いじめ被害を訴えても、学校側が本腰を入れて解決に動いてくれないというケースはままあります。そんな時、親としてはどう動くべきなのでしょうか。今回の無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』では、いじめ解決に力を発揮する「文書」の具体的な作成方法を紹介してくださっています。
いじめ解決に向けて-文書の大切さ
先日はこのようなご相談を受けました。
「夏休みになったら学校は指導できないと言うんです。2学期が始まっても、うちの子が、学校に行けるかどうかも分からないのに。いじめに対応してくれません」
しかも、担任から、
「いったいお母さんは何をしてほしいんですかと言われたんです」
と本当にお困りのお電話でした。
「先生は教育のプロだから、いじめを相談したら、すぐに適切に対処してくれるはず」と、私たち保護者は期待してしまいます。しかし、上記のケースのように、いじめが解決されないまま時間がたってしまうことがあります。特に夏休み前などは、早急にいじめを解決しなくてはなりません。
このような膠着状態になってしまった時に「文書」が早期解決への道を開くことがあります。私たちは、「いじめ被害経緯書」と学校への「いじめ解決の要望書」の2つの文書を作ることをお勧めしています。「面倒だ」とか、「そんな大げさなことまでしたくない」とおっしゃる方もおられますが、しかし、文書はいじめ解決への大きな力となります。
1.「いじめ被害経緯書」は「最大のツール」
一般的に、いじめは、悪口や、にらむとか、無視や仲間はずれというものが大半をしめます。ですから、「いじめの証拠を手に入れることができない」のが普通です。証拠に代わるものとして、いじめの記録の「文書」が学校と交渉する際の材料になるのです。
文書化のポイントとしては、いじめの事実を「何月何日の何時ごろ、誰が、お宅のお子さんに、どういうことをしたか。どんなことを言ったか」など、時系列に書き出すことです。
この「いじめ被害経緯書」を元にいじめの事実確認を学校に依頼することで、学校は、加害者から「このようないじめをしましたか」などと事情を聴くことができます。また、周囲の子供たちから聞き取り調査することもできます。もちろん、いじめの証拠があればさらに有意義に交渉が進められると思います。
2.「いじめ被害経緯書」がきっかけで、学校全体としての取り組みが進む
また、「実際に校長先生とお話ししてみたら、いじめの内容が全く伝わっていませんでした。担任はひどい先生です」というご相談も実に多くいただきます。担任の先生に対して、「校長先生はこのいじめをご存知なのですか」とお聞きすると、ほとんどの場合「ちゃんと報告しています」という答えが返ってくるのですが、実際には伝わっていないのが実情です。2時間、3時間と担任の先生にいじめの事実や、本人がどれだけ苦しんでいるかと訴えても、校長先生への報告には、ほんの5分、10分で済まされてしまうものです。また、聴き間違いや勘違いなどもありますので保護者の意図が全く伝わっていないということもよく起きてしまいます。
そこで、「文書」が大事なのです。文書を渡しながら担任と話すと、担任の先生も校長先生や指導主任、学年主任に相談しやすくなるのです。何と言ってもコピーすればいいだけですので。過去、文書を渡すことで学校全体として解決に乗り出してきてくれたということが何度もあります。
もう一点、公務員や教師の多くは、文書をもらうと「仕事をしなければならない」と考える習性があるようなのです。今まで出てこなかった校長先生が、急に「辛い思いをさせてすみませんでした」と連絡してきたり、話すだけでは何もしてくれなかった校長先生が、「これはちゃんと対応しなくてはいけませんね」と言って動き出したということもありました。文書を持っていくかどうかということで、学校の態度が大きく変わってきます。どうかこの点をよく知った上で「文書」をつくるようにしてみてください。
3.「要望書」で具体的な対処方法を要望することが、いじめ解決につながる
「いじめ被害経緯書」以外に「いじめ解決の要望書」も大切な文書です。いじめがあるのは理解したけれど、「どうしていいのか分からない」という教師もかなりの数います。また、できるだけ「何もしないで終わらせよう」という学校もあります。典型的な対応が「昼休み、お子さんのことを見守るようにいたします」など、ただ様子を見るだけでお茶を濁す学校があります。そんな学校にしっかりした対応をとってもらうためには、「何をしてほしいのか」を明確にしてあげることが必要です。
- 加害生徒から謝罪をして欲しい
- 加害生徒にいじめをしないという約束をして欲しい
- 加害生徒の保護者にこの事実を伝えること
- 班替え、席替え、クラス替えを行うこと
などなどの事を明確に文書にして要望することで、いじめの対応スキルのない教師であっても、一定の対応ができるようになります。
4.学校以外の外部機関の協力をあおぐときに有効
文書を提出して校長等にお話しても、それでも、いじめに対処しない学校もあります。そのような場合は、学校以外の外部機関の協力が必要になります。外部機関としては、教育委員会、議員、警察、法務局、新聞社等のマスコミが有効です。
相談する際には、やはり「文書」で示すと理解を得られやすくなります。「いじめ被害経緯書」や「要望書」を見せたり、メールで送ったりすることもできます。「文書」を一度作ってしまえば、何度でも使えますし、コピーも大量にできますので、外部の力を借りるためにも文書化することをお勧めします。
再度申し上げますが、手間ではありますが、文書はとても有効です。ちなみに、手書きであってもかまいません。どうか「文書にする」ということを頭の片隅に留めておいてください。
文書作成のお手伝いもいたしております。いじめかなと思ったら、ご遠慮なくご連絡ください。お役にたてれば幸いです。
いじめから子供を守ろう ネットワーク
井澤・松井
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