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脱衣所の「温泉成分で床が滑りやすくなってます」はウソだった

気分よく温泉でひとっ風呂、と湯殿に入った途端に足が滑ってヒヤッとしたなどという体験、お持ちの方も多いのではないでしょうか。確かに脱衣所などに「温泉成分で滑りやすくなっています」等の注意を促す張り紙が張ってあったりしますが…、「そんなものは大ウソ」とするのは、メルマガ『『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』の著者で元「旅行読売」編集長の飯塚氏。記事内では、氏が信頼を寄せる温泉施設の清掃管理会社社長から直接聞いたという「温泉の床が滑る本当の理由」が明かされています。

温泉成分で床が滑る、はウソ?

「温泉成分のため、床が滑りやすくなっております。ご注意ください」という張り紙をしばしば見かける。

ところが、これはとんでもない誤りだ、という話を聞いた。拙著『温泉失格』の中でインタビューした温泉施設の清掃管理会社であるスパテックの大山正社長にいわせれば、「あんなのは大ウソですよ」と。「成分で滑るのではなくて、掃除が行き届いていないから滑るんです」。

このことは拙著では触れなかったが、大山社長は、「同じ泉質の温泉地でありながら、ある施設では滑らず、ある施設では滑る、ということがある。これは清掃頻度の問題です。シャワー回りや歩行面の清掃は必ず毎日やらないといけない。でも、滑りやすい場所は、通常の界面活性剤系の洗剤(マジックリンなど)では弾かれてしまい、役に立たない」と話していた。

スパテックは洗剤の開発もしているので、泉質にあわせた洗剤を使い分けることで、足が吸い付くように止まるという。

ただ、強アルカリ泉では足の裏の角質が溶けるのでどうしても滑りやすくはなるとのことで、この場合は物理的な対策が必要になるそうだ。つまり、床に溝を掘って滑りにくくしたり、床に滑り止めシートを貼ったり、滑り止めのコート剤を塗布することが必要になるという。

スパテックの宣伝になってしまうのだが、同社と大塚科学が共同開発した「チタン酸カリウム繊維」は、酸にもアルカリにも強く、10年以上の持続性があるという。新築、改築の場合はこれの塗布を薦めていた。

大山氏はもともとビルなどの清掃会社を営んでいたが、あるときに温泉施設の清掃に関わって、温泉成分のスケールに歯が立たない、という経験をし、会社をたたんで薬剤メーカーに4年間勤務して、今の会社を興したという人である。僕の知る限り、温泉施設の清掃に関してこれほど現場を知り尽くしている人に出会ったことはない。

少し宣伝臭くなってしまったが、「温泉成分で床が滑るのは、清掃の手抜きまたは泉質に応じた対策を怠っているだけ」という話には納得できる。

お風呂の安全対策にはさまざまな提言をしていて、特に、夜間の照明はもっと明るくすべき、という意見には共感した。露天風呂への通路や、浴槽回りの照明が暗過ぎて危険な施設をしばしば見かける、夜間の転倒事故が多いのはおそらくこれが原因だと思う、と言っていた。湯気もほどほどに換気して視界を保つことが重要とも話していた。

ただ、星空が見える露天風呂は、正直なところ明るすぎるとつまらないし、湯気でもうもうとしているお風呂というのは、やっぱり魅力的でもある。「ほどほどに」という言葉に、大山氏の温泉愛を感じる気がしたものだ。

少し話がそれたが、入浴中の事故は後を絶たないわけで、それを可能な限り減らして行くために重要なことは、なんたって真面目な清掃なのだ。

image by: Shutterstock.com

 

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【著者】 飯塚玲児 【月額】 初月無料!330円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日or木曜日配信 発行予定

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