人工知能は地震を予測できるのか? 村井教授が進める「AI地震予測」

 

計算スピードのアップに一役買った“情報の最小化”

こうして、約2年に渡って続けられたAI地震予測の開発。そのなかで、クリアしなければならない課題のひとつとして立ちはだかったのが、計算スピードの問題だった。

従来の予測と比較して、より膨大なデータを用いての予測できる点が、AI地震予測の大きなメリットのひとつ。ただ、その膨大なデータを月曜日に得て、それを解析したうえで、水曜日配信のメルマガでその結果を公開できるようにするためには、それ相応の計算スピードが要求される。

そのための策として取られたのが、手島氏がすでに開発していた高性能の計算エンジンの採用。そして“情報の最小化”だったという。

「情報を闇雲に増やすのではなく必要最小限に集約することで、計算スピードのアップを図りました。AI地震予測のマップにおいて、日本列島を30地区に分けたのも、この“情報の最小化”のひとつの手段。30地区ごとに、本当に信頼度が高い電子基準点のみを村井先生に厳選してもらい、それらの地区ごとにデータを解析することで、ほぼ一晩で解析が終了できるようになりました」(手島氏)

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絶えず動く「地表データ」を扱うことの難しさ

いっぽうで、従来MT法が活用されている工場の製品から得られる均質なデータとはまったく異なり、地震予測においては絶えず動いている地表のデータを扱うという点で、なかなか勝手がいかないということも多々あったという。

「地震は地域性もありますから。地質などの影響もあるんですが、地域によってデータの出方の傾向が全然違ってくる。だから、全国共通のひとつの指標やしきい値で、すべての予測ができるというわけではない。そういったところの学習は、まだしきれていないですね」(村井氏)

ひとつの例を挙げると、村井氏は常々「地表の動きは常に相反、あるいは押し合っており、その真ん中の地点が最も危ない」ということを持論として掲げている。ところが、その真ん中の地点の動きは数学的にはゼロになるため、AIがその状況を危険だとは認識しにくい。つまり“ゼロの状態に意味がある”ということも、今後は学習させていく必要があるという。

「基本的には統計数理に基づくAIというのは、熟練の技術者という存在がまずあって、そのノウハウをコピーしていくのがセオリーなんです。今回のAI地震予測における熟練の技術者とは、もちろん村井先生のことを指しますが、今のところ村井先生のノウハウを80%ほどコピーできた段階。残りの20%を如何にして埋めるかが、今後の課題ですね」(手島氏)

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AI導入で地震予測の可能性がさらに広がる

現在のところ、参考資料として月一回公開となっているAI地震予測だが、今年の秋ごろには正式公開ができる見通しが立っているという。

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「当初は、現在行っている予測の補完という意味合いが強かったAI地震予測ですが、開発を進めていった結果、より精度の高い予測にも使える可能性が出てきました。まだまだ進化する余地はありますし、ゆくゆくはAI地震予測がメインになって、私の予測が“参考資料”になる日が来るかもしれません(笑)」(村井氏)

現在のJESEAでは、電子基準点から得られた地殻変動のデータを用いて予測を行っているが、地震の前兆とされる現象には、それ以外にも電磁波の異常やインフラサウンドの発生など、様々存在する。JESEAではそれらを活用した予測の研究も進めており、ゆくゆくはそれらにMT法を取り込んでいくことも計画しているという。

MT法は使える範囲が広いのが大きなメリット。今回のAI地震予測の開発で、基礎となるソフトは完成しているので、地殻変動以外のデータを利用することも、そう難しい話ではないでしょう」(手島氏)

利用者に安心をもたらす、より信頼度の高い地震予測の提供を目指して。JESEAのチャレンジは、今後もまだまだ続きそうだ。

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取材・文/MAG2 NEWS

※本記事は有料メルマガ『週刊MEGA地震予測』の著者・JESEA(地震科学探査機構)に、MAG2 NEWS編集部が取材したオリジナル記事です。

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東日本大震災以降、地震予知・予測の必要性が問われています。JESEAジェシア(地震科学探査機構)は、測量工学的アプローチで地震の前兆現象を捉え地震を予測します。東京大学名誉教授の村井俊治先生の研究技術により、国土地理院が設置した全国1300か所の電子基準点のデータを解析し、過去の地震の震源、震度、マグニチュード、被害の程度などとの相関分析を行い、地震の前兆現象を捉え地震予測を提供しています。

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