飲食店で、「新人さんに、まず最初に教える事は何ですか?」と質問したとき、「注文端末の扱い方」と答えるお店も多いのではないでしょうか。しかし、無料メルマガ『飲食店経営塾』の著者で、若手飲食店コンサルタントとして活躍中の中西敏弘さんは、「最初にそれを教えてしまうと、作業をこなすことを最重視するようになってしまい、お客様に不快な思いをさせるばかりか、働く本人も楽しくない」と記しています。
最初に「教えた」ことが「優先順位の第1位」となることを認識しよう!
5月のこの時期は、新人のアルバイトさんがどのお店でも増えている時期。「新人さんを教える」という機会が増えるはず。その際に、気をつけたいことは「教える順番」。例えば、接客の「注文伺い」という仕事を新人さんに教える際、多くの人はハンディ操作や伝票の書き方、そして、店の決め事(ファーストオーダーの入力方法やキッチンへの声掛けなど)教えがち。
ただ、人は、最初に教わったものを「一番大切なもの、一番重要なもの」と認識します。そのため、最初にハンディ操作や店の決め事を教えてしまうと、実際にホールに出ると「ハンディ操作」を重要視してしまいます。つまり、「作業」が優先されるわけですね。
しかし、今は「作業」ではお客様は喜ぶはずがなく、「作業」をこなすことが優先されるわけですから、どうしても笑顔で接客したり、お客様のことを考えることに頭が働かなくなるのです。
こんな新人スタッフを先輩スタッフが見つけると、「笑顔でね」とか「テーブルもよく見てね」と指導しますが、新人スタッフは「作業をきちんとこなさないと」という意識が強く働きますから、なかなかお客様のことを考えて仕事をするということはできないわけです。すると、新人スタッフも「指摘される」ことが多くなりますから、働いていても楽しくないでしょう。
反対に、まずは注文伺いの目的は、「正しくお客様の注文を聞き、お客様に正しく情報をお伝えすること」であり、ゴール(あるべき姿)は、「これからおいしそうな料理が食べられそうだなあ、というような印象を持ってもらえる状態」ということを伝え、自分なりに「どうやれば、お客様にそんな印象を与えられるだろう」考えさせ接客するようにさせると、ただ、ハンディを打つだけではゴールを達成することは難しいということが分かり、「作業」を行う事よりも、どうお客様に「感じてもらえるか」を仕事の中心に据えて接客を行うようになるでしょう。
もちろん、ハンディ操作がままならないと落ち着いて仕事ができないでしょうから、これはホールに出る前に何日間か「営業前」に先輩スタッフがオーダーを取る練習を何度も何度も繰り返し、ある程度新人スタッフに「自信をつけさせた状態」でホールに出してあげれば、笑顔を意識してお客様の目をみてじっくりお客様の注文を聞き、そして、ハンディ操作も無難にこなせるでしょう。
こんな風に「教える順番」「教え方」を変えると新人スタッフのやる気や仕事の習熟度、そして、店としてやって欲しい仕事がやりやすくなります。
何事も最初が肝心。順番を変えるだけで、その後の成長や離職率も大きく変わってきますから、この辺りを強化するだけで採用費も大幅に圧縮されます。店内で改めて、「教え方」の手順、内容を見直してみてはいかが?
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