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世界中にカネをばらまく中国に対し、日本はどんな対抗をすべきか?

先日、河野外相は「日本は外交の危機に直面しており、このままでは国益は守れない」と発言しました。日本にとっての一番の脅威は中国ですが、世界中にカネをばら撒き勢力を拡大している中国に勝つ方法などあるのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際政治に詳しい北野幸伯さんは「勝てる」とした上で、今後日本が取るべき外交政策についての持論を展開しています。

河野外相「日本外交は危機に直面」、ではどうする???

少し前(1月8日)になりますが、河野外相が興味深い発言をされています。

河野太郎外相は8日、中国の国際的な影響力拡大を念頭に、「日本の外交は危機に直面している。今までと同じことをやっていたのでは国益を守ることはできない」と述べ、懸念を示した。
(毎日新聞 1月8日)

「日本の外交は危機に直面している。今までと同じことをやっていたのでは国益を守ることはできない」そうです。「危機に直面している」とは?

河野氏は「中東やアフリカに行くと、中国が建てたビル、国会議事堂、橋、道路。どこへ行っても建設現場には中国語の看板が掛かっている」と指摘。「かつて日本のODA(政府開発援助)拠出が世界一という時は、日本の外相が来なくても通った時代があった。しかし、今、中国は世界中のほとんどの所で、日本のODAと民間企業の投資を足した何倍もの金額を落としている」と訴えた。【加藤明子】
(同上)

要するに、中国は世界中に金をばら撒いて影響力を拡大しているのに、日本にはそれができない。だから「日本外交は危機だ」と。わかります。では、どうすればいいのでしょうか?

金と時間を使う相手は選べ!

中国の影響力が拡大している。日本の影響力が衰えている。これ、仕方ないです。というのは、中国のGDPは2016年、11兆2,321億ドル。日本は同年、4兆9,365億ドル。中国のGDPは、日本の倍以上。「インチキだ!」という人もいます。しかし、世界における中国の影響力が拡大し続けていることを見れば、メチャクチャウソをついているとは思えません。日本は、「中国のGDPはわが国の倍以上だ」という現実をはっきり認識して、「戦い方を考える必要がある。

弱い国が、強い国に勝つ方法は、「選択集中」です。たとえばイスラエルのことを考えてみましょう。この国のGDPは2016年、世界34位。ちなみに32位はエジプト、33位は香港となっています(出所はIMFですが、「香港」も「一主体」としてカウントしているのですね)。

イスラエルは、どう見ても「小国」。しかし、ロビー活動、工作資金を、「アメリカ」に集中させることで、見事に自国の安全を確保しています。アメリカへの影響力、最近はチャイナ・ロビーが世界一でしょう。2位はイスラエル。そう、小さな国でも、時間と金をある国に集中させることで、安全を確保することができるのです。

日本は、確かに中国より金がない。それでも世界3位の経済大国です。だから、賢く選択し、集中すれば、中国に負けない影響力を確保することができるはずです。

日本が、時間と金を投入すべき対象は???

1番は、もちろん同盟国のアメリカです。日米関係が強固であれば中国は尖閣強奪に動けません。実際、2010年の「尖閣中国漁船衝突事件」のとき、2012年の「尖閣国有化」のとき、人民解放軍は、尖閣侵攻を検討していた。しかし、二度ともアメリカ政府高官たちが、「尖閣は、日米安保の適用範囲だ!」といった。それで、決心できなかったのです。ですから、日本は、アメリカとの関係が強固であるよう、常に努力していく必要がある。

アメリカと同様に大事なのがインドです。アメリカは、落ち目の覇権国家。影響力は、毎年小さくなっています。ですから日本は、「未来の同盟国」のことも考える必要がある。インドは近い将来必ず米中に並ぶ大国になる国。日本と同じ民主主義国家で親日。さらに、中国と問題を抱えている日本は、全力をあげてインドの発展を支援すべきです。それは、日本企業に利益をもたらすだけでなく、日本国を安全にします。

アメリカとインド。この二か国が日本にとって「最重要国家」です。そして、米印を味方につけるのに、「中国に匹敵するGDPがなければ」なんてことはありません。

次に大事なのは、欧州とロシア。次の次に大事なのは、ベトナムフィリピンオーストラリア台湾など、中国に脅威を感じている国々。極端な話、世界200か国のうちで、日本が時間と金をかけなければならないのはこのくらいです。他の国々が「重要でない」とは言いませんが、やはり重要度は低くなります。

中国は、世界に金をばら撒く力がまだある。日本は、河野さんも認めているように、そんな金はない。それなら、「影響力のある国」「大事な国を中心に金を使うしか方法はありません。だから、中国が世界中に金をばら撒いていても、心配することはないのです。

イスラエルは、「アメリカを取り込んでいる」というその一点だけで、サバイバルしています。GDP世界3位の日本は、アメリカ、インド、欧州、ロシアなどを取り込むことで、きっとサバイバルできるでしょう。限られた金でも有効に使うことで、日本の安全を確保することは可能です。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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