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危機は回避されたのか? 北朝鮮に甘い中国を動かす3つの方法

一部メディアで「金日成元国家主席の生誕記念日の4月15日に北朝鮮が核実験を行うのでは」との報道があり、さらに「その動きがあった場合は、アメリカが北朝鮮への軍事攻撃に踏み切る」との情報も出たことで、一気に緊張状態が高まった朝鮮半島情勢。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、著者の北野幸伯さんが、第2次朝鮮戦争を回避・平和的に解決する手段を独自の視点で考察しています。

第2次朝鮮戦争をストップし、半島非核化を成し遂げる方法

4月14日から16日にかけて、「朝鮮半島で戦争が勃発するのではないか?」と心配していた人も多かったと思います。4月13日、アメリカのメディアは、「北朝鮮が核実験を強行した場合、米軍は先制攻撃する」と報じました。そして、「金日成生誕105年」にあたる4月15日、「金正恩は、核実験をするのではないか?」と予想されていた。つまり、「それをきっかけに米軍が先制攻撃し、北朝鮮が反撃することで、戦争が起こるのではないか?」と。

しかし、4月15日は、軍事パレードがあっただけで、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験はありませんでした。4月16日、北は、弾道ミサイル実験を行いましたが、ICBMではありませんでした(そして、失敗した)。

というわけで、ひとまず戦争の危機は回避されました。しかし、北が、核実験ICBM実験を永遠にやめることはないでしょうから危機は続いていきます

今回は、第2次朝鮮戦争を回避し半島非核化を成し遂げる方法について考えてみましょう。

中国がポイント

この問題、日本政府もアメリカ政府も同じ認識ですが、「中国がポイント」です。なぜ? 北朝鮮が「制裁下」で生き残っているのは、中国が支援を続けているからなのです。中国が、支援と貿易をストップすれば、金体制は1年もたないでしょう。

では、なぜ中国は、北支援を続けるのか?

1.北朝鮮の核兵器は、中国の脅威ではないから

北朝鮮が核兵器やICBMを持っても、中国は困りません。なぜなら北の標的は、韓国、日本、アメリカだからです。そう、北朝鮮の核兵器は、まったく中国の脅威ではないのです。

2.金王朝が崩壊し、韓国中心に半島が統一されると困る

北朝鮮が崩壊し、韓国中心に半島が統一されたらどうでしょうか? アメリカの同盟国・韓国が、半島を統一した。すると、北と中国の国境近くに、米軍基地ができるかもしれない。北京を即座に壊滅させることのできるミサイルが配備されるかもしれない。

中国にとって、緩衝国家の消滅は、「悪夢」です。それで、「わがままな金正恩でも、いたほうがまだマシ」ということなのです。

中国を動かす方法1 韓国への核兵器配備

中国がこんな感じなので、本気で制裁などしません。金正恩体制が続くよう、きっちり支援をつづけている。中国を動かす方法はあるのでしょうか?

こんな方法はどうでしょうか?

トランプさんは、言います。「北朝鮮は核を持ち、韓国は核を持ちません。パワーバランスが崩れているので、戦争が起こりやすくなっています。均衡を取り戻すために、韓国にを配備するつもりです」。

中国は、メチャクチャ嫌がることでしょう。なぜ? 「アメリカは、『ピョンヤンがターゲット』と言いながら、『北京も狙えるような核ミサイルを配備するだろう」と思うから。

そして、「北朝鮮が核兵器を放棄すれば、もちろん韓国に核兵器を置いておく必要はなくなる」と約束する。中国は、自国の安全が大いに脅かされることになるので、モチベーションが高まります。

中国を動かす方法2 半島非核化で習近平は世界史の英雄に?

「韓国への核兵器配備」は、中国にとって「ムチ」ですね。「アメ」も必要です。習近平がもっとも欲しいものはなんでしょうか? そう、「中国の夢を実現することです。

「中国の夢」とは、「アヘン戦争があった1840年以前の世界的地位を取り戻すこと」。それで習近平は、「G2でいこう」「新型大国関係でいこう」とずっと提案し続けている。「G2」「新型大国関係」とはつまり、「アメリカと中国で世界を支配していこう」ということ。

だから、トランプは習近平に言えばいい。「いま、朝鮮半島は、世界最大の問題だ。これを、中国主導で解決する。そうすれば、中国の世界的名声地位は一気に高まる。南シナ海や東シナ海を侵略して版図をひろげなくても、この問題を解決するだけで、世界中の国が、『嗚呼、中国は、世界に平和をもたらす、真の大国だ!』と認めるぞ」と。

「毛沢東は、朝鮮戦争でアメリカと戦った。あなたは、『戦わずして』問題を解決する。孫子は、毛沢東よりあなたを褒めるだろう。そして、あなたは中国で『毛沢東をこえる存在』になるだろう。世界的名声も大いに高まり、『ノーベル平和賞も受賞できるだろう。なんなら、俺(トランプ)が、『習近平にノーベル平和賞を!』運動を推進してもいい」。

「アメリカが韓国に、北京を狙える核兵器を配備する」状態。「北問題を平和的に解決し、世界史の英雄になる」状態。習近平は比較して、「毛沢東を超えた方がいいよな」と思うのではないでしょうか?

中国を動かす方法3 金正恩体制の後は、「中国」の傀儡政権を

とはいえ、もう一つの懸念を取り去る必要があります。それは、「アメリカの同盟国・韓国中心に、朝鮮半島が統一されること」。これは、中国の脅威ですね。

ですから、トランプさんは、「北朝鮮の核兵器とミサイルを廃棄できれば、次の政権は中国主導でいい」と宣言する。

これ、中国は容易に信じないでしょう。ですから、米中は、きっちりプロセスを話し合い、書類化しておく必要があります。これで、中国は、「北がなくなれば、アメリカの同盟国・韓国が半島を統一する」という心配をしなくてすむようになる。

国連安保理を巻き込む

次に、「国連安保理」を巻き込みます。この機関、普段は、拒否権をもつ常任理事国「アメリカ、イギリス、フランス と 中国、ロシア」が争っていて、何も決まらない。しかし、今回は、米中が主導するので、まとまる可能性が高まります。

米中は、何を提案するのか? まず、一応「核兵器廃棄」に同意し、実際にそうすれば、「体制は保証するというオファーを金正恩にしたらいいでしょう。この場合、これまでフセインやカダフィを殺したアメリカが、金正恩に同じことを繰り返さないよう、きちんと約束させる必要があります。

そもそも、金正恩がかたくななのは、アメリカがこれまで、フセイン、カダフィを殺し、いままたアサドを殺そうとしているからです。北はアメリカを信じられない。金正恩が、この提案を受け入れることは、期待できません。

それでも、「はじめに平和的な提案をすること」は大事です。そして、「北朝鮮が次に核兵器実験をしたら武力行使する」。これで金正恩は、「米中を同時に敵にすれば、勝ち目はゼロだ!」と悟り、核実験を封印するかもしれない。

あるいは、強行するかもしれない。強行したら、まず中国人民解放軍が大挙してピョンヤンに押し寄せ、金正恩を捕まえます。100%確信はありませんが、「中国軍が攻めてきたから、韓国を火の海にしよう!」ということにはならないと思います。

これだけだと、中国が約束を破るかもしれないので、アメリカを中心とする国連軍も入ります。そして、「非核化プロセス」「ミサイル廃棄プロセス」が始まります。北朝鮮から核兵器とミサイルが撤去された時点で、中国主導の新政権づくり」が始まります。

各国のメリット

以上、「こんな感じで解決したらどうだろう」という案を書いてきました。

各国のメリットを書いておきましょう。まず、日本アメリカ韓国。これは言うまでもなく、「北朝鮮の核の脅威が消滅すること」です。新北朝鮮には、中国の傀儡政権ができますが、核はない。

中国のメリットは、「朝鮮半島問題を、少ない犠牲者で解決した」という名声を得る。そして、「北朝鮮の実質的支配権を得る」というのが、最大のメリットですね。

最後に北朝鮮のメリット。北朝鮮は、制裁が解除されることでかなり楽になるでしょう。中国の「経済植民地」になるかもしれませんが、いまよりずいぶんマシになるでしょう。

というわけで、「第2次朝鮮戦争をストップし、半島非核化を成し遂げる方法」を考えてみました。どう考えても、「最低100万人死ぬ」といわれる戦争が起こるより、マシなのではないでしょうか?

もちろん、「現実的ではない」という批判はあるでしょう。そういうメールを書きたくなっている方は、是非批判だけでなく、「代案」もお送りください。「現実的な解決策」があれば、メルマガでご紹介させていただきます。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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