普段はなかなか覗けないような有名な会社やお店の経営のヒントを得ることができる「視察」。しかし、ただうわべだけを見ているようでは何も得ることが出来ないのは当たり前の話です。今回の無料メルマガ『ビジネス真実践』では、著者で戦略コンサルタントの中久保浩平さんが、あらかじめ知っておくべき「視察の心得」を記しています。
視察の心得
とあるメーカーの部長さんが、「先日A社へ視察に行ってきたんですよ」ということを仰られたので、「それで、どうでした?」って尋ねると、「いや~素晴らしかったです。活気が凄かったんですよ。うちももっと頑張らないと」。
「そうなんですね、どこがどう素晴らしかったのですか?」って尋ねなおすと、「ですから、とにかくみんな活き活きしてたんですよ」なんていう小学生でもいえるレベルの残念な感想が返ってくるだけでした。それを聞いて、「あ~もったいないな~」なんて思いました。
抽象的な感想しかいえないというのは、せっかく視察に行っても何も得られていないということです。その時間、コスト、ほんとに勿体無いことです。
たとえば、繁盛しているお店、行列のできるお店にはそれなりの理由があるものです。その理由を見出す為には、実際に足を運んで注意深く観察することも必要です。先述した部長さんのように表面的なところしか見ずに帰っては当然何も見つからず視察の意味がありません。
また、自分なりに「これだ」というものを見つけたとしても必ずしもそれは100%正解ではないということを理解しておくことも大切です。実際にそこで働いているスタッフ、店主すら「ほんとのところは…」と気がついていないこともあるのです。100%正解の答えなどありません。
視察とはそういうものです。
突然ですが、あなたが焼き鳥屋を営んでいるとしましょう。しかし、流行っているとはいえない状況だとします。堪り兼ねたあなたは、近くで繁盛している焼き鳥屋の店主にお願いして視察させてもらうことになりました。
あなた「繁盛してますね。どうしてこんなに繁盛しているんですか?」
繁盛店店主「熊本産地鶏と秘伝のタレにこだわっているからです。」
そんな会話があったとします。「ではうちも!」と繁盛店のヒントを得た! と思い、同じように熊本産地鶏を使い、タレに工夫をしたからといって、あなたのお店が繁盛するなんてことはありません。
もっと言うと、店主自身が答えた「地鶏と秘伝のタレ」も実のところ、繁盛の要因の1つなだけであって大きな要因ではなく、接客の質やお店の雰囲気、サービスの質、店主の熱い思いからくるこだわりが繁盛の秘訣だったりすることもあるということです。
つまり、1つの要因は氷山の一角に過ぎずその要因の裏にはいくつもの要因が絡み合っていることがほとんどなのです。ですので、視察や観察をするときには、
- こだわりメニューがある
- 口コミになりやすい目玉商品がある
- サービスの質がいい
- お店の雰囲気作りがいい
- 価格メリットがある
- 人材教育のマニュアルが革新的
- 営業力がある
などというのは、ほんの一握りのことであって、その裏にある要因は? というところに視点をおくことが重要なのです。
その為には、
- なぜそこまでこだわるのか?
- なぜその商品を目玉としたのか?
- なぜそれほどまでにサービスの質が高いのか?
- なぜそのようなお店作りになったのか?
- なぜそのような価格帯で提供しているのか?
- なぜそのようなマニュアルが必要とされたのか?
さらには、
- それらの答えに共通する部分はあるのか?
- 共通するキーワードは?
というところまで突き詰め、それらを自分なりに考えまとめてみることです。そこまでやって、繁盛店で視察する意味があるということになります。上っ面の成功事例だけでは真に学ぶことなどできません。ましてや何の力にもなりません。
他社への視察、繁盛店の観察や視察を行う時、どこに視点をもっておかないといけないか? 他社や他店から学ぶ時、どいうところを学ぶべきなのか? を十分に心得ておきましょう。それだけでも吸収力や思考・発想力を養えると思います。
■今日のまとめ
『視察や観察は、目に見えているものだけで済ませない。』
- 学びたいと思う繁盛店・会社(あるいは社名・人物名)をノートに書き出す。
- 書き出したお店や会社へ観察・視察・取材に行ったときどこに視点をおくべきか? どういうところを学ぶ必要があるのか? をまとめて準備する。
- 視察の交渉をし、実践する。
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