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なぜ「シニア向け簡単スマホ」が、シニアにまったく売れていないのか?

iPhoneが登場して今年で10年になるそうですね。当時は「日本では流行らない」などとも言われたスマホですが、今ではガラケーを使っている人の方が珍しくなりました。この傾向はシニア世代でも同様のようで、今では半数以上のシニア世代がスマホを使用しています。一方で、スマホに抵抗感があるシニア世代に向けて作られた「シニア向けスマホ」の売れ行きはイマイチなのだとか…。なぜ、シニア世代はシニア向けスマホを選ばないのでしょうか?
※本記事はジモトのココロに掲載された記事です(2017年8月9日)

シニア世代のスマホ所有率は50%に

シニア世代がなかなかフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)からスマートフォンに買い替えてくれないというのが、長い間、携帯電話会社やメーカー各社の悩みだった。

ところが、最近のデータによれば、携帯電話所有者のほぼ半数がスマホを所有しているという。

 

モバイルに特化した調査研究機関「MMD研究所」が、2017年年6月に発表した「2017年シニアのスマートフォン利用に関する調査」によれば、スマホの所有率は、60代で51.9%70代でも35.7%に達した(図1)。

図1

 

この中には、シニア向けスマホも含まれている。

 

図2

 

図2を見れば、毎年約10%ずつ増加しているのがわかる。このペースが続けば、3年後には携帯電話を所有しているシニアの8割が日常的にスマホを使っていることになる。現実は、もっと増えるのだろう。

というのも、インターネット自体の利用者が増えているからだ。

図3

 

図3は総務省が発表した「平成27年度通信利用動向調査」にある「インターネットの利用動向」。

今でも60代のネット利用は80%に近い。70代でも半数以上が使っている。

日常的にネットを活用しようとするシニアは、必然的にスマホに買い替えると思われる。

2020年には、東京オリンピックやパラリンピックを、スマホで観戦するシニアの姿があちこちで見られることだろう。外出先でも観戦できるのは、アクティブシニアにとってはありがたいことだ。

 

ショッピングにSNS、そしてポケモン

では、シニアは、スマホを何に利用しているのだろうか

先のモバイル調査では、普段利用しているサービスを質問している。結果、最も多いのはメール、次が動画、3番目がショッピングとなった。以下、Facebook、レシピやグルメの検索と続いている。(図4&図5参照)

図4

図5

 

シニア世代の私としては、この結果にはほぼ納得だ。メールはガラケー時代からの主要な利用法で、これなしにはスマホを持つ意味がない。また、映画の予告編とかYouTubeでの各地のイベントなどは動画でよくチェックする。仲間のジャズ演奏などを動画に撮って、Facebookにあげたりもする。ショッピングに関しては、夜中の通販番組をTV画面で見ながら、注文はスマホだ。

 

そして、シニア世代にダントツ人気のSNS・Facebookは個人ページだけでなく、活動をアピールするFacebookページも活用して、アクティブシニアには欠かせないツールとなっている。(「シニアはなぜfacebookを好むのか」を参照)

 

意外なのは、読書という項目が登場しないこと。タブレットの調査なら登場するのだろうか。そもそも、文字を読むにはスマホの画面は小さ過ぎる。加えて、シニアは視力の衰えと共に文字を読むこと自体がおっくうになって、読書の機会が少なくなっていく。そして、紙媒体にはまだ愛着がある。読書が登場しないわけだ。

 

逆に、意外に利用されているのがポケモンだ。ネット行動分析調査によれば、ポケモンの利用者が最も多かったのは2016年7月の1100万人。それが2017年6月には442万人と半数以下に減った。ところが、50代は11%から15%、60代は6%から10%とむしろ数字は増えている。ただ、これは若い世代が減少した一方で、シニア世代は継続しているので、割合が上がっただけではないだろうか。

 

一度始めたものは長く利用するというシニア世代の利用傾向が、ゲームに関しても実証されたということかもしれない。

崩れた「ガラケーからシニア向けスマホ」の図式

 

ところで、図1や図2では「シニア向けスマートフォン・フィーチャーフォン」が分けて数値化されていた。もう一度、図を振り返ってみると、60代での「シニア向けスマートフォン・フィーチャーフォン」利用率は3.9%70代では10.9%と、CMでよく見る割には振るわない。

携帯各社やメーカーは、なかなかスマホに切り替えてくれないシニアに向けて、苦肉の策として、ガラケーから簡単な操作で使いやすいシニア向けスマホに、いずれ慣れたところで、通常のスマホに移行という図式を思い描いていたようだが、どうやら、あまり成功してはいないようだ

 

それはなぜか。1つ目は、メーカーがスマホの使いやすさを研究した成果ともいえる。

 

2つ目は、図3にあるように、パソコンなどでインターネットに親しんできたシニア世代にとって、スマホもそれほど難しいものではなくなったということ。55歳の人は5年たてば60歳になり、60歳の人は65歳になる。シニアではあるが、すでにスマホには親しんできた世代だ。

 

そして、3つ目が最も重要なポイントだ。
シニア向けというものには、多かれ少なかれ、拒絶反応を持つ傾向がある。私の仲間でも、シニア向けスマホを使っている人は少ない。持っている人に、なぜそれを選んだかと聞くと、子供が買ってくれたなどという場合が多い。実は、本人はあまり納得していない

なぜなら、いかにもシニア仕様の大きなボタンが並んでいたり、利用法が制限されていたりと、自分のスマホはいかにもダサいように見えるのだ。友人たちは自分で選んだスマホを、好きなケースやカバーに入れて持ち歩いている。「あっちがいいな」。

 

スマホが使えるかどうかはともかく、シニアといえど、おしゃれでかっこいいものが欲しいのである。特に、団塊の世代などはデザインにもうるさい。ちなみに、iPhoneはシニアにも人気だ。操作はそのうちできるようになる。シニアのためと思ったことが、シニアの気持ちに響いてなかったといえる。

 

そうしているうちに、格安スマホが登場した。いつも行っているスーパーでも買えたりする。早晩、シニア向けスマホは消えていく運命にあるのではないだろうか。

 

image by: Shutterstock

松本すみ子

松本すみ子
シニアライフアドバイザー。2000年から団塊・シニア世代のライフスタイルや動向を調査し、発信中。全国各地の自治体で「地域デビュー講座」の講師なども務める日々。当事者目線を重視しています。公式サイト 

 

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