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米航空では日常的。予約ミスなのに晒し者にされた日本人の体験談

米ユナイテッド航空で発生した、オーバーブッキングの乗客を航空警備員が引きずり下ろした騒動は、SNSなどで世界中に拡散され、日本でも大きなニュースとなりました。しかし、メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者で、米国の邦字紙「WEEKLY Biz」CEOの高橋さん曰く、米国では引きずり下ろしとまではいかなくとも、オーバーブッキングの発生時に航空会社の職員が横暴な態度を取るのは日常茶飯事なんだそうです。髙橋さん曰く、その背景に米国の「世界的な大企業」ゆえの難しさがあると分析しています。

一連のユナイテッドエアライン事件について思うこと

ユナイテッド航空が色々と世間を騒がせています。 詳細はこちら

すでに世界的にニュースになっているので、詳細は割愛しますが、乗客のオーバーブッキングをしたため、ランダムに(!)選ばれた乗客4人のうち飛行機を降りることを拒否したひとりの乗客を、空港警察らしき男性3人が力づくでひきずり下ろしたことがニュースになりました。

その様子を動画に撮った他の乗客が、SNSにUP。 今日現在で4万回以上リツイートされ、大炎上。 ネット上で話題になっています。

特に、ひきずり下ろされた男性が流血し、意識を失うほどの被害に合ったこと、そしてその男性がアジア系だったことも人種差別的な意味合いが含まれている! と余計に炎上の原因になったと報道されています。

今回、これだけの世界的なニュースになった要因は、ひとえに、その様子動画を世界の人が観れちゃったことに尽きます。

だって、今に始まったことじゃないから。この国の航空会社の(特にエコノミーの)乗客に対する対応は。

実は、今回のようなこと。 全然、日常茶飯事なんです。

もちろん、ここまで機内に大声が響き渡り、流血騒ぎにまでなることはさすがに滅多にないと思いますが(まず乗客サイドでここまで抵抗する人も珍しい)。

オーバーブッキングも、ランダムで適当に降ろす人を決めることも、 まるで罪人か虫けらのようにエコノミーの乗客を扱うことも、全然、よく見る光景です。

奇しくも、2年前、僕もこのメルマガで4年前にまったく同じ経験を(ユナイテッドではないけれど)したことを書きました。

オーバーブッキングされ、ランダムに「降ろす人間」に選ばれ(さすがに流血までして引きずり降ろされたわけではないけれど)、ソーリーのひと言もなく「長い人生、そんなに焦ってどうすんだ、次の便に乗りなよ!」とマネージャーの名札をした責任者に肩を組まれました。

今回のユナイテッドなんて、800ドルの謝礼金が出るだけよかったよ。 僕のときは空港のフードコートのやっすいファーストフード「おごるからさ!」で片付けられそうになりました。

そのときの一部始終がこちらです。

【再録】アメリカってこんな国

出張。 たぶん50回目くらいのロサンゼルス。

一睡もせずに早朝JFKへ。

搭乗すると僕の席に、すでにメガネの初老の白人女性が座ってました。 間違いなく僕の席。

「Mrs.、そこたぶん僕の席です」

おかあさん、僕を一瞥してひとこと「NO」と言って、次の瞬間には読んでた雑誌に目を落とします。

いや、いや、確認してよ。 狭い通路、後ろから来る人も(僕に)怒ってます。

揉めてるうちにCAがめんどくさそうにやってきて、さすがにオバサン、CAには自分のチケットをしぶしぶ見せました。

航空会社のミスらしく、ダブルブッキング。 僕とその女性の搭乗券には同じ席番が記載されていました。

「See! (ほらっ!)」と勝ち誇った顔で僕を見るけど、オレも間違えてないんだけどな。 とりあえずぐっと我慢しました。

CAのお姉さんに、とりあえずなんとかするから待ってて! となぜか半ギレ気味に言われ、その場に僕は携帯まくらを持ったまま放置されました。

後から入ってくる人、くる人に、迷惑そうな顔されます。

こんな場合、アメリカでは、日本の航空会社のように「大変申し訳ございません! このまま少々お待ち頂けますか」と謝られることは皆無です。 被害者の僕のほうがなぜか怒られてる感満々です(それ以前に、日本では、ダブルブッキングされた場合、先に座ったもん勝ち! な空気もない)。

