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なぜ不動産のプロは「ペアローン」や収入合算を勧めないのか?

住宅ローンを夫婦や親子の連名で組むことを不動産業者からお勧めされた経験がある方も多いかと思います。説明を聞いてみると、いい事だらけのような「ペアローン」や「収入合算」ですが、そこに落とし穴はないのでしょうか。今回の無料メルマガ『「教養」としての不動産取引』では著者で不動産活用コンサルタントの楯岡悟朗さんが、これらのローンのメリット・デメリットをわかりやすく解説しています。

夫婦・親子で住宅ローンを組む場合

住宅ローンは通常、単独で借りることがほとんです。しかし、借りる人の年収や勤務先などの事情によって、単独で借りられない場合もあります。

そのような場合、夫婦・親子連名、または収入合算という方法で、融資を受けることができます。

連名で融資を受けるとは?

各自が主債務者となり、それぞれが各共有持ち分に応じて別々に借りることをいいます。一般的にはペアローンと呼ぶことが多いようです。

夫婦とはいえ、互いが一定額を負担することになるので、購入する不動産は負担割合にもとづいた共有名義となります。例えば5,000万の物件を2,500万ずつ融資を受けて購入する場合、

と、上記のように持ち分を、負担額に合わせる必要があります。

負担額と持ち分が上記のようにかい離してしまうのは、現実に即していないので基本NGです。「なんで5分の1しかお金出してないのに、半分も持ち分持ってんの!?」ってことです。

連名で融資を受けるメリットとデメリットとは?

メリット

  1. 各自が住宅ローン減税を受けることができる
  2. 単独では購入できない不動産を購入することが出来る

デメリット

  1. 1件の不動産購入に対し、2件の融資を受けることになるので、単純に融資にかかる費用が2倍になります。
  2. 融資にかかる費用(*事務手数料、保証料、登記費用)が2倍
  3. 団体信用生命保険にそれぞれが加入しなければならない

2.について補足。どちらかに万が一のこと(※ 死亡、働けなくなった)があっても、全額完済されることはありません。例えば夫婦共有で、

のペアローンを組んでいた場合。夫が死亡したら2,500万は完済されますが、妻の2,500万は払い続けなくてはなりません

収入合算とは?

夫婦の場合の収入合算について考えます。夫の収入に妻の収入を合算することで、ローンが通しやすくなります。ただ、単純に収入を合計できるわけではありません。金融機関によって基準は異なりますが、以下のような制限があることがほとんどです。

  1. 夫の年収10倍までの融資額が上限
  2. 夫の年収の半分までしか合算できない

1.に関して言うと、夫の年収が400万とすると、借り入れ上限は4,000万までになるということです。

また、妻の年収が250万だとしても、夫の年収(※ 400万)の半分、つまり200万までしか合算することができません。

ペアローンと収入合算の違い

ペアローンは夫婦それぞれが持ち分に応じて融資を組みます。従ってそれぞれが主債務者になります。

収入合算の主債務者は1人です。夫が主債務者で妻が収入合算者とすると、妻は夫の連帯保証人になるということです。夫が返済できなくなっても、妻が連帯して返済義務を負うことになります。

ただし、団体信用生命保険は主債務者である夫が加入者です。主債務者に万が一のことがあった場合、連帯保証人の返済義務も免除されます。

収入合算のメリットとデメリットとは?

メリット

デメリット

まとめ

個人的な見解としては、単独ローンで買えない不動産は、その人が買うべき不動産ではないと考えています。もちろん、「生活費も半分ずつだから家も半分ずつね」というスタンスの元、ペアローンをあえて組む人もいれば、「個人事業主で妻を連帯保証に入れなければならない」などやむにやまれる事情で収入合算を選ばざるを得ない人もいるでしょう。全てのケースで避けるべきというわけではありません。

しかし、よりよい物件、単独では買い切れない金額の不動産購入をするために、ペアローン・収入合算を利用することはお勧めしません。どうしても欲しい物件なのかもしれませんが、単独で融資が下りないということは、そもそも身の丈に合っていない物件ともいえます。

不動産仲介業者の仕事は、「欲しいと思ってる物件を買ってもらうこと」です。買ってもらうために、ペアローンや収入合算を提案してくるかもしれません。その物件を欲しいと願う人からすると、購入できる方法を模索してくれる仲介業者の姿は頼もしく映るかもしれません。しかし、不動産会社にとって、買ってもらうまでが仕事であり、購入後の返済生活がどうなるかに興味はありません

結局は自身でペアローンや収入合算についての知識やリスクを学び判断しなければならないのです。

image by: Shutterstock.com

『「教養」としての不動産取引』

『「教養」としての不動産取引』

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