売上と利益の最大化に振り回されない。阪急うめだ店の戦略転換

阪急うめだ 理央周
 

大阪駅と阪急梅田駅という好立地に立つ百貨店「阪急うめだ本店」が新たな挑戦を続けています。長い年月をかけて売り場面積を大増床したことをきっかけに、従来の「売れ筋を多く販売」路線から「コト消費への対応」に大転換したとのこと。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』の著者でMBAホルダーの理央さんは、この阪急うめだ本店の戦略のシフトチェンジから何を学ぶべきかについて詳しく、分かりやすく解説しています。

阪急阪神百貨店の挑戦に何を学ぶべきか?

一番店に甘んじない、阪急うめだ店の挑戦

『日経MJ』2017年12月4日の記事によると、阪急うめだ店は、2012年まで大規模な大増床工事を行ない、その結果、西日本を代表する売り場になったとのこと。同紙によると、

「安住することはなく先端的な売り場作りを追求している。荒木社長の方針は、“目先の売上より一歩先のファッション提案と明快さだ”」とあります。(上記記事より。以下、引用は「」)

具体的には、売れ筋を多く揃える戦略から、“コト消費への対応に備える戦略に転換していったとのことです。

その背景には、ボリュームゾーンだったライセンスブランドや雑誌タイアップなどが“顧客に見抜かれて売れなくなった”と判断。

「我々自身が仮説を立てて、一歩先の提案をするスタイルです」

「各階のエスカレーター前に一番売れる、販売効率の高いブランドを置くのをやめました

「そこに、ライフスタイルを提案する“コトコトステージ”を持ってきたのです」

大阪駅と梅田駅という好立地条件において、スペース効率だけを考えたら、利益率の高いブランドものを置くのが定石と言えそうですが、
あえて、このような新しい挑戦をしているのが目につきます。

コトコトステージには、オリジナルのデニムスタイルを作ることができる店をデニム売り場の横に配置。ニューヨークとパリとここだけにしかない店をこの秋にオープンしたとのことです。

コト消費に対応する戦略を立てた背景には、ITの浸透などで便利になり、顧客が“普通のもの”では満足しなくなり、パーソナライズされた“自分だけのものを欲しがるようになったことがあります。SNSなどで商品を容易に見られるようになり、新商品に対し“既視感”が出ているのでしょう。

また、平日は節約をしても、週末や特別な“ハレの日”には、やはり特別なものが欲しいし特別なことがしたいと感じる傾向が強くなってきています。

従来の消費で飽き足らず、顧客がどんどんわがままになってきているのです。

しかし、このような時こそ“販促のチャンス”だと、荒木社長は考えたのでしょう。

そして、顧客の一歩先を読みといて、このようなエンタテイメント性の高い売り場を提供したと考えられます。

具体的には、“家庭教師をつけたとのこと。「家庭教師は、セレクトショップなど幅広いネットワークを持っている方です。仕入れや売り方など、自前でコンテンツや情報を発信する力を養っています」

とのこと。

家庭教師を雇い、“自社内で自立して企画できる社員”を、しっかりと育てているのでしょう。

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