MAG2 NEWS MENU

「体に良い」のに、なぜマズいのか? 武田教授が語る「食べ物」の嘘

70年代頃から始まったとされる日本の「健康ブーム」。最近では「オーガニックブーム」も加わり、一部の人はとにかく「身体に良いもの」を探して食べることに情熱を燃やしています。しかし、メルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』の著者で中部大学教授・武田邦彦先生は、「生物学的にみても味覚に勝る栄養学があるのかは疑わしい」と持論を展開しています。

37億年前の生命誕生から、生きものの食の変化について考えてみる

37億年前に誕生した地球上の生命は、現在の生物とはかけ離れたものも居ましたから、なかなか全体を整理するのは難しいのですが、現代の生物を基準にして生物界や私たち人間、それに健康や寿命というものを系統的に考えることはできますし、またとても参考になるものです。

長い生物の歴史を経て、すべての生物のもとは植物」が担っています。そして最初の植物は、地上に生物がいないときに誕生したものは「生きもの」がいないのですから、無生物を食糧にしなければなりません。

それが今は温暖化ガスと言われる「二酸化炭素」です。地球の大気には二酸化炭素が95%と豊富にあったので、植物は二酸化炭素を食糧にしています。二酸化炭素の中に含まれる酸素は役に立たなかったのですが、炭素は燃やすとエネルギーがでるし、体を作ることもできるので、二酸化炭素を食べて炭素と酸素を分解して食糧にしていました

それから37億年も経った現在でも同じで、そこら辺に生えている草木、私たちの主食でもあるイネなどは、すべて二酸化炭素だけを食糧にしています。よく「この土には栄養がある」と言いますが、この「栄養」は人間で言えばビタミンやミネラルというもので、ご飯や肉などではありません。だから本来は「土の栄養」という用語はあまり適当ではなく、「調整剤」などと呼ぶべき副次的なものです。

大気中の二酸化炭素を食べる植物が誕生して繁栄すると、二酸化炭素から光合成で体を作るのは面倒なので、二酸化炭素を食べる代わりに命(植物)を食べるというサボりが出てきます。それが「動物」です。昔は大気中に二酸化炭素が多く、植物が繁茂していましたので、動物はドンドン植物を食べることができて、恐竜のような巨大な体を持つ動物も出現しました。

そのうち、さらにサボりが出てきて、植物を食べて自分でタンパク質などを作るのは面倒だとばかり、ほぼおなじ体の構造をしている動物を食べる「肉食動物」が誕生しました。その一つがライオンです。

アフリカの草原にはライオンと、そのそばにいつも餌になるヌーというウマのような草食動物がいます。ヌーは「土に生えていて動かない草」を食べますので、食事は楽ですが、草には蛋白も少ないので、草を過剰に食べないと必要な蛋白アミノ酸を摂ることができません。そこで「食べ過ぎては走ってエネルギーを消耗し、自分の体を作る蛋白の原料となるアミノ酸をやっと摂る」という大変なことをしなければなりません。ウマがいつも走っているのはそれが原因しています。

一方、ライオンは走って逃げる獲物を獲らなければなりませんので、狩りは大変ですが、ひとたび獲物を手に入れると自分の体とほとんど同じものでできているので、あとは食べるだけでよく、食べるとゴロゴロしています。ヌーが走り、ライオンが寝ているのは草食と肉食の違いが生活に表れていると言えます。

「美味しいものを食べることが大切

ところで、草食と肉食がいれば、その中間の雑食というのも登場する訳で、私たちヒトも雑食と言われています。でも、厳密に考えると「雑食」という動物はいないと言ってもよいのです。その理由は「雑食動物で草を消化できる動物はマレ」だからです。ウマやウシは草食動物ですが、基本的には「草」を食べていて、果物や大根のような根ものは食べません。それに対して人間は雑食と言われますが、食べる植物は果物と野菜根もの」にほぼ限定されています。つまり「草」を消化できないのですから、雑食とも呼べないのです。

動物というのは自分の体をつくり、エネルギーを得るために食べますし、植物にしても動物にしても「他の命をいただく」ということでも何を食べても同じです。つまり動物は「他の命をいただいて自分の体の中で消化(バラバラにする)し、改めて自分に必要なものを合成して生きる」というものだからです。

人間は草を食べても美味しいとは感じないのですが、それは「味覚」が「人間に必要なもの」を見分けるからです。人間には栄養学とかテレビなどがありますから、「これは栄養がある」などと言われますが、動物はそんなことは分からないので、味覚で自分に必要なものを見分けます。

もちろん、人間も正常なら「美味しいものを食べることが大切で、「あれが良い、これは体に良い」等という知識は本来はムダなのです。最近50年ほど、テレビや雑誌などで健康と食材のことが繰り返しでますが、本当に食べてまずいのに健康に良い食材というものがあるかどうか不明です。

食品に興味のある人、食事を作る人は「ライオンにベジタリアンはいない」、「ライオンはいつもゴロゴロ寝ている」ということをよく考える必要があるでしょう。(次号に続く)

image by: Shutterstock

武田邦彦この著者の記事一覧

中部大学教授の武田邦彦です。主に環境問題や資源に関して研究を行っております。 私のメルマガでは、テレビや雑誌新聞、ブログでは語ることが出来なかった原発やエネルギー問題に鋭く切り込みます。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」 』

【著者】 武田邦彦 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 水曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け