ゴミの分別・リサイクルについて異を唱えてきたメルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』の著者で、中部大学の武田教授。今までの記事でリサイクルによる弊害や、メディアが伝えてきた嘘について暴露してきましたが、今回は視点を変え、「分別やリサイクルをしなければどうなるのか」について論じています。このままではゴミ捨て場が無くなる、ゴミをそのまま燃やすとダイオキシンが発生するから止めよう、という私たちが教えられてきた環境問題の課題について、武田先生はどのように答えてくれるのでしょうか?
我々がもし、分別やリサイクルをしなければどうなるのか?
これまで4回にわたり個別のゴミ分別やリサイクルが資源を浪費すること、また、「主婦と老人は暇だから分別でもさせておけば良い」という奇妙な論理を展開する東大教授のことを書きましたが、多くの分別やリサイクルはすればするほど環境を汚し、資源を浪費することになります。
それではもし「分別やリサイクルをしなければどうなるか」について、整理をしてみましょう。
まず、リサイクルを法制化する時に言われたことは、「このまま使い捨てていたら廃棄物貯蔵庫がなくなる」ということ、「焼却炉からダイオキシンが出る」という二つでした。
まず「廃棄物貯蔵所が8年で満杯になる」というのは全くの間違いで、当時、筆者が計算したところ、すでに2000年時点で存在する廃棄物貯蔵所と計画中のものを含めると、あと150年は大丈夫でした。メディアが伝えた8年と根拠をもった数字で筆者が計算した150年とあまりにも開きがあるのですが、それは「ゴミをそのまま貯蔵所に捨てる」という非現実的な仮定をしたメディアなどが伝えた数字と、焼却してから埋めるという現実的な計算をした筆者との違いでした。
当時、「焼却したらダイオキシンがでる。ダイオキシンは猛毒だ」という誤った風評が拡がり、政府もメディアもそれを利用しました。事実は、「古くて温度の低い焼却炉(不適切な焼却炉)を使って燃焼させればダイオキシンが出る。ダイオキシンは人間にとって猛毒ではない」ですから、二つの間違いがあったのです。
かつて、自治体は紙や木くずなどを燃やしていたのですが、すでに現代のプラスチックなどを含む廃棄物を焼却するのには時代遅れの装置で燃やしていました。だから、やや毒性のものも出ていたのです。技術立国と言われる日本は廃棄物はお役所仕事、縦割り行政で大きく世界の趨勢に遅れていたのです。「廃棄物に合った適正な焼却方法」を採れば、もともとダイオキシン問題も無かったのです。
もう一つ、ダイオキシンについては、東大医学部の和田攻教授が「科学が社会に負けた」と書かれた表現でわかるように、学問的に根拠がなく、テレビなどが煽って毒物に仕立てたものだったのです。その証拠にメディアがダイオキシンのことを報道しなくなってから、世界中でダイオキシンの患者が一人も出ていないことからも証明されています。
●ダイオキシンはヒトの猛毒で最強の発癌物質か(学士会会報、2001)
つまり、焼却したらダイオキシンが出る、ダイオキシンは猛毒だ、リサイクルしないと廃棄物貯蔵所は8年で満杯になる、どうせ主婦と老人は暇だから分別させろ・・・という不条理で不合理な論理をメディアが繰り返して、分別とリサイクルが始まったのです。
リサイクル工場の裏でリサイクル品を焼却。ある若き技術者の苦悩
名古屋市は分別・リサイクルしている地域のゴミ処理費は1kg 80円、分別しないで一括して焼却している地域の処理費が25円です。当然のことで、「一括して市役所が集めてそのまま燃やす方法」に比べて、「数個に分け、一度、自治体に運び、整理し、業者に『リサイクル品』として売り渡し、その業者が焼却炉に運んで燃やす方法」を比較すれば、分別・リサイクルする方が資源もお金もかかり、その分だけ環境を汚すことは明らかです。
ウソはウソを呼び、愛知で万博があったときNHKは「愛知万博のゴミはすべて分別され有効にリサイクルされている」と朝7時のニュースで放送しました。ところが筆者が調べてみると、分別されたゴミはすべて一社か数社の業者に渡され、そのまま焼却場に直行していたのです。そこで筆者がNHKに何回も質問したのですが、「記者に連絡させる」と言われて、その後一切、連絡はありませんでした。
分別・リサイクルを止めると、
- 家庭では分別の手間が不要になり、ゴミの収集も簡単になる。
- 有料ゴミ袋など、余計は費用がかからず、段ボールにゴミを入れても捨てられる。
- 自治体のゴミ関係の職員の数を減らせる。
- 税金が安くなる。
- 家電製品もまとめて自治体に渡すことができる。
- 大型ゴミを分ける必要は無く、ある程度、砕くことができれば家庭からも出せる。
- 日本全体で使用する資源が減るので、景気が良くなる。
- 資源の消費量が減るので、資源の節約になる。
ということになります。そして倫理的(道徳的)には、
- 主婦や老人は暇だからやらせれば良いなどということを言わせない。
- 環境を守る負担を家庭にかぶせて、自治体は無傷、業者が儲かるシステムが終わる。
- 本当に環境を大切にする政策がスタートできる。
などが起こるでしょう。
筆者が『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』という本を執筆したきっかけは、名古屋大学工学部を卒業した技術者が筆者を訪れ、「先生、私はウソをつくために勉強したのではありません」と言った言葉が忘れられなかったからです。彼はある「リサイクル工場」に勤務していたのですが、分別されたものを引き受け「リサイクル証明書」を出し、工場の裏で焼却していたのです。そんなことを若者にさせる社会は許せませんでした。
今でも、分別したものの大半を焼却しているのは多くの人が知っています。そんなことを続けていたら日本は没落するでしょう。
image by: Shutterstock.com
著者/武田邦彦
東京大学卒業後、旭化成に入社。同社にてウラン濃縮研究所長を勤め、芝浦工業大学工学部教授を経て現職に就任。現在、テレビ出演等で活躍。メルマガで、原発や環境問題を中心にテレビでは言えない“真実”を発信中。
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