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なぜキューバの市街地はビンテージカーばかり走っているのか?

昨年、54年ぶりにアメリカとの国交が回復したことで話題となった国、キューバ。社会主義国ということくらいは知っていても、詳しい内情についてはまだまだ謎が多い国ですよね。メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者で米国の邦字紙「WEEKLY Biz」CEO 兼発行人の高橋さんは、正月の家族旅行で一週間もキューバに滞在したとのこと。普段、日本とアメリカという資本主義の国で生活する高橋さんにとっては驚きの連続だったというキューバ紀行について、前編・後編に分けて詳しく報告しています。

【番外編】キューバ紀行 —前編—

毎年恒例の遅めの正月旅行—。 今年は、Wi-Fi がまったくつながらない国、キューバに行ってきました。

1週間、ネットがつながらない生活をしてきました。 それって何年ぶりだろう。 アナログな僕でもさすがにここ15年くらいで初めての経験だったかもしれません。

たまたま同じお正月休みの時期に、キューバに旅行に行った社員と現地でごはんでも食べようとなったのですが、出発前に調べたレストランで待ち合わせをして「何月何日の何時にどこそこで待ち合わせ」という約束だけで、落ち合いました。

ホントに会えるのかな?と思いつつ。 でも僕たちはみんな昔はそうやって待ち合わせをしたはずでした。 まったくケータイが通じない中で、知らない土地での待ち合わせはそれなりにドキドキしました。 結果、約束の時間に約束のレストランに彼女は来たのですが、ケータイで確認を取り合わなくても会えるもんなんだなぁとヘンに感動しました(笑)。

昨年、やっとアメリカとも国交が広がり、少し前までは「明るい北朝鮮」とまで言われたまだまだ謎の多い(ケータイすら通じない)国での一週間の滞在記です。

新年が明け、やっと取れたお正月休み。 僕自身はリゾート地には、再三言っているようにまったく興味がないのですが(貧乏性なのか、アメリカのセレブみたいに何もせずゆっくりと、というのが出来ません)、お正月休みだけは家族を優先しようと。 まさか1歳児を連れて、いつものひとり旅のようにヨーロッパの裏街道や、アジアの辺境の地を歩き回るわけにもいかず、結果、妻の行きたいところに合わせます。 お正月くらい。 彼女の今年のセレクトは、ズバリ、キューバでした。

数年前、毎年のようにお正月にフロリダへ連れて行った僕としては、地図上でキューバの位置を確認して「フロリダからスグそこじゃん。 フロリダとどうせ全然変わんない雰囲気じゃないのか」と特に深く考えもせず、当日を迎えました (フロリダの南140キロくらいの場所にあります)。

結果、フロリダとは似ても似つかない、共通点は「暖かい」ということだけの、社会主義国でした。 アメリカとは言ってみれば180度違う国なので、当たり前です。

それでも昨年のお正月にクルーズで行ったバハマ諸島のイメージを持っていました。 「地球の歩き方」を始め、数々のガイドブックでも「カリブ海諸島」として一緒くたにされてるしね。

そして実際足を踏み入れたキューバは、バハマとも全然違ったし、まだ行ってないけど、ジャマイカ、プエルトリコ、ドミニカなど他のカリブの島々とも、おそらく全然違うと思います。

60年前の革命以来の社会主義国は、他のカリブの島にはない独特の空気だということは、到着してから身にしみて実感することになりました。

1月2日—早朝。

前日、遅くまで知人宅の新年会にお邪魔し、飲めないお酒を飲んだまま、ホロ酔い気分で、明け方帰宅。 そのままウトウト2時間ほどしたら、出発です。

チケット手配から、宿泊先、荷造りまで、お正月旅行のそのすべてを妻に任せているので、僕は何時の飛行機で何泊するかもあまり知りません。

とりあえずはタクシーに乗ってニュージャージーは、ニューアーク空港に向かいます。 1歳半の息子を抱っこ紐で抱えたまま。 タクシーの中で爆睡しようと昨夜から企むも、寝起きテンションマックスの双子の1歳児には、仮眠すらとらせてもらえませんでした。

いくら国際線でも3時間前に到着することないだろう、と眠い目をこすりながら、すべての準備をしてくれた妻にクレームを出すと、

「(今回の行き先は)キューバだよ! ビザを購入したり色々あるの!」と逆ギレされました。 ビザを購入? 買わなきゃいけないんだ!

