歯科医師が語る「入れ歯で何を食べても旨くない」は本当なのか?

2017.03.14
by Mocosuku
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「入れ歯にしたら、なにを食べても美味しく感じなくなってしまった」

このように聞いたことはありませんか?

実際、入れ歯を入れたとたんに味わいや食感を感じにくくなり、何を食べても美味しくないと思う方は多いです。またこれは入れ歯の大きさがが大きくなるほど、その傾向が強くなります。

今回は入れ歯で美味しく食べられない理由や、その改善法などをご紹介していきましょう。

美味しさは口全体で味わっている

食べ物の味を感じるのは舌だけではありません。味覚は上あごや喉にもあります。

また食べ物の美味しさは味覚のみならず、噛み心地や食感、温度の変化などすべてで感じます。

入れ歯は歯茎や歯の粘膜によって支えるものです。そのため上あごやその周囲の粘膜を広く覆う必要があります。

またプラスチックの場合は強度を確保するため、ある程度厚みを持たせなければなりません。

これによって味覚が感じにくくなる以外にも、食感や温度なども感じにくくなります。

また入れ歯の歯は天然の歯よりも噛む力が小さいため、噛み心地もこれまでと大きく変わってしまいます。

このようなことから、これまで口の中で感じていた食べ物の味覚や触感、温度などが遮断されてしまうため、入れ歯を入れると食べ物が美味しくないと感じてしまうのです。

この感覚を元のように戻すのことはできるのでしょうか。次から詳しく見ていきましょう。

入れ歯の材質を変えて改善することも

入れ歯を入れてしまうと、残念ながら以前のような感覚を完全に取り戻すことはできません。

しかし入れ歯の材質を変えることで、多少なりとも改善する方法はあります。

ただし、以下に述べる入れ歯は保険が適応されない入れ歯なので、費用等は受診する歯科医院で相談してください。

金属を使った入れ歯

入れ歯の中には床の部分(歯茎や粘膜に当たる部分)の一部を金属に変えた入れ歯があります。

とくに上あごの部分を金属に変えると温度の変化を感じやすくなり、プラスチックのときよりも食べ物を美味しく感じることができます。

また金属部分を薄くして違和感を和らげることで、食事中の入れ歯の不快感を少なくする効果もあります。

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特殊な樹脂で作った入れ歯

ポリエステルやポリアミドなどの特殊な樹脂で作った入れ歯は、プラスチックよりも柔らかくフィット感が良いため、食事中に入れ歯が動いて食べることに集中できない点などが改善されます。

また、従来のプラスチックよりも薄くできるので、違和感が少なくなることも良い点です。

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噛みにくさは調整次第で改善できることも

食事を美味しくするには、噛み心地も大切です。

入れ歯を入れると噛みにくくなるのはある程度は仕方のない事ですが、調整次第で今よりも改善することはできます。

特に入れ歯を入れたばかりの時期は、入れ歯自体がまだ口の中に馴染んでいないため様々なトラブルが起こります。

入れ歯は入れた瞬間からピタッとあうのではなく、その都度調整を加えていくことで、しっくりくる入れ歯に仕上がっていきます。

もし噛みにくいことが原因で食べ物を美味しく食べられないのであれば、歯科医院で相談しましょう。

具体的にどう噛みにくいのかを歯科医師に説明し、噛み合わせを確認してもらったうえで調整すれば、以前よりも噛みやすい入れ歯になります。

最後に

入れ歯は口の中のさまざまな感覚を鈍くしてしまうため、どうしても以前のように食べ物を美味しく感じにくくなります。

すべてを元通りにすることはできませんが、材質や噛み合わせを工夫することで多少改善することはできるでしょう。

あとは入れ歯の感覚になれることも大切です。

はじめは違和感ばかりで食べることに集中できないことも、食べ物が美味しくない要因です。

時間はかかりますが、根気強く入れ歯と向かい合いましょう。


執筆
:影向 美樹(歯科医師)
 

<執筆者プロフィール>
影向 美樹(ようこう・みき)
歯科医師。歯科医師免許取得後、横浜と京都の歯科医院にて勤務を経て、現在は医療系ライターとして活動中

 

image by: Shutterstock

 

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記事提供:Mocosuku(もこすく)

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