そもそも柏崎刈羽原発のあたりは荒浜砂丘が広がっていた一帯で、地盤は強くなく、地震の影響を受けやすい。そんなところに原発を建設すること自体、無謀なのだ。
今回、免震重要棟の耐震性が新規制基準を満たさないことが明らかになったが、それは最新の免震装置を用いても十分に地震の揺れを吸収できないということであり、自然の恐るべき力に立ち向かう耐震技術の限界を示している。
国の支援で生きのびている東電は、柏崎刈羽原発の再稼働によって経営の建て直しをはかりたいのだろうが、福島第一原発の痛恨の事故を経ても、自ら責任を負おうとせず、不都合な真実を隠ぺいする官僚体質が抜けないままである。
これではとうてい国民の信用は得られまい。他の大手電力に先がけて、脱原発に舵を切り、それによって組織の再生を図る道を模索したらどうだろうか。
もちろん、これは国のかかわることである。東京電力ホールディングスの株式の54.69%は原子力損害賠償・廃炉等支援機構が所有しており、東電の経営者の一存で決められることではない。だからこそ国策の転換が必要なのだ。
東京電力を生き残らせ、その利潤の中から廃炉・賠償費用を賄っていくという甘いシナリオは、2016年10月の新潟県知事選挙で柏崎刈羽原発の再稼働に慎重な米山隆一氏が当選したことで、すでに、ほとんど崩れている。
東電が最後の頼みの綱とするのが規制委員会のお墨付きだが、今回の隠ぺい発覚で視界不良になった。
原子力が安全で低コストという神話、核燃料サイクルの夢物語、いずれも崩れ落ちた。一方で再生可能エネルギーのポテンシャルは急速に高まっている。
1984年、外務省は原発がテロなどの攻撃を受けた場合どのような影響が出るかを内部資料としてまとめた。1981年にイラクの原子炉がイスラエル空軍に爆撃されたのをきっかけに省内に危機意識が高まったためだ。
そこには、電源喪失、格納容器破壊、原子炉の破壊などが想定されていた。外務省だけでなく、経産省、電力会社も本心では恐れているだろう。
万が一、原発施設がミサイル攻撃されたときの被害は、当時の資料に記された予測数字より、福島第一の事故を実際に経験した今の国民の想像力で推し測るほうが、ずっと確度が高いかもしれない。