実は日本のパスポートってとてもとても強くて、ビザが無料な国が結構あります。 でも世界は基本、入国ビザは購入するものです。 購入しなきゃ入国できない国だらけ。

昨年やっと国交が開いたアメリカでのキューバ入国ビザはひとりあたり$75。 4人分で$300を空港で購入します。 この料金も一律ではなく、航空会社の手数料も含めてなので、 まちまちです。 今回メキシコからキューバに渡ったうちの社員の話を聞くとメキシコのインテルジェットという航空会社では$25で買えたそうです。 彼女が空港のカウンターで購入しようとしたところ、近くにいたメキシコ人のオジさんが「$50」というので、そのまま$50札を渡したところ、後になって正規料金で$25と 判明。 オジさんを捕まえて「ボッタくったろ!」と問いつめると笑顔で$25返してくれたとか。

この話、結構キューバ人を言い表すのに最適な話かもしれません。とりあえずボッタくろうとするけれど、問いつめたらスグに笑顔で返してくれる。 「基本いい人でした♪」と、彼女はボッタくり相手を笑顔でいい表してました。 ヘタしたら$25余分に持っていこうとした相手に「いい人」もないけれど、わからなくもないのは、そう思わせてくれるカラッとした人懐っこさを感じさせてくれる人たちな気はします。

僕は普段の出張が多いのでマイレージを使ってファーストクラスへ。 子供ふたりを抱っこしたまま面倒を見なきゃいけない妻は3人でエコノミー席へ(笑)。

さすがに、どっちかひとりを(今回は熟睡してた息子の方を)連れてファーストクラスに乗りました。 泣き出すわ、笑い出すわ、ハシャギ出すわ、の1歳半を連れての飛行機は、ファーストもエコノミーも大差ないと知りました。

途中で、もうギブアップ。 どうしても妻の助けが必要になり、途中ファーストからわざわざ息子を連れてエコノミーに移動。 妻の席の隣の空いてる席に移動しました。 その時、妻が勝ち誇ったように一瞬、ニヤって笑ったのが目に入りました。

ニューヨークからカリブ諸島は約4時間—。 この国で暮らしていると4時間のフライトはあっという間の部類に入ります。 3ヶ月に1度のロス出張より短い。

到着後の入国審査でも、思ったより簡単に済ませることができました。

ここ数日、ニューヨークで知り合いにキューバに行くと言うと、こぞってみんなに「大丈夫?」と聞かれました。 「入国できるの?」「入国出来たとして、帰って来れるの?」と。 昨年、アメリカーキューバ間の国交が開かれたことが世界的なニュースになったことはみんな知っているはず。 それでも、まだまだアメリカに暮らしている人間にとっては未知数の国。 他のカリブの国々ではする必要のない心配をして頂きました。

出国は一週間後なので、まだわかりませんが、入国に関しては思ったより簡単でした。 外貨で成り立つ国。 旅行者はウエルカムなはずです。

1歳半の息子と娘はアメリカ生まれ。 パスポートはそれぞれ2冊、日本のそれと、アメリカのそれを持っています。 念のため、両方持参したので、僕と妻のも合わせ、計6冊のパスポートで移動です。 税関でも6冊まとめて提出しました。

