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なぜ松下幸之助は「小便、赤くなったことあるか?」と尋ねたのか

大企業で頂点に上り詰めた人と、一代で会社を大きくした経営者とでは、本質的に異なる部分が多いように感じます。では、経営者として大成するためには何が必要なのでしょうか。今回の無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では、松下幸之助氏とドラッカーが共通して語る「起業家として大成する為の資質」が紹介されています。

「苦労」物語 勝つための「苦労」

以前、「大成する経営者には3つのTが必要だと述べました。これは「電力王」「電力の鬼」と言われた日本の財界人松永安左エ門さんの言で「倒産大病投獄の3T」であって、この内のいくつかの苦難な体験をしていなければ“大成”しないとするものです。「松下さん」「稲盛さん」「孫さん」は「大病」を経験しています。

もちろん「大病」した経営者のみが「大成」するわけではないのですが、死と隣り合わせなかで何かを悟るということは理解できそうです。「投獄」については“ホリエモン”ぐらいしか思い浮かばないのですが、獄中の瞑想のなかで同じような心境を持たれるという話は聞きます。

倒産」については、ダントツの高収益率と社員報酬を誇る「キーエンス」創業者の滝崎武光さんは二度の倒産経験を持つそうで、その体験があって現在の経営スタイルを確立するに至ったのでしょう。百均の王者である「ダイソー」の矢野博丈さんも、兄から借りた700万円を返せず倒産のあげく「夜逃げ」をした経験を持っています。

超優良企業でも、倒産は回避できたもののその一歩手前まで行って、その苦さをバネにして体質改善を断行させたというのはよくあることで、ある意味、中企業から大企業に変身する通過儀礼」のようなものなのです。多くの修羅場を経験された松下幸之助さんは「好況よし、不況さらによし」「万策尽きたと思うな。自ら断崖絶壁の淵にたて。その時はじめて新たなる風は必ず吹く」と言われる所以でもあります。

どうしても何かを伝えたいと思うと「松下幸之助さん」や「ドラッカー」の「ことば」に縋ってしまうのですが。

松下さんは

ぼくが奉公している時分に一人前になるためには、小便が赤くなるくらいにならないとあかんのや、そういうことを二、三べん経てこないことには、一人前の商売人になれんぞということを、親方から聞いた。どういうことかというと、商売で、心配で心配でたまらん、もう明日にでも“自殺しようか”という所まで追い込まれたら、小便が赤くなるという。そういうようなことをしてきて初めて一人前の商売人になる。だから尋ねるんやが、あなた、儲からん儲からん言うけど、小便赤くなったことあるか。

誰でもそうやけど、反省する人は、きっと成功するな。本当に正しく反省する。そうすると次に何をすべきか、何をしたらいかんかということがきちんとわかるからな。それで成長していくわけや、人間として。

倒産大病投獄の3T」は、人として深く内省する時間や機会をもたらすもので、そこで「正しく反省する」ことができたならば「次に何をすべきか、何をしたらいけないかということが分かる」となります。他に秀でて何かを成そうとするならば、他を凌駕する知恵や見識や情熱が身に備わっていることが大切な要件となります。

人にしろ組織にしろ、思い付きや人まねや教わった知識で成功し“頂”を極めかつそれを持続できたという例はないでしょう。人のしないこと」「できないこと」「思いつかないこと」「嫌がることに挑戦して、そこから光明を見つけた人や組織のみが、抜きんでた成果を実現できる可能性を持つので「困難」こそが「機会」となります。

ドラッカーですが、起業家の資質”についてこのように言っています。

確実性を必要とする人は、起業家に向かない。そのような人は政治家、軍の将校、外国航路の船長など、色々なものに向かない。それらのものすべてに意思決定が必要である。意思決定の本質は“不確実性”にある。

と言っており、不確実性へと跳躍する気概つまりリスクを負う気概を持っていることを起業家の“資質”としています。

関連するので「戦略計画」についてどう述べているのかを聞きます。「未来は、望むだけでは起こらない。それを起こすためには、いま意思決定をしなければならない。いまリスクを冒しておこさなければならない」とし、そのために策定するのが「戦略計画」であると言うのです。

「不確実性である未来を予測する」ことなど少しの例外を除いてできようはずはなく、そのため事業活動においては「経営者がリスクをかけて、今現在において意思決定して実行する」より法がない。ただし、実行しないというのも一つの意思決定で、すべてにおいて熟考のうえで責任を持って意思決定して実行することより他の術がありません。

戦略計画の要点は、“変化”するすべての“機会”と“脅威”において

  1. 「自社がなすべきこと」と「自社にしかできないこと」と「したいこと」を“核”とし
  2. 得られる“成果”と、負わなければ“リスク”を比較して
  3. もっとも「高い成果の得られる」可能性に賭けてそれから
  4. 自社が有する最高の経営資源を集中して投入する

さらにドラッガーの言を続けます。

戦略計画はリスクを少なくするものためのものではなく、最小にするためのものでもない、経済活動とは、現在の経営資源を未来に、不確実な期待に賭けることである。その本質はリスクを冒すことである。

戦略計画に成功するということは、より大きなリスクを負担できるようにすること。

だとしています。またさらに

あらゆる種類の活動等において「もし今日これを行っていなかったとしても、改めて行おうとするか」を問わなければならない。答えが否であるならば「それではいかにして早く止めるか」そしてそのために「何を、いつ行うか」と問わなければならない。

事業の廃止までも、戦略計画だとしています。

事業活動は、よりよく顧客が満足・感動する効用生産的に実現できるさせることのみが目的・目標であるので、それが適うもののみに集中させなければならない。そのためにその条件に適うものを“リスクを賭けて”創造し実行し不適なものは廃棄しなければなりません。

それが円滑にバランスするとき「利益」としてリターンされるのです。原則は以上のことの他にはないのですが“リスク”を負わずに責任を以て創造と廃棄を行わないのであれば、やがての衰退は必ず訪れ時間が長くなるかどうか別として破滅は避けられません。

逆にこのことをよく知った者が“ヒラメキ”を得たなら、必ず多くの機会が訪れて、続けられれば思いは届くのです。本質を閃いてください。そのうえで、なるまで続けてください

 

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戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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