存亡の機
平成28年度「国語に関する世論調査」ではまた、下記に挙げた3つの慣用句で、どちらの言い方を使うか、尋ねています。
あなたはどちらを使っていますか?
1.「はっきりと言わない曖昧な言い方」を
ア)口を濁す
イ)言葉を濁す
2.「卑劣なやり方で、失敗させられること」を
ア)足下をすくわれる
イ)足をすくわれる
3.「存続するか滅亡するかの重大な局面」を
ア)存亡の機
イ)存亡の危機
本来の言い方は
1.イ)言葉を濁す
2.イ)足をすくわれる
3.ア)存亡の機
です。
2.で「足下をすくわれる」と回答した人は64.4%で「足をすくわれる」の回答は26.3%となっています。
「すくう」とは、下から持ち上げるようにして横にはらう動き。すくうのは「足」であり、「足下(あしもと)」ではないのですが、「足下をすくわれる」や「足元をすくわれる」が使われることが多いようです。
3.で「存亡の機」と回答した人は6.6%で、「存亡の危機」の回答は83.0%となっています。私も、「存亡の危機」と思い込んでいました。
「機」は、物事をするのによいおり、機会、時機という意味なので、存続するか、滅亡するかという重大なタイミングが「存亡の機」。
一方で、「存続の危機」という言葉もあるため、これと混同して「存亡の危機」と記憶してしまうケースが多いのかもしれません。
今回の調査を行った文化庁では「言葉は時代とともに変わる。本来と異なる使い方が一般的なケースもあり、それらを全て誤用と断じることはできない」としています。
ただ、このような機会に本来の言葉の意味を知ることは大切です。変わっていく言葉を止めることはできないにせよ、何となく流されて聞いたまま、見たまま言葉を使うより、元の意味が何で、どう変わっているのかを時に立ち止って、意識してみてもよいと思うのです。
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