「砂糖の摂りすぎは良くないけど、タバコやアルコールよりはマシ」などと、砂糖の過剰摂取の影響について甘く見ている人は意外と多いのではないでしょうか。今回のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』では、著者で現役医師の徳田先生が、ほとんどの人が意識していないと思われる「砂糖とタバコの共通点」を3点挙げ、多くの人がまだきちんと認識していない「砂糖の有害性」について警鐘を鳴らしています。
休暇で私たちは太る
ゴールデンウィーク期間中には日本人の体重が増える。こんな疫学研究の結果が2016年に出ていましたね。連日の外食やホームパーティーなどが体重増加の要因だと思います。年末年始でも同様な傾向がありますので気を付けたいですね。
ところで、ある調査研究によると、毎年12月25日のクリスマスの日に米国人は平均して約6000キロカロリーを摂取しているとのことです。それに、年末最後の1週間で約2キロも体重が増えているとのことです。多くの日本人でも、お正月が過ぎて、ベルトがきつくなったと感じることがあるでしょう。
年末の休暇で体重が増えるのは当然のようにも思えます。外は寒くて昼は短かいので運動量が減ります。また、テレビでは面白そうな特番が放送されていますので、視聴時間が自然と長くなります。しかしながら、体重増加の最大要因というとやはり摂取カロリーの増大、特に砂糖の摂取といえます。
コマーシャリズムの影響で、クリスマスのケーキだけでなく、ハロウィーンのチョコレートキャンディーも日本人の「間」食生活に入ってきています。コーラやアイスクリームサンデーでお客さんを集めるジャンクフード店も多いですね。カフェでも甘いフラペチーノが人気があります。欧米型の砂糖文化の到来ですね。
砂糖とタバコの共通点
ところで、この砂糖。タバコとの共通点が少なくとも三つあります。一つは健康によくないこと。次に依存性があること。三つ目は、バックにいる産業のロビー活動が活発であり、消費者を騙していたことです。
健康によくないことは明らかです。砂糖はブドウ糖と果糖に容易に分解されて吸収されます。ブドウ糖はインスリン分泌の強力な刺激剤であり、インスリンは肥満を作るホルモンです。インスリンは血糖値を急激に下げ、強い空腹感を感じさせ、ドミノ倒しのようにカロリーの過剰摂取を促します。もちろん、砂糖はまた、虫歯の原因となります。
砂糖には心理的な依存性があります。身体的依存があるニコチンほどではありませんが、依存性があるのです。毎日、朝起きてすぐに甘いものが食べたくなるのはその症状です。食事の後に必ずデザートを食べたくなる人も依存症状の可能性があります。
世界保健機構のガイドラインでは、ひとり当たりの砂糖摂取量は1日25グラム以下とすべきとしています。しかしながら、世界でその基準未満となっている国は10か国しかありません。ひとり当たりの砂糖摂取量でみると、世界で砂糖消費の三大国は、チリ、オランダ、ハンガリーです。チリ人は平均1日130グラム以上も砂糖を消費しています。
最後のひとつは産業のロビー活動です。1960年代から、菓子やコーラなどの砂糖産業は米国人栄養学者のAncel Keys氏などと結託して、心臓病や肥満の原因は脂肪である、というスケープゴートをつくることにほぼ成功しました。
砂糖産業の暗躍
また、Keys氏らは、当時から砂糖の健康有害性を主張していた英国人栄養学者のJohn Yudkin氏(ロンドン大)などの説を否定する論調を展開していました。栄養学研究者の利益相反ですね。これはもう、前世紀から今世紀にかけての保健医療分野での最大のスキャンダルと言ってもよいでしょう。
タバコ会社がニコチンの依存性データを隠していたのと似ています。タバコ会社の反社会的活動はAl Pacino主演の映画「インサイダー」で描かれていましたね。シュガー業界の活動も今後映画化される可能性は大と思います。
世界に広がる砂糖税導入
このように長年の事実が明らかにされていく中で、世界保健機構は2016年10月に、世界の全ての国に対して、砂糖入り飲料に課税することを勧告しました。メキシコはすでに2013年に砂糖税を導入しています。
英国では2018年に予定されており、アメリカでも、シカゴやフィラデルフィア、サンフランシスコなどの一部の都市で導入を検討しています。南アメリカやフィリピンでも検討しています。
日本でも、私もメンバーとして参加した保健医療2035で、砂糖税導入を検討すべきと提言しました。タバコのように、健康志向の人々が砂糖を避ける時代になることは確実でしょう。
文献
chillinger D, Tran J, Mangurian C, Kearns C. Do Sugar-Sweetened Beverages Cause Obesity and Diabetes? Industry and the Manufacture of Scientific Controversy. Ann Intern Med. 2016 Dec 20;165(12):895-897. doi: 10.7326/L16-0534. PubMed PMID: 27802504.
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