断捨離ブームの到来とともに、必要のないものを捨て最小限の所有物で生活をしている、という方も少なくないかと思います。けれども「それだけでは不十分」と言うのは無料メルマガ『ビジネス発想源』の著者・弘中勝さん。弘中さんは、「把握できていない持ち物はただのゴミである」として、ビジネスにも通じる、「持ち物への意識の向け方」を紹介しています。
持ち物を把握する
ほとんど物を持ち歩かずに、必要最低限の物しか身に付けないような効率的な人は、すごく好きです。何と言っても、すぐに行動が移せる敏捷力があります。そして逆に、「もしかしたら必要になるかもしれないから」という理由で、いろいろ揃えて持ってくる人も、私は嫌いではありません。
今の時代、そんな無意味な物を持ち歩くなんて非効率で無駄すぎる、という風潮です。それは確かにPC一つでできるような仕事しかやっていない人にはそれで済むのでしょうけど、私は機械メーカーの現場出身だから、「何かあった時のために一通り揃えておく」という感覚が身についています。
例えば、コンビニのベンダーの工場などで機械の修理依頼なんかは緊張の連続でした。ほとんどの時間がフル稼働の工場の中で、修理作業が許される時間は深夜のほんの数時間、さらには修理が遅れたりしてラインが止まると1分単位で何十万と賠償請求させられるような、そんな緊張感の中で作業をしなければなりません。そのためには、一分一秒のロスが命取りで、「あの道具を車の中に忘れてきたなあ」というだけでも大きな遅れになります。
だから、使うと決まっているわけではない工具や部材も念のため揃えていくのですが、当日の現場の状況が予想通り、下見通りであるとは限りませんから、必要ないと思っていたものが意外に役に立つというケースがすごく多いのです。
もちろん、何でもかんでも持ち込んでしまっては、今度は撤収が大変だったり、一つでもモノを無くしてもわからなくなったりと大変ですから、管理できるキャパを考えて揃えていくことを決めておくわけです。
だから当時の私は、休日でもホームセンターに行って、何十種類とまとまっている六角レンチのセットとかドライバーのセットなどを調べては手に入れて、独自に効率の良い工具セットを揃えていました。
会社から支給される工具セットとは別に用意していて、それがあったおかげで命拾いしたケースも、ものすごくたくさんあります。自分で買い揃えた物だから、退職をした今も、その工具セットは自宅に置いてあるのですが、今はたいていのことはその工具で事が済み、配管工事などで来た業者さんが困っている時にそれを貸して「どうしてこんな特殊工具を持ってるんですか」と驚かれたことも何度かあります。
「七つ道具」という言葉がありますが、1つしか使わなくても七つ道具は常に持っておく、という意識の人は、かなり好きです。
でも、一番ダメなのは、何も考えずに大量の物を持ち歩くタイプの人です。こういう人はけっこう多くて、えらく大きなカバンを持ち歩いているのに、中身を見ると、自分が把握していない物がたくさん入っているのです。何かに備えて入れてあるというわけではなくて、何も考えずにどんどん物を中に入れて、知らないうちに増えちゃってた、というタイプ。これは、ゴミを運んでいるのと同じことです。
旅行に行く時にでも、大きなスーツケースにあれやこれやと詰め込んで行って、旅行先では全く使わずに、帰ってきてケースを開けて「あ、これ持って行ってたんだ」と初めて気づく、という場合も同じことです。自分が把握していないものが入っているというのは、それは使いようのないゴミと同じなのです。
カバンだけではなくて、家の押入れのような大きな空間もそうですし、財布の中身のような小さな空間でもそうです。中に何が入っているかわからない段ボールが押入れや納屋の中に山積みになっているとか、財布の中にいつのものか分からない領収書がぐちゃぐちゃに入っているとか、そういう人たちも同じです。
そこに存在するものを把握できていない、というのは、この上ないムダです。
断捨離ブームが来ましたが、いくら断捨離をしたところで、存在するものを把握する意識がなかったら、またモノがどんどん増えるだけです。だから、モノを持たないとか、モノを捨てるとかいう話は、何よりもまず、「モノを把握する」ことから始まるのです。
モノを捨てるのは、把握するモノを少なくすることでより把握しやすくする、という意味です。モノを捨てたから、もう把握しなくてもよい、ということではないのです。
把握するからこそ、捨てるべきモノがわかるし、残すべきモノがわかります。まずは、自分のカバンの中、自分の机の中、自分の財布の中などを、きちんと把握しているかどうかを確認してみましょう。それで、自分の把握度を知るのです。自分が把握していない持ち物は、どれだけあるでしょうか?
【今日の発想源実践】(実践期限:1日間)
- ノートに、「自分のカバンの中」「自分の机の中」「自分の財布の中」に入っているモノを、一つずつ思い出して、図に描いて再現する。
- 実際にカバン、机、財布を確認してみて、答え合わせをする。ノートに書けなかったモノは、思い切って捨てる。
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