働く人に増えている「適応障害」。原因となる3つのパターンとは?

2017.07.11
by Mocosuku
Stressed businesswoman
 

環境にうまくなじめないことから、落ち込んだり、意欲や自信を喪失したり、イライラして怒りっぽくなったり、体調面が悪くなったり、場合によってはアルコールなどの嗜癖に走るといった症状をきたすのが適応障害です。

ここでは「働く人の間で増えている適応障害」について解説していこうと思います。

適応障害ってなに?

明確なストレスの原因から3か月以内に症状が現れ、日常生活に支障をきたしている場合に適応障害と診断されます。

つまり、ストレスのレベルが許容範囲を超え、限界を突破してしまった際に起こる病態のことを指しています。

うつ病との類似性が高く、軽度のうつ病と区別がつきにくいとも言われます。

適応障害の症状には個人差がある

よく見られる症状としては、不安・焦燥感・気分がふさぐなど「情動面」での不快感と、根気がでない、集中力が続かない、しなければいけないことに手がつかないといった、「生活面・職業面」での機能障害が見られます。

また、八つ当たりや攻撃、あるいは、以前はできていたことができなくなるといった言動が現れることもあるようです。

ところで、同じ境遇やその変化にあっても、それをストレスと感じる人と、そうでない人がいます。

たとえば、新しい物好きの人は、引っ越しや初体験の多い留学生活を楽しむことができるでしょうが、強迫的な人なら、ちょっとした変化も大きなストレスと感じるでしょう。

このように、適応障害も個人差が大きく、何をストレス因と感じるかは人それぞれです。

職場で起こりやすい適応障害の3つのパターン

会社や職場で、適応障害やうつに至るパターンには次のようなものがあります。

容量オーバー

〇ストレス量が本人の対処できるキャパシティを超過する

過労や睡眠不足による疲労の蓄積、異動などで環境や仕事内容が変わった時、職場や環境に慣れて周囲からの期待が増え、仕事が質・量ともに急激に増えるなど。

体性を奪われた場合

〇価値観やライフスタイルを大きく妨害される

自由裁量がまったくない、分厚いマニュアルで手順がすべて決められている場合など、自主性が発揮できない状態が長時間続く時など。

振り回され続けている場合

〇管理者・監督者に起きやすい

部下が反抗的だったり、逆に依存的だったりする場合、当の管理職がそうした関係性に距離が取れなくなるような人間関係をめぐる事態。

また、目標やノルマの達成に振り回される場合もあり、「昇進うつ病」といった呼び名をつけられることもあります。

適応障害とうつ病

うつ病は俗に「心の風邪」といわれますが、本当のうつ病は身体の疾患にたとえると「肺炎」か「結核」くらい重症なもので、表現としては不適切という指摘があります。一方で「適応障害こそ心の風邪と呼ぶにふさわしい」という精神科医もいます。

適応障害とうつ病との大きな違いは、本人がストレスの原因(ストレッサー)から解放されると元気を取り戻すことです。

たとえば、近年話題の「新型うつ」(職場不適応症)は、職場の人間関係や仕事のプレッシャーなどがストレッサーとなって起こる適応障害で、職場ではうつ病のような状態になる反面、職場以外の場面では通常通りに振る舞えるというもの。

これに対しうつ病の場合は、ストレッサーがなくなっても状態がすぐに改善することはなく、治療から回復までにも相当の時間がかかります。

また、うつ病は薬物療法が有効ですが、適応障害では、カウンセリングなどに薬物療法を併用することが有効という見解もあります。

適応障害の治療;休養と環境調整が基本

休養と環境調整が適応障害治療の基本になります。そのために、不安や不眠などの症状が辛い場合は、対症療法として薬物療法が用いられます。

環境調整は、ストレス因を除去するか、ストレスへの抵抗力を強くしたり、対処能力を高めることが必要となります。

この目的でカウンセリングや認知行動療法を行うことが有効とされています。

ストレス因に対しては、現実的に働きかけて問題解決へつなげられれば理想的ですが、そのためには、本人の努力だけでなく周囲の協力やサポートも必須でしょう。

それでもなかなか変えられないことが現実的に多いので、その場合には、一時的に回避をしたり、ストレスによって被る緊張感を感情表出したり、ストレス発散をしたりなどのストレス・コーピング(対処)ができてくると、症状が改善され、時間とともに軽快していくと考えられています。

ストレスから3か月、終結から6か月

適応障害はストレス因の始まりから3か月以内に発症し、ストレス因やそれから引き起こされた事態が解消されてから、6か月以内に回復するとみなされています。

ですから、有効に働きかければ予後はよいとされていますが、環境要因が改善しなくて症状が長引いてしまうこともあり、その場合には「遷延性抑うつ反応」といった言い方もされます。

また、有効な解決策がないまま「うつ病」に移行する場合もあります。

執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ

 

<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

image by: Shutterstock

 

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記事提供:Mocosuku(もこすく)

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