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ガラパゴスの悪夢再び。日本車メーカーがテスラに負ける構造上の理由

「日本の技術は世界一」と呼ばれたのも今は昔。家電製品をはじめ多くの分野で海外企業の後塵を拝しています。無料メルマガ『サラリーマンで年収1000万円を目指せ。』の著者・佐藤しょ〜おんさんは、米国・テスラモーターズについての記事を紹介しつつ、トヨタや日産といった日本の自動車メーカーは、「iPhone」の登場で完全に市場から淘汰された日本の「ガラケー」と同じ事態に陥る可能性を指摘。その理由を「技術ではなく、自動車メーカーの構造にある」と分析しています。

日本車はガラケーと同じ末路をたどるのか?

日本車はガラケーと同じ末路をたどるのか?」を読んで感じたことを、2日続けて書いています。

テスラという会社は、提携先の修理工場を持たず全て自前でやっているということを書きました。このスゴさを理解するためには、自動車の流通について知っておく必要があります。自動車ってトヨタとか日産の工場で製造されたら全国各地にあるディーラーと呼ばれる会社に届けられるんです。正確に言えば、ディーラーがメーカー(トヨタや日産ね)に注文を出したから工場で製造されたのです。

そしてこのディーラーとメーカーは一部資本の関係があるところもありますが、法人としては別会社です。発注者がディーラーで、受注したメーカーが製造して納車する、そして両者は別会社という構図から理解出来るのは、ディーラーはメーカーにとってお客さんという立場だということです。我々消費者的目線では、トヨタの車を買ったら自分がトヨタのお客さんになったような気になりますが、これは大きな間違いでメーカーのお客さんは、ディーラーなんですよ。我々消費者はディーラーのお客さんなんです。

これが致命的に重要で、メーカーはお客さんであるディーラーを儲けさせなきゃいけませんし、彼らのお客さんを奪ったらいけないんです。お客さんを奪う? ちょっと違和感ありますか?

ここでさらに話を変えると、テスラという車はソフトウェアの更新は全てネットで自動的に行われます。一台一台の車が携帯電話のようにネットに繋がっていて、ソフトウェアやカーナビの地図更新、音楽のダウンロードなどが出来るようになっています。この仕組みを聞いた日系自動車会社の某役員は、

「ウチの会社でも技術的には同じ事が出来るんだけど…」

と言った後、

「それをやっちゃうとディーラーさんにおカネが落ちなくなっちゃうから

だから出来ないって言ったんですよ。

先ほど書いたように、メーカーのお客さんはディーラーなんです。そして消費者はディーラーのお客さんなんです。そんな消費者にメーカーが直接何かをやる、その結果ディーラーの売り上げ利益に不都合が起こるということはメーカーには出来ないんです。

カーナビの地図更新をメーカーがネット越しに自動的にやってしまったら、今まで地図更新を担当し、しかもそこから某の(決して安くない)おカネを得ていたディーラーのメシの種を奪ったことになってしまうんです。だからそれはやりたくても、技術的に可能でもやっちゃいけないやれないことなんです。これは構造の問題で、簡単には変更出来ません。

テスラがそれを出来るのは彼らはディーラーを持っておらず全部自前でやっているからなんです。これならどこからも苦情は来ませんから。

それがラストワンマイルの壁がテスラによって壊されたということで、フレームワークとしては既に負けつつあるという理由です。

なんでそこに結びつくのかというと、市価300万円の車があったとします。その金額の内訳がどうなっているのかというと、ザクッと言ってディーラーの粗利が90万、宣伝費が100万、残り110万がマテリアルコストとメーカーの利益なんです。つまり300万の車はトヨタの工場を出た時には210万でディーラーに売られていて、それでもメーカーは利益が出ているということです。それに300万という値札が付いて、そこから20万くらいの値引き(これは直接値引くこともあれば、下取り車の価格で調整することもあります)があって消費者が買っているのです。

ということは、テスラが全く同じ性能、製造原価の自動車を作れるようになったら、それはいくらで売るんでしょうか?繰り返しますが、トヨタや日産は210万円で利益が出ているんですよ。それならテスラが作っても210万円で利益が出るということですよね。ところがその車がディーラーの店頭に並ぶと300万の値札になるわけです。全く同じ製造原価の自動車が、片や300万片や210万ならどちらを買いますか?という話になるんです。

テスラが値段を300万にするのなら、その分もっと原価を上げられるわけですから、魅力が高まるわけですよね。そんな場合はどちらを買いますか?

そして問題は、トヨタや日産はこの車を210万円で売ることが出来ないということなんです。なぜならば、ディーラーが存在するからです。この構図を壊すには、ディーラに売らず、メーカーが自分で消費者に売るしかないんですが、それはディーラーにケンカを売ることに他なりません。もう君たちは用無しだから、後は我々が直接消費者の相手をするから、と言えるメーカーは何社あるんでしょうか。でもそれが言えないのであれば、テスラとの競争には勝てないのです。

そんなことが出来るくらいなら、とっくの昔にカーナビの地図更新をメーカーがおカネを取ってやっていますって。件の役員が言うように、今すぐにでも出来る技術的基盤はあるんですから。そんなことすら、ディーラーの顔色を窺って出来ないメーカーが、消費者に直販なんて出来るワケがないんです。

でもテスラにも保守サービスに関するコストがのし掛かって来るんだから、その分のコストを考えたら210万で売るのは難しいんじゃないのか? という考えもありますが、そのコストを極限まで下げる手段がネットなんだと思います。

あの会社には、稼働している全ての自動車の運行状況がリアルタイムで全部分かるんですから。その気になれば、事故ったばかりの車を見つけることだって出来るはずですし、どこが壊れているのか、どの部品が必要なのかも修理工場に入らずに把握出来るはずです。これら全てが既存の人件費の圧縮に繋がるわけで、これを繰り返していけばドンドンコストは下がって、210万はムリでも230万くらいで売れるようになると思います。

そういう発展がテスラにはこれから見込めるのに対して、トヨタや日産は指をくわえているしかないのが現状なんです。そりゃ近未来のどこかで逆転現象が起こると考える人がいても当然ですし、だからこそあの会社の時価総額がGMやFordを抜いたのですよ。

テスラという会社の恐ろしさはそれを最初から分かっていて、それを狙ってビジネスを展開して行ったところなんです。彼らは最初からGMやトヨタを潰す気満々なんですよ。果たしてそんな日はやって来るのでしょうか。

image by: Nadezda Murmakova / Shutterstock.com

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【著者】 佐藤しょ~おん 【発行周期】 平日刊

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