てるみくらぶは、どこで失敗したのか? 格安旅行会社の異常な実態

 

てるみくらぶが近年力を入れていたヨーロッパ旅行やクルーズ旅行といったシニア向けの商品は付加価値があるといえます。しかし、競合も力を入れていて簡単な市場ではありませんでした。例えば、渡航先の大半がヨーロッパで、クルーズ船の運用も行なっている「ニッコウトラベル」という旅行代理店があります。60歳代以上で全体の95%を占め、シニアに人気です。成長性と相乗効果を見込み、三越伊勢丹が買収したほどです。ニッコウトラベルは1976年の設立で、古くから少しずつ成長していきました。

HISやJTB、ニッコウトラベルなどの旅行代理店は時間をかけて付加価値を築き上げていきました。一朝一夕で出来上がった訳ではありません。一つ一つを慎重に積み上げてここまできました。旅行業は利益率が低いため、少しの経費でも利益が簡単に吹き飛びます。より慎重さが求められるビジネスであることを理解していたのです。

てるみくらぶは慎重さを欠いていたといえます。東京商工リサーチによると、2016年9月期の前受金は70億円でしたが、破産を申請する直前の3月23日には100億円で、30億円も膨らんでいたとしています。前受金とは、商品などを提供する前に受け取る代金のことです。借入金(借金)が9億円増えているため、負債は39億円の増加です。一方、資産の現金及び預金は12億円減少しています。そのため、債務超過額が51億円増加していました。

前受金と借入金、現金及び預金以外の変動がありません。そのため、前受金の30億円の増加はおそらく大半が売り上げによるものと考えられ、債務超過額の51億円の増加はおそらく大半が経費の増加によるものと考えられます。かけた経費が売り上げに貢献していなかったのです。2017年3月30日付東京新聞は「最後の決算となった一六年九月期は、決算書上は営業損益が一億一千万円の黒字となっているが、実際は十五億円以上の赤字だった」とも報じています。

てるみくらぶが破産に追い込まれたのは、身の丈に合わない投資を行ったことにあります。企業体力に見合った経費の使い方が求められていました。業界の利益率の低さを考慮した慎重さも必要でした。性急さで足元をすくわれたといえます。

格安旅行会社の経営環境は厳しさを増しています。今後、破産などに追い込まれる企業がさらに出てきてもおかしくない状況といえるでしょう。格安旅行会社は正念場にあるといえそうです。

image by: GOOGLE MAPS 

 

51d4BWNQaCL

 「企業経営戦略史 飛躍の軌跡(クリエイションコンサルティング)

 

佐藤昌司この著者の記事一覧

東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業 』

【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

print
いま読まれてます

  • てるみくらぶは、どこで失敗したのか? 格安旅行会社の異常な実態
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け