以前に掲載した記事で、資産運用の相談に乗ると高齢者に近づき、最終的には高額のアパートローンを組ませるという銀行の手口を紹介したメルマガ『週刊 Life is beautiful』著者の世界的プログラマー・中島聡さん。今回は、アパートローンへの誘いの手口について実例を紹介し、いかにして高齢者が騙されていくかを詳しく解説しています。
私の目に止まった記事
● 絶対儲かるといわれたアパートローン「私はこうして破産した」
ひと月ほど前にこのメルマガでアパートローンの問題点を指摘しました。その後、MAG2 NEWSが「金融庁も警鐘。高齢者をカモにする銀行の『アパート経営』悪徳商法」というタイトルで公開したため、数多くの方に読まれたようです(Facebook で 1400 回以上シェアされているので、少なくとも数万人が読んだと思います)。
その約一ヶ月後に週刊現代に掲載された上の記事は、実際の被害者にインタビューもしており、(足を使った記者を抱えていない)私の記事よりも何倍も説得力のあるものになっており、私の記事を読み直した上で、この記事を読んでいただくと良いと思います。
この記事に取り上げられている最初の被害者は、東京から2時間ほど離れた中部地方で農家を営んできた80歳の老人。(銀行ではなく)大手不動産会社が「お持ちの土地を活かしてみませんか。アパートを建てれば、管理と入居者募集の手間はすべてこちらでお引き受けします。さらに、契約中の30年間は一定の家賃収入を保証します」というセールストークで近づいてきたそうです。
アパートの建設費9000万円は、この不動産会社が紹介した地方銀行がローンとして提供し、当初の(大手不動産会社による)家賃補償額はローンの支払いを上回っていたそうです。しかし、その後、同じようなアパートが近所に乱立し、入居率が下がり、結局は家賃補償額の見直しを迫られて困っている、という典型的な話です。
ちゃんと考えてみれば、アパート経営にはリスクがあり、そのリスクを最終的に追うのは(不動産屋ではなく)土地を担保に銀行からお金を借りた自分だということが分かるはずなのですが、「銀行や大手不動産会社が言うことならば信用できる」と安易に考えてしまう善良な人たちが、次々に騙されているのです。
社会全体で見ると、このアパートローン・バブルは、当初は地方ゼネコンにお金が流れるため、短期的には景気や雇用面ではプラスですが、中長期的には、入居率の低いアパートが乱立し不良債権化し、多くの人たちが破産したり、せっかく長年かけて手に入れた土地を失うことになります。
ニーズのないところに建てられたアパートは、最終的には朽ちていくばかりの負の資産なので、たとえ銀行がアパートと土地を借金の担保に入手したとしても、良い転売先を見つけることは簡単ではなく、最終的には(アパートバブルの乗じて金を貸していた)地方銀行も大きな損失を食らうことになると私は見ています。
● Dyson plans to launch electric car in 2020
吸引力の強いサイクロン掃除機で知られた Dyson が、電気自動車ビジネスに参入するという話です。
Dyson は、1998年ごろから電気自動車の研究を進めており、2020年の実用化を目指して £2 billion (2千億円強)を投じるとのことです。
これまで色々な会社による電気自動車の開発計画の話を読んで来ましたが、Tesla 以外、どれもあまりピンと来ませんでした。しかし、この記事を読んだ時に、「これは Tesla の良いライバルになるかも」と感じました。
なぜそう感じるかを説明するのは難しいのですが、やはりこの手の大きな変化が訪れる時には、リーダーのカリスマ性やブランド力が重要で、その意味では、James Dyson は Elon Musk に匹敵するものを持っている数少ないリーダーの一人なので、役者としては十分だと感じるのです。
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