到着した人生初キューバ、、、当然のことながら暑い。 蒸し暑さは零下のニューヨークから厚着で来ていた僕をスグにトイレで半袖に着替えさせました。

空港のトイレに着替えを持って入る。 入った瞬間、「あ、そっちなのね」と思いました。 「そっち側の国なのね」と。

とにかく「匂い」に神経質な僕は、トイレの下水の匂いがガマン出来ず。 でも、そう考えると、下水道のインフラがちゃんとシッカリして匂わない国なんて、数える程しかありませんでした。 日本とアメリカくらいです。 その2つの大国で暮らしている僕にとっては、衛生面でそれがいつしか当たり前になっているけれど、本来、そんな国は珍しい部類。 絶対数的に日本やアメリカのように下水のインフラが整ってる国の方が珍しい。 世界は下水の匂いで蔓延してる。 大げさでなく、日本で(もしくはアメリカで)暮らしている僕たちはそう感じる人も少なくないかもしれません。

到着してスグの空港で、いきなり何組にも話しかけられました。 アジア人の赤ちゃんが珍しいのか。 双子の赤ちゃんが珍しいのか。 空港なのでヨーロッパからの旅行者も多く、タクシーやツアコンなどの現地のキューバ人に加え、何組かに写真も撮られました。 そのつど息子は笑顔で対応(生き別れの両親に会ったくらいのいきおいで)娘はニラミを効かせてました(飼ってたペットを殺されたくらいじゃないとつじつまが合わないくらいに)。

まだまだアメリカのクレジットカードが使えないようで、妻は現金を用意していたみたいです。 日本のクレジットカードは使えるけれど、街中のキャッシュマシーンはほとんど故障しているとガイドブックに書いていたらしく、久々にキャッシュを携帯しての移動です。 ニューヨークではスタバのコーヒーすらカードで支払う習慣なので、意外と慣れていない。

で、この国は外国人観光客からの外貨で成り立っている国。 旅行者である外国人が使う紙幣と、現地の人間が使う紙幣と分かれています。

僕たち外国人が使用する通貨はCUC (クックと読みます) 自国民が使う通貨はCUP(なぜかペソと読みます)もちろんコインも紙幣も別物です。

そんなことすら僕は知りませんでした。 それだけでも、やっぱり世界は面白いなと思ってしまいます。

空港でタクシーの運転手を捕まえる。 予約していた旧市街の民泊場所の住所を伝えようとする。 妻がメールでやりとりした民泊相手の住所をiPhoneで見つけようとして、ネットがまったく通じない国とそこで気付く。

おいおいおい。 飛行機の中で散々、キューバってこんな国!って僕に講釈たれてたくせに。 そんな初歩的なミスをするか? なんにも下準備しなかった僕に責めれるはずもなく、タクシーの運転手には、ガイドブックの地図を見せて「だいたいこのあたりまで行って」とアバウトな指示。 初めての国の(しかも社会主義国で)(しかも1歳半の双子を抱っこ紐で連れて)初めての移動で今考えると結構、無謀なことしてます。(そこがスラム街だったらどうしたんだよ…)。

運転手の親父は最初「40CUC!」と笑顔で言ってきたので、「高いよ!」と交渉すると、笑顔で「じゃあ25!」と笑顔で修正。 たった1回のラリーで半値近く下がりました

飛行機が到着した際、タラップを降りて、手荷物扱いで一緒に運んでくれた双子を乗せるストローラーもちょうど機内から運び出されたタイミングと重なり。 「ここから乗せていきたいから、持っていっていい?」と聞くと、職員はとりえず「ここではピックアップできない。 オレたちが港内まで運ぶから、ラゲージピックアップでとってくれ」と規則を言います。 それでも「いや、さすがに抱っこ紐は重いし、オレたちのストローラーで、オレたちがここでいいって云ってんだから、ここでピックアップさせてよ」というと、肩をすくめて「OK」とその場で渡してくれます。