全員が着席するまで、文字通り居場所もないまま、狭い通路で待たされる。

もう15年もこの国で生活すると慣れてきたなぁ…日本という国のほうが世界ではまれなんだろうなぁ……とか、ぼーっと考えていたところ。

満席になりました。 空いてる席がない。

メガネのオバサン、当然の権利のように座ったまま。 CAさんたち「困ったコね~」みたいな感じで、枕を抱えたまま通路に立ってるアジア人(僕)に視線を向けてくる。

どうするんだろう…と(なぜか)申し訳ない気持ちで(全然悪くないのに)立っていると、

機内に呼ばれたであろう、スーツを着た責任者(50代?インド系)のおっさんがズボンに手を入れたままやってきました。

CAさん、「あれよ、例の問題児」みたいな感じで僕を指差します。

ジェネラルマネージャーと書かれたネームをした、その小男「あー、あいつか」とズボンのポケットに片手を突っ込んだまま、もう片方の手でちょいちょいと僕を呼ぶ。 なんだよ、と日本語で僕も行く。

「っったいっっへん、申し訳ございませんッ!!! 弊社のミスでございます!! お客様には多大なご迷惑をおかけ致しましたので、ファーストクラスをご用意させて頂きますので、もし可能でございましたら、次の便への変更をして頂けませんでしょうか。 なお、お食事等ももちろん弊社にて持たせて頂きますので」

……と謝ることなんてあるわけなく。

まさかのアメリカの航空会社の対応とは、おもむろにイキナリ僕の肩に腕を回してきて、

なぁ、朝メシ食ったか?

はぁ?

そこにSbarroあるからさ。 おごってやるよ

そことは、空港内のフードコート。 Sbarroとは、全米どこにでもある、やっすいファーストフード

ニヤニヤしながら「人生そんなに焦ってどうすんだよ、のんびり行こうぜ♪ 80分後にロス行きのフライトがあるからさ。 それに乗んなよ。 悪いこと言わない。 Sbarroで好きなもん食ってから行ったほうがいいって」

先にまず謝れよ。

いまのとこ“SORRY”のひとことも聞いてないぞ。 なんて、言うつもりも、もうありません。 この国のサービスに対して。

「悪いけど、ロスの空港に人待たせてるんだ」なんとか自分を抑えて穏便に断りました。 (チッと舌打ちされたときはさすがにキレそうになったけどw)。

そのあと、CAが場内アナウンスで、乗客の中から、次の便に変更してくれる人を募る。 その間もオレ通路立ちっぱなし。

機内、まだ離陸できないのは、こいつのせいって言われてるみたい(笑)。

機内、僕のせいでフライトできない空気が蔓延。 結構、みんなに睨まれる。

そのとき20代の女性が手を挙げて「アタシ、別に急いでないから」と立候補して席を立ちました。

場内からは「おー!」と賞賛の声。 パチパチと拍手するひとまで。

「それにひきかえ、おまえは」みたいな目でみんなに見られる。

彼女とすれ違う際、絶対言うまいと思っていた言葉が我慢できず、つい出てしまいました。

I’m sorry…

カチューシャをしていたその子は「That’s OK!」と微笑みました。

6時間の機上。 窓の外、涙をこらえて見る(w

これがアメリカですw 憧れることなんて一切ないよw

日本の航空会社だと、どんな対応してくれるんだろう…。

もう忘れてしまったことが悲しい。

少なくとも、Sbarroではないはずだ。

(初出:●予約ミスした米航空会社がヒドい対応「次便にすれば飯おごってやるよ」

ちなみに、この航空会社はユナイテッドではありません。 某LCCの会社です。

実は、出張の多い僕がいちばん利用しているのがユナイテッド航空です。

で、実は、あくまで個人的な感想ですが、ユナイテッドは、ハッキリ言って、いちばん乗客への対応がいいくらいだと思っています。 他のところの方がもっとひどい。

例えば、数年前に利用した他の航空会社。 国際線。 日本からの帰りの便。 当時、愛煙家だった僕は税関でタバコを2カートン購入していました。 ニューヨークで買うより半額以上安く購入できるから。

到着して、機内のドアを出た瞬間に、頭上の戸棚(オーバーヘッドストレージと呼ぶそうです)に、荷物のそのタバコを忘れていたことに気がつきました。 引き返そうと、振り向き、もう一度機内に戻ろうとすると、CAさんに通せんぼされます。 「戻れないわよ」

戻れないも、ドアを出て数歩。 僕の座っていた座席は、ドアから数歩のところにあります。 スグそこに見える距離。 「いや、忘れ物したから、スグそこの席なんだけど」、、そう言っても「NO」の一点張り

機内を出た時点であなたはもう客ではなくて、特別な許可がないと機内には戻れない、と意味不明なことを言ってきます。

いや、戻るというか、スグそこの席なんだけど。 と指を指しても、「NO ! YOU CAN’T!」と返すのみ。

OK、じゃあ戻んなくていいや。 そこの戸棚なんだけど、忘れ物したから、とってもらっていい? そう聞くと彼女は「あとでLOST & FOUND に行ってちょうだい」と言います。

はぁ? いや、そこなんだけど。 なんで、そこにあるものを、わざわざ一旦、機内を出て、税関通って、入国審査をして、空港内をぐるっと回って「落とし物センター」に行かなきゃいけないんだよ。

機内には入らない。 スグそこ数歩だけど、アナタが取ってくれたらいい。 今見える距離にある戸棚の中のモノなんだけど。

どう説明しても、いったん到着ゲートを出て落とし物センターに行けといいます。

NYに来られたことがある方ならご存知かと思いますが、とにかく税関であれ、入国審査であれ、時間がかかります。 そこまで待つ必要も、わざわざ、届けられる可能性が限りなくゼロに近いセンターまで行く必要も微塵も感じれない。 そこにあるのだから。

もちろん、いちおう行ってはみたものの、予想通り、届けられていませんでした。

忘れた僕が悪いとはいえ、あまりに理不尽さを感じずにはいられませんでした。

なにより、他の乗客はすべてもう機内の外に出ていたという。

つまり、アメリカの大企業は、世界的な大企業ということ。 日本の方が、今回の一連のユナイテッドの事件を見て、「世界的な有名な企業なのに、世界的な有名な企業でも、あるんだなぁそんなこと」と言うかもしれません。

でも、実は、世界的な大企業だからこそ、母体があまりに大きいからこそ、末端の現場まで、トップの役員達の目が行き届かないという自体が発生します。

日本の大企業は(一部をのぞいて)やっぱり、日本の中の大企業。 ユナイテッドに比べると、現場まで経営方針等が浸透しやすいのかもしれません(単一民族だしね)。

今回の事件は、空港警察だったので、ユナイテッドの職員ではありませんが、あの例の動画を見て、いちばん頭を抱えたのは、当然、ユナイテッドの上層部であることは間違いないと思います。「おい、おい、なにやってんだよ~」と。

あの動画を見て、日本の方が、ユナイテッドエアラインの上層部まで、あんなマインド(力づくで乗客を引きずり下ろすマインド)とついつい思われちゃうかもしれませんが、もちろん、ありえない。 僕が仕事で知っているユナイテッドエアラインの上層部の方々(アメリカ人も日本人も)はとても常識的な人たちです。

あらゆる階級、あらゆる教育を受けた層を同時に雇用をしないといけない、こっちの大企業には必ず起こりうる事件と言っていいでしょう。 なかなか、コンパクトで、国民総インテリの日本では考えにくいことですが。

例えば。

テレビを観る。 コマーシャルが流れる。 見たこともないようなあまりにカッコいい映像。 CGを駆使して、まるで映画のようなクオリティー。 ハリウッドの次回作のCMかと思いきや、ラストで【 二枚刃カミソリ 】のCMだと気付かされる。 ただのカミソリじゃん。 日本では観たこともないクオリティーの映像でした。 企業のトップは、プロダクトを購買させるため、ここまでアート性の高いPRをする。

で、直後、コーラを買いに、近くのコンビニにふらっと行く。

さっきの超カッコいいCMの【二枚刃カミソリ】が、段ボールに入ったまま、埃まみれで、端々がびりびりに破れて、そのへんの床に転がってる。 。 。 。(なんなら、段ボールには人が踏んだ靴跡がクッキリ)

全国ネットのテレビCMで、日本では観たこともないようなクオリティーで紹介していた商品が。

流通先の末端(コンビニ)では、日本では見たことないようなダラシナさで陳列すらされていない。

サイズ・スケールのせいにしちゃいけないけれど。

この国で、日本のように末端までカンペキなサービスを求める方が間違っているのかもしれません(ま、だからといって、乗客、ひきずり降ろしちゃいけないけどね )。

image by: Shutterstock

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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