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「持病」がバレないよう健康診断を拒否ったら会社が訴えてきた!

新年度が始まり、会社から「健康診断のお知らせ」を受け取ったという方も多いかと思います。この健康診断、近頃は「面倒臭い」「会社に持病がバレたくない」などの理由で、受けるのを拒否する社員が増えているそうです。費用は会社持ちですが、「拒否」するのは可能なのでしょうか? 今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』で、法律的な見解が明らかにされています。

健康診断の受診を社員に強制できるのか

親の心子知らず」とは、よく言ったものです。これは、親と子だけではなく会社と社員についても同じようなことが言えます。最近、私の顧問先の社長と「社員の健康診断」について話をしていたときのことです。

「社員には元気に仕事をしてもらいたいと思って健康診断を受診できるようにしてその時間の給料も払って費用も会社持ちでやっている。それでも、受診しない社員がいて困っている」という悩みをお聞きしました。これは、会社が法律で健康診断を義務付けられているとは言え、その社長としては「なんでここまでやっているのに」という気持ちになるのは当然のことでしょう。もしかしたら、みなさんの中にも同じような気持ちの人がいるかも知れません。

健康診断については以前にもお話しましたが今回はもう少し具体的にお話をします。まず、健康診断については法律で下記のように決められています

ここで、たまに「うちは社員数が少ないから健康診断は受けさせていない」という話を聞くことがありますが、社員の人数は関係がありません。社員が何人の会社でも受けさせなかった場合は罰則も決められています

ただ、ここでのはポイントは社員にも受診の義務があると決められていることです。では、社員が受診を拒否したらどうなるか? それについて裁判があります。ある学校で、学校長の2回の受診命令にも関わらずそれを拒否した先生が減給処分になりました。それに納得がいかなかった先生が、裁判所に訴えたのです。では、その結果はどうなったか?

学校が勝ちました。これは、別のある通信会社での裁判でも、同じような結果になりました。この会社で再三の受診命令にも関わらずその受診を拒否した社員に対する戒告処分を「有効である」とされたのです。

つまり、「会社は社員に受診を強制できる」ということです(ただし、受診しなかった場合に懲戒処分にするときは、その内容を就業規則に定めておく必要があります)。

社員が健康診断を受診しない理由は大きく分けると2つあります。

1つは、「面倒だから」という理由です。特に若い社員は健康な場合も多いため健康診断の重要性をあまり感じていません。仕事にかまけて、健康診断はつい後回ししがちです。

もう1つが、「会社に持病を知られたくない」という理由です。実は、最近これが非常に増えています。そして、何かあったら問題になるのもこの場合です。

例えば、持病をもった社員が、長時間労働や業務の負担により事故を起こしたり、症状を悪化させたとします。すると、「会社が配慮しなかった」として訴えられる危険性があります(実際にこのような裁判も増えています)。そうならないためにも社員に健康診断は必ず受けさせるべきです。

最近は「健康経営」という言葉も聞かれるようになり、健康診断以上に、社員の健康に対する施策を行う会社も増えてきました。社員も会社も健康第一」で、仕事に取り組んでいきたいですね。

image by: Shutterstock.com

特定社会保険労務士 小林一石この著者の記事一覧

【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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