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後醍醐天皇の御霊を慰め670回目の春。京都天龍寺に今年も咲く桜

京の都で一二の人気を誇る嵐山。中でも観光客が必ず立ち寄るといっても過言ではないのが天龍寺ですが、この寺院に咲く桜の由来をご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『おもしろい京都案内』では、天龍寺の桜、そして庭の魅力についてが詳しく紹介されています。

嵐山の桜の名所・天龍寺の桜物語

天龍寺は臨済宗天龍寺派の大本山の寺院です。京都五山第一位の寺格を誇り、嵐山を訪れてこの地に立ち寄らない人はいないというほどの場所でしょう。京都五山とは京都の禅寺の格式の序列で、その第一位ということです。以下はその序列です。

五山ノ上 別格 南禅寺

第一位 天龍寺
第二位 相国寺
第三位 建仁寺
第四位 東福寺
第五位 萬寿寺

天龍寺は、世界文化遺産に登録されていて、海外からの観光客も年々増加しています。嵐山からすぐ近くの場所にありアクセスも良く特に紅葉シーズンには沢山の観光客で賑わいます。

紅葉のベストスポットは、亀山と雄大な自然を借景に使った曹源池(そうげんち)庭園で、広々とした風景に心癒されることでしょう。天龍寺は敷地がとても広いので、拝観には30分以上時間がかかるので、余裕を持って訪れるようにして下さい。

天龍寺は、作庭家としても有名な禅僧・夢窓疎石(むそうそせき)が建立した寺院です。奈良県の吉野で没した後醍醐天皇の菩提を弔うために、足利尊氏・直義兄弟に勧めで建立されました。

法堂の天井に描かれている雲龍図は、平成9年に加山又造が描いたものです。龍は法の雨(仏教の教え)を降らすという意味や、龍神が水を司る神であるということから建物を火災から護るという意味があります。そのため京都の主要な禅寺の法堂の天井には龍が描かれています。

天龍寺の曹源池庭園は、西芳寺(苔寺)庭園と共に1339年夢窓疎石が作庭したものです。夢窓疎石は、日本各地を転々としながら寺院の庭を作庭し、日本各地で疎石作の庭が存在します。その中でも西芳寺苔寺と天龍寺の庭の作庭は修行の集大成と伝わります。曹源池を中心に周囲に石組を施し、背後の亀山と雄大な自然美の景観を借景として取り入れました。

中世の庭作りのテキスト「作庭記」に、池は亀もしくは鶴の姿に掘るべしとあります。池は亀型で頭の部分を表現した亀島と呼ばれる中の島があります。正面には、禅のシンボルでもある龍が三段の石組で表現された龍門の滝に表現されています。

二段目の石は、鯉魚石(りぎょせき)と呼び、滝を登る鯉の姿を表したものです。中国に伝わる「鯉が滝を登ると龍になる」という故事を写したもので、「登竜門」という言葉の由来となったものです。

正面に立つ石は、釈迦三尊石と呼ばれ、中央は釈迦如来、左右はそれぞれ普賢菩薩、文殊菩薩に見立てられています。「見立て」は庭造りでとても大切な技法で白砂や石組などを海や山をイメージして配置する技法です。

疎石が亀山を借景としたことには大きな意味があると伝えられています。天龍寺を夢窓疎石に創建させたのは足利尊氏でした。尊氏は後醍醐天皇を(奈良県)吉野に追放し、光明天皇を擁立し56年間に及ぶ南北朝時代という内乱の世を招いてしまいました。尊氏は後醍醐天皇を倒すまで多くの犠牲者が出ても戦をやめようとはしませんでした。疎石は内乱の犠牲者の供養を説いてまわり、戦を止めるよう尊氏を説得しました。

やがて後醍醐天皇は、1339年崩御し亀山に埋葬されました。この時、疎石は尊氏に後醍醐天皇鎮魂の寺を建てるよう直言しています。疎石にとっては、後醍醐天皇が埋葬された亀山を借景とすることこそが天龍寺庭園の作庭の目的だったのです。

創建の際に、後醍醐天皇の南朝があった吉野から多数の桜が移植されています。天龍寺の多宝殿の廟には後醍醐天皇の木像が安置されています。この多宝殿の前庭に樹齢300年以上のしだれ桜が2本植えられています。境内には疎石が植えた300本もの吉野桜やしだれ桜が今も後醍醐天皇の魂を慰め続けています。天龍寺は紅葉の時期のみならず、桜の名所としてもとても有名な場所なのです。

京都の桜には由来があり、いわれがあります。有名な場所であるほど沢山のドラマもあります。そのシーンのいくつかの場面で桜が登場します。天龍寺の桜は今も吉野に散った後醍醐天皇の御霊を慰め続ける鎮魂の花なのです。戦国時代のワンシーンを思い浮かべながら是非訪れてみて下さい。

天龍寺 桜 京都嵐山屈指の桜の名所

オマケ

京都の春の到来を告げるのは桜だけではありません。5花街の芸舞妓さんたちによる「をどり」を見逃していてはいけません。

4月は上七軒、祇園甲部、宮川町の舞踊がそれぞれ開催されますが、まずは上七軒の「北野をどり」の魅力をご堪能下さい。

京の都に舞う、桜の花と舞妓衆。絢爛「北野をどり」で楽しむ古都の春

いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほんの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。

image by: 京都フリー写真素材集

 

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【著者】 英学(はなぶさ がく) 【発行周期】 ほぼ週刊

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