今年の中秋の名月は10月4日ですが、満月となるのは10月6日。昨年同様、2日のズレが生じます。一体なぜこの差が? そんな疑問に、無料メルマガ『1日1粒!「幸せのタネ」』の著者・須田將昭さんがわかりやすく回答しています。
ほしぞら案内(10月編)
10月になりました。毎月恒例になってきた「ほしぞら案内」の10月編をお届けします。
10月というとすっかり秋の気分ですが、夜8時ごろでもまだまだ夏の第三角が高く見えていて、いつまでも夏の名残りを惜しむようです。
さて少し視線を東の方にずらすと、夏の第三角のように一等星で作られていないので「ひっそり」という感じがぴったりなのが秋の四辺形です。ペガスス座の胴体にあたります。その足元にはアンドロメダ座。横にはW字型でわかりやすいカシオペア座も見えています。
秋の星座は一等星がたった一つしかなく、秋の夜空というのは寂しさがさらに身にしみます。しかし、アンドロメダやカシオペアなどケフェウス王の一族の神話のお話が賑やかなので、それは次にでもお話しましょう。
目につく惑星で言えば、木星はほとんど太陽と同じ方向にあってほぼ見られません。土星も下旬ごろには夜8時ごろには西の空に沈んでいくので観察するなら上旬が最後のチャンス、といったところでしょう。
今月のトピックとしては「中秋の名月」でしょうか。中秋の名月は、太陰太陽暦での8月15日の夜の月です。太陰太陽暦というのは明治以前に日本で使われていた暦で、月の動きをもとにしたものです。中秋の名月は芋名月とも呼ばれていますが、里芋などをお供えするところからそう呼ばれるそうです。
ただ、今年の中秋の名月は満月とは少しずれています。満月は10月6日です。満月の手前ということは、見頃の時間も少し早めですね。
満月前後の月は大きく明るいので、秋の澄んだ空と合わせて、きっと美しく感じられることでしょう。ぜひ家族やお友達と秋の月を愛でてみてください。
星を観察することを趣味とする人間からは、月は明るすぎて「邪魔者」扱いです。淡い星が見えなくなってしまうからです。月を観察するのでも、満月は太陽の光を真正面から浴びていて陰影に乏しく魅力を感じません。
でも、夜の街灯がない時代の人には、月の明るさほどありがたいものはなかったでしょう。月明かりが煌々と照る夜道の美しさも独特です。
10月4日、晴れるといいですね。
さて、今年の中秋の名月は10月4日、満月は10月6日で「名月と満月が一致しない」ということをちらっとだけ書きました。なんとなく「中秋の名月=満月」と思いますよね。これは、それぞれを決める暦のシステムが違うから起こるズレです。
まず中秋の名月は、太陰太陽暦、昔の「月の動きをもとにした暦」に基づきます。
中秋の名月は、この暦での「8月15日」の月です。そしてこの暦では「新月の日が1日」になります(正確には「新月の瞬間を含む日」です)。今年はそれが9月20日に当たるので、そこから15日後になるのが10月4日です。
一方、「満月」は太陽・地球・月の位置関係で決まります。具体的には
太陽 地球 月
となっている時です。太陽と月が地球を挟んでちょうど反対にあり、月が太陽の光を真正面に受けてまん丸に見えます。
月は地球の周りをおよそ29.5日で回っています。新月から新月までが29.5日ということです。ならばその半分の14.75日、四捨五入したら15日で満月になりそうなものです。
ところが天体の軌道は円形ではなく、楕円です。地球の遠いところではゆっくりと、近いところでは速く動くことになります。そのため、新月から満月になるのがちょうど半分にならず、おおよそ前後に1日分ぐらいずれます。今回はどちらかというと長めの最大値に近い、15.5日ほどかかって満月になります。
そういうタイミングだったので、中秋の名月よりも満月が2日ほど遅れる、ということになってしまうのです。
太陰太陽暦、大雑把には「旧暦」と呼んでいるものですが、明治時代に日本で太陽歴(グレゴリオ暦)が採用されて以来、公式な暦ではなくなったので、正確な計算をしている公的な機関はありません。
旧暦では、先ほども書きましたが月の周期を元にしていて、1ヶ月は29.5日です。1年は約354.4日で、約11日ほど少なくなります。3年経つと33日ほどになる、おおよそ1ヶ月以上もずれてしまいます。そのため「閏月」を入れて、年間13ヶ月の年を作る必要があります。
これにもルールがあるのですが、これはこれでなかなか奥深い問題なので、興味がある方はぜひ一度「2033年問題」で調べてみてください。
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