タクシーの料金にしても、機内の手荷物にしても。 世界は「交渉」しなきゃいけないことが多い。 「交渉」でなんとかなることが多い。

日本は恵まれた国なので「交渉」しなくて済むことが多いかもしれません。 タクシーの料金も、空港内ルールも、逆を言えば「交渉」してなんとかなることは少ないかもしれません。 それだけ規律がすでにシッカリしている、とも言えますが、海外に行ったときは、とりあえずダメもとでも、あらゆる場面で「交渉」することをオススメします。 日本ほどルールがシッカリしてないぶん、「交渉」でなんとかなることも多いし、「交渉」しないと損することもまた、少なくないと思います。

タクシーには基本メーターはありません。 料金はだいたい決まってる。 逆を言えば、厳密には決まってない。 なので、安くあげることも可能です。 コツはギリギリまで交渉して下げる、ということ。 心配しなくても、マイナスの(儲けが出ない)場合は、先方は乗せてくれない。 いずれにせよ、必ず乗る前に(キューバに限らず)値段は聞いてください。 日本以外の国では。 聞いたとしても、到着して全然違う料金を言われちゃう場合もあるので。 。 。

ここまで長々、初めての国でのタクシーの諸注意事項を話しましたが、、、そんなこと一切する必要のない国が結局はいちばんです(笑)。日本、サイコーw

旧市街に行く間の空港近くのハイウェイはちゃんと舗装されていました。 それが車が走るにつれ、どんどん道がガタガタでこぼこになっていく(笑)インフラはまだまだこれからの国のようです。

タクシーの運ちゃんはまったく英語が話せず。 で、僕たちもスペイン語が話せず。 それにも関わらず、陽気で延々話しかけてきます。 旧市街までの40分間、ノンストップで。 まだ言葉も話せない1歳半の息子がキャッキャ笑顔で対応。

その間、僕はずっと外に走るクラッシックカーを眺めていました。

もともと暖かい南国の島への旅行はいまでも興味なく。 それでも昨年の豪華客船カリブ海クルーズツアーよりは、100倍興味ありました。 理由は、ゲバラやカストロなどの“英雄”がいた国だから。 オバマやトランプや安倍さんやプーチンは“英雄”ではないもんね。 アメリカ合衆国に15年以上暮らして、USAという大国の「デカさ」を日々実感している僕としては、地図上で見るとこんなちっちゃな国で、あの大国にケンカを売ってきた歴史に、ちょっと感服していました。 どんな国民性なんだろうと。

そしてもうひとつの理由は、街中を走るクラッシックカーを実際この目で見たいからでした。 もちろん僕はカーマニアではありません。 クラッシックカー自体には興味はない。 でも、このクラッシックカーたちは、アメリカという大国に翻弄され、時には逆ギレして、小国のプライドを誇示し、現在は観光を資源としているこの国そのものを象徴するものだからです。 アメリカの経済制裁に耐え続けたアイコンだからです。

それにしても多いな(笑)。街中を走ってる車がすべて、日本ならビンテージもののオールドカーって光景ってちょっとヘンだ(笑)。

ベタな表現ですが、ホントにここだけ、映画で見た過去の世界にタイムスリップしたような感覚になります。

どうしてここまで年代物のビンテージカーだらけなのか。 もちろんキューバ人全体がクラッシックカーマニアってわけじゃありません。

アメリカとの国交を断絶し、経済制裁を受けたこの国は、自由に車を輸入できなくなった歴史があります。 なので、革命以前に輸入された車を使う意外に方法がない。 修理を繰り返しては、ずーっと使ってきたというわけです。

なので、車体をよく見ると、何回上塗りしたの?ってくらいボンネットの表面が塗装で厚みを帯びて少しふくれています。

運転手に、エンジンもそのまま当時のモノ?と聞くと、やっぱり英語が通じてないのかYES ! YES! と笑顔で親指立てられました。 絶対そんなわけないよね。

車を走らせること40分。 目的地のハバナ旧市街、ラ・アバーナ・ビエハ地区に到着しました。

完全なスラム街だがな、、、、(笑)。え?ここ中心地?

壁の落書きはブルックリンのごとく。 裸足で歩く住人はハーレムにもいません。

でも、建物はさすが16世紀にスペイン人によって建設された街。 趣は絵になるコロニアルな街並です。

ただ、いつものひとり旅じゃあるまいし、1歳半の双子を抱っこ紐のままで、このゲットーを手がかりなしでホテル探しするのは、想像しただけでゲンナリします。

なんとなく印をつけたガイドブック片手に、そのあたりをうろついていると。

頭上から「AKI~~KO !!!?? 」と妻の名前を呼ぶ声が。 おまえキューバに知り合いいたの?

民泊先の住人でありオーナーの黒人女性が建物の5階のベランダから手を振ってきました。

助かった、と思うと同時に、「え?5階?」エレベーターなんて当然ないよね。 。

しかも日本の5階と違って、キューバの住宅は背が高い。 。 ただの5階じゃありません。 1階の段数が多い。 そこを双子を両腕に抱え(妻はベビーカーを抱え)上がります。 寒い寒いニューヨークから来て、すでに汗だく。 スーツケースは、彼女のご主人らしき人がさっさっと慣れた様子で階段を駆け上がり運んでくれました。

5階のご自宅はとても奇麗でステキでした。 ハーイ♪と握手をした民泊のオーナーの名前はFanny (ファニー)。 年の頃は、、、、まったく年齢がわからない。 20代なのか、50代なのか。 たぶん、その中間なのか。

汗でびっしょりになっている僕に彼女は水を持って来てくれました。 冷蔵庫から冷えているペットボトルを持ってきて、わざわざ僕の目の前でキャップを開けます。 開けながら「新品だから安全よ」とアピールしてきます。 さすが世界中の旅行者相手に商売してるだけあって、海外からの観光客の気になるところを熟知している感じです。

日本でも何かと話題になってる「民泊」を人生で初めて利用しました。 もちろんその歴史は日本よりずっと長いはずです。 ホテルよりはずっと現地の人の生活を体感できる方法かもしれません。 それでも、従来の現地の生活とはかけ離れています。 旅行者用に改造されている部屋と後で知りました。

当初は、部屋の様子を見て「まぁ、こんなもんか」と思いましたが、後々になってとっても恵まれていたんだな、と思い直しました。 なによりトイレに便座がついている。 あとになって知ったのですが、公衆トイレやレストランのトイレには便座がついてません。 どうやって用を足すのかいまだ不明ですが、さすがヨーロッパからの観光客を相手に商売している「民泊」—。 後付けで無理矢理感はあったものの、便座を取り付けていただけ、ラッキーでした (後々、聞いたのですが別の民泊に滞在した弊社女性社員は、部屋のトイレにも便座はついてなかったそうです)。

宿に到着したのはすでに夕方7時頃。 さすがに疲れきっていたので、どこか適当なデリで簡単な食事だけ購入して、今夜は部屋で夕食を取ろうと決めました。 双子も眠そうです(ひとり旅なら部屋でゆっくりするなんて選択肢はハナからありませんが、コレはお正月の家族サービス旅行)。

なので家族を部屋において、ひとり街中に買い出しに。

ファニーに、このあたりで簡単なサンドイッチと飲み物を手に入れるにはどこに行けばいい?と聞くとベランダに出て、あそこよ!と数ブロック先のピンク色の建物を指差してくれました。 あの建物の下にスーパーがあって、飲み物、食べ物、調味料、スナック、すべて手に入るわ!となぜか誇らしげにドヤ顔で教えてくれました。

双子の世話があるから、というより、もう当分、少なくとも今日一日は二度と階段の上り下りをしたくない妻に「気をつけてね、、、、」と送り出され、初のキューバ旧市街探索—。

大通りに出た瞬間、なぜか、初めて来た場所なのに「なつかしいーー」と感じてしまいました。

夕暮れ時—。 近所のおっさんたちが着古したタンクトップとヨレヨレの作業用半ズボンで夕涼みしながら、ベンチに座って世間話してる。

頭上からベランダ越し、オバサンたちが、もうそろそろ帰っておいで!と(スペイン語わかんないから内容はあくまで想像だけど)走り回ってる子どもたちに大声で呼んでいる。

タバコ吸ってるカップルがギターを弾いてるその横を、結構な大型犬が綱なしで自由に散歩してるー。

少し前、とは言わないけれど、僕が子供の頃だった70年代後半や80年代前半の日本の地方の商店街は、こんな感じと空気で満ちていた。 ネットもケータイもない世界。 半径5キロの人間関係だけで事足りるコミュニティー。

その空気を感じられただけで、来て良かったと思いー。 。 。 。 。

え!?

そこそこの中型犬が道の真ん中で死んじゃってるよ、、、。

マリファナ買わないか、とカタコト英語で近づいて来る男。 手鼻をしては地面になすりつけてるおじいちゃん。 そのときパトカーが止まり、建物の中から完全にラリッてる全身入れ墨だらけのお姉ちゃんが連行されていきました。

やっぱ、全然、ちがうや(笑)、日本とは似ても似つかない国だよ(笑)

歩いて10分。 さきほどファニーに聞いた「なんでも手に入る」スーパーに到着しました。

そこで気付いたのは、世界で50都市以上に観光で行ったけど、しょせんそのほとんどが観光名所。 本格的な共産圏は数えるほどしかまだ足を踏み入れてなかったという事実でした。

まったくモノがないーーーーーーーーーーーーーーーー

確かにファニーの言うように「なんでも手に入る」のかもしれません。

ただし、1アイテムにつき、すべて1メーカーです。 ひとつの商品は、ひとつの種類しかありません。

大きな売り場はスカスカで、まったくモノが陳列していない棚も多く(最初は本当に営業してるのか、わかりませんでした。 日本なら完全に潰れたお店です)

たまに商品があるとしたら、まったく同じものがずーっと並んでいます。

ひと種類のサラダ油が、その棚全部を占め、 プリングルスのホテトチップス(しかも1フレーバー)が1種類並んでいます。

そこで初めて、共産圏にいるんだなぁ、と実感した気がします。 これこそが社会主義国なんだな、と。

例えば 今日、いきなり「人間」を始めたとしてー。

ふたつの国の経済政策を聞かされたとします。

ひとつは「資本主義」と言われる概念。 利益を求めた経済活動、つまり好きなだけお金儲けしていいよ。 もちろん格差は出ます。 優秀な人はより儲かり、優秀じゃない人は結構悲惨です。

もうひとつは「社会主義」という考え方。 個人に任せちゃうと弱い人が可哀想でしょ。 なので、社会ひいては国が管理してあげます。 なので景気に左右されることはないので安心ですよ。

いきなり、生まれて初めて、なんの先入観もなく、その概念だけを聞いちゃうと、僕は2つ目の「社会主義」(もしくは、その延長の「共産主義」)を支持しちゃいそうです。

でも人間は面白いもので、約100年の年月をかけて、どちらが人間として裕福かという答えを出しました。 正解は「資本主義」—。

相手が「国」とはいえ、ずっと面倒見てくれるなら、そりゃ勤労意欲なくすわな。

帰り道、閉店していると思った「お肉屋さん」の前を通り、たったハム一切れだけを売っている、あとは空のショーケースを見て、 労働者が満足出来る環境に生まれてきたことを僕は幸せと、そのとき初めて実感できたのかもしれません。

もちろん生涯、共産圏で生まれ、死ぬのであれば、それが当たり前であり、不幸せだと感じなかったかもしれない。 それでも、やっぱり、日本とアメリカで暮らせることは幸せなんだと思いました。

その刹那、なぜか、早く部屋に戻り、うちの双子を抱きしめたいという願望にかられました。

そして、宿泊先まで到着し、そこで、また忘れかけていた事実に気付かされました。

え。 。 。 。 オレ、これから5階まで階段で上がるの?  (  ̄  ̄;)

※ 一日目が終了。 次回に続く

image by: Delpixel / Shutterstock, Inc.

 

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

 
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