨てた中国はボロボロですね。

安倍総理=猛獣使いの秘密

ここまでの話、老子云々は別にして、安倍総理は理解されていることでしょう。だから、「猛獣使い」といわれるのです。

猛獣が吠えているところにいき、一緒に吠えたらケンカになります。そうではなく、吠えている猛獣に、「どうしてあなたは吠えているのですか? 少しお話を聞かせていただけませんか?」といえば、吠えるのをやめて、いろいろ話してくれるでしょう。

トランプさんのところに行き、「すでに米軍駐留費用の75%を負担している日本に対し、もっと金を出せという。あなたは、何もわかっていない!」といえば?

トランプさんは、獰猛になって「なんだと! それなら米軍を撤退し、習近平に、『尖閣有事になっても米軍はかかわらない』と電話するぞ! どうなるか、お手並み拝見だ!」と吠えることでしょう。

そうではなく、総理はにっこりほほ笑んで、「トランプさん、大勝利おめでとうございます! すごかったですね!」といって、戦わないだからうまくいくのです。それを野党は、「朝貢外交」というのですから…。

争わない力

もう一つ、とても気に入った68章を紹介します。

善爲士者不武。善戰者不怒。善勝敵者不與。善用人者爲之下。是謂不爭之徳、是謂用人之力、是謂配天。古之極。

 

優れた武士は威圧しない。秀でた戦士は怒らない。よく勝つ者は争わない。上手に人を使える人は、へりくだることができる。これが争わず、人の力を用いる「天の采配」。いにしえから伝わるタオの極意だ。

皆さん、どうですか? 私は、これぞ「平和主義」日本国の道だろうと思います。

今回は、RPEの属性にあった章をご紹介しました。しかし、この本には、あなたの人生に実際役立つ話が満載です。ぜひご一読ください。

image by: BeeBright